【連載】
1918年(大正7年)、真空断熱という技術を駆使してガラス製のマホービンを世に送り出した象印マホービン(以下象印)。現在ではガラス・ステンレスマホービンを中心としたリビング商品に加え、炊飯ジャー・電気ポットなどの調理家電商品、加湿器や空気清浄機などの多彩な生活家電商品をラインアップし、人々の暮らしを応援する製品づくりを行っている。
そんな同社が営業部門にiPadを導入し、電子カタログを用いて写真や音、動画による商品解説を実施している。
同社取締役 営業本部副本部長 兼 営業部長の松本龍範氏は、iPadの導入経緯を次のように語る。
「2011年の夏に、以前からの知人であるアール&ディの増井氏からiPadを薦められたのが出会いでした。私のようにパソコン操作に煩わしさを感じる世代としては、『パソコンよりもはるかに使いやすい』という彼の声に興味を引かれました。すでに弊社の社長も米国で発売された時点で入手し、実践的な使い方を試行していたこともあり、私も個人的に購入し、もし営業活動の中で使えるようであれば正式に検討しようと考えました。実際に使ってみると、起動時間の速さや動画による訴求力、対面の相手にも見せやすい画面とその大きさなど、モバイルPCにはない機動性が感じられ、使いやすく説得力もあるツールであると分かりました」(松本氏)
また同社の製品には、そのカテゴリで日本最大のシェアを持つものも多くあり、その維持拡大を図るために「日本一の提案営業」という課題が社内で掲げられていた。
「最近はどの業界においても価格下落の傾向が見られます。そのため価格に頼らない売り方が必須となっており、提案営業が求められる理由です。多種多様な商品について、必要とされる情報を分かりやすくスピーディーに伝えることのできるツールが必要でした」と営業企画部長の大上純氏も語る。
このような背景から、松本氏らの提言で社長も導入を決断。2012年1月、トップダウンによるiPad 220台の導入が決定した。
特に同社が目指していたのは、スピード感を大切にした提案スタイル。それまでの課題だったのが、顧客からの問い合わせに対して、紙の提案資料では持ち合わせがなく、その場での回答ができないため、「次回ご提案します」という対応になっていたこと。これでは競争力や優位性の点で他社に勝つことはできないと大上氏。
また、導入を担当した営業企画部 営業統括グループ マネージャーの南保秀樹氏も、「40~50ページもの紙の資料を使った提案では、お客さまの集中力が途切れたり、途中で興味を失ってしまうこともあります」とその限界を指摘する。
そこで営業活動に利用していたカタログ類をすべて電子化することにし、製品として動画や音声で分かりやすい説明がiPad上でできる「ビジュアモール スマートカタログ」が選ばれた。
「いろいろなアプリの検討をしましたが、提案書に入れる動画の扱いやすさなど、スマートカタログの柔軟性と機能性がわれわれの求める営業スタイルにマッチしたのです。動画や音声などを提案書に盛り込むことで、メリハリのある効果的な商談ができるようになりました」(南保氏)
また、同じく営業企画部 商品戦略グループ マネージャー 西林一弥氏は、「販売店さまに対して、その商品をどのように販促すればよいかというご提案もしていますが、そこにiPadを活用することで、売り場の什器配置や販促ツールまでもすべてお見せできるようになりました。お客さまもイメージしやすく、店頭でそのまま商談に入って即決する可能性も高くなります。これ1つですべてが完結するような営業スタイルをイメージしました」と語る。
現行の商品のほか、過去に発売された製品についてもカタログを電子化し、スマートカタログにすべて収録している。
実際にiPadを活用している営業担当者は、その効果をどのように実感しているのだろうか。
「商談そのものがスピーディーに決まるようになった」と話すのは、大阪量販部 サブマネージャーの藤原敏則氏だ。
「常に資料の用意ができていますので、とっさのときにも対応し、即ご提案ができて安心です。営業機会のロスが売上を左右しますので、即時性は大きな武器となります。すぐにご要望にお答えできることから、お客さまからの信頼を得ることもできるようになりました」と藤原氏。以前は資料の事前準備も大変だったというが、iPadを活用し始めてからはそのような手間もなくなっている。
全営業担当者が利用しているiPadだが、その活用度をさらに上げるための仕組みも用意された。
「インフォメーションメモシステム」と呼ばれる社内の専用Webフォームから、各営業担当者がコンテンツの要望や、自分が使いやすいと感じたツール/アプリの提案などを投稿できる。要望の高かった市場動向などの資料は、すぐにコンテンツ化して定期的な配信を実現したと南保氏。
「いまどこで何が売れているかという情報を配信することで、季節変動などにより移り変わる市場ニーズなどを敏感に感じ取り、効果的な提案に結びつけてもらえると考えています」(南保氏)。
現場からの要望には極力応えていき、よりよい提案ツールを目指すという。
今後は社内システムとの連携なども進めていくという西林氏だが、さらに大きなビジョンも持っているようだ。
「クラウドを利用したPrimeDriveによる提案書の共有なども検討しています。ただ、道具立てを整えるだけでは活用されません。結局はコンテンツという中身の問題であり、その効果が認められなければさらなる活用は進みません。われわれは『iPad』を導入したのではなく、提案ツールを導入したという意識で、今後もコンテンツの拡充に努めていきます」(西林氏)
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