【連載】
1989年に大阪で設立されたエスケイジャパンは、キャラクター商品の卸販売にはじまり、ゲームセンターなどのアミューズメント業界にも販路を広げ、現在では自社企画のオリジナル商品も加えるなど、幅広い商材で事業を展開している。
上席執行役員 経営企画室長の野崎伸一氏は、多くのキャラクター商品を取り扱う同社の営業スタイルについてこう説明する。
「取り扱う品目がとても多いので、商品カタログも膨大なページ数になります。厚さが電話帳ほどもあるバインダーが3冊、合計で10キログラムほどにもなりますが、これとぬいぐるみなどの商品サンプルを常時20~30個持ち運んで、お客さまにお見せしながら発注をいただいていくというのが営業スタイルでした」(野崎氏)
こうしたアイテムをキャリーバッグに入れて運んでいたが、1日あたり4~5件の営業訪問は体力的にもつらい仕事だった。その証拠に、各人の運搬用のキャリーバッグが毎月1個壊れるほどだったという。
小売店への販売を担当する子会社であるサンエスの営業部に所属している向谷美保氏は、あまりにも身体的負担が高くなったため、転職も考えていたという。
「紙の固まりであるカタログは女性には重く、キャリーバッグでの移動も大変でした。お客さま先に行くだけで疲れてしまうこともあり、このまま改善されなければ、仕事を続けられないかもしれないと思っていました」(向谷氏)
もう1点、営業担当者には切実な問題があった。それは商品の在庫表だった。どの商品がどのくらいストックされているかが記されているもので、顧客の発注に対して出荷が可能かどうかはこれを見ながら判断していた。
それぞれの営業担当者が社内基幹システムから在庫データを引き出し、紙に印刷して持ち出していた。品目の多さから1日あたり100ページほどにもなり、これを毎日プリンタで大量印刷し、ホチキス留めという作業を行っていた。
「20人の営業担当者がいれば2,000ページ、それを印刷するのに数十分、これが4拠点の営業所で行われていました。1日経ったらまた次の日のデータを印刷という繰り返しでしたが、あまりに大量のため、当日の朝では時間がなく、前の日に印刷することもしばしばでしたが、これでは実際に使われる翌日には古いデータとなってしまうため、注文が取れてもすでに在庫がなくなっていたということも起こっていました」(野崎氏)
2011年、こうした状況を改善するため、営業担当者へのiPadの導入が検討された。
野崎氏はiPadの導入について、「キャラクター商品の開発・販売は競合も多く、差別化を図っていくためにはいかにお客さまへ訴える提案ができるかも大きなポイントです。そこに適していると考えたのがiPadでした」とその動機を語る。
また、経営企画室 システム課 顧問の岡雅史氏は、「弊社は『ISO14001:2004』の認証を取得しているため、紙や電気といったエネルギー使用量の削減といった環境保全活動に特に注力しています。その削減実現のためにも、カタログなどのペーパーレス化を推進する必要がありました」と全社的な取り組みであったことを説明する。
2011年6月、サンエスの営業担当者にiPadを配付。動画や静止画によるコンテンツが作成できる「ホワイトクラウド ビジュアモール スマートカタログ」上で商品カタログを再現し、訪問先での商談、娯楽施設での営業提案活動で利用を開始した。
カタログの電子化について営業の向谷氏は、「荷物が軽くなって本当に助かっています。退職せずにすみ、いまでもこうして営業活動を続けることができています」と笑顔で語る。 顧客の反応も変化した。
「今までのカタログでは振り向いてくれなかったお客さまにも、興味を持っていただけるようになりました。中にはiPadに詳しいお客さまもいて、ご自分でページ送りをしながら欲しい商品を見つけ出す方もいらっしゃいます。そのため、ご提案以外の商品をご購入いただく機会も増えました」と向谷氏。
担当するショップである「ヴィレッジヴァンガード マルイシティ池袋(東京都豊島区)」の販売スタッフ、田中麻利江さんも「分かりやすくなったと感じています。紙のカタログよりも、1つ1つの商品をじっくり見る時間が増えていると思います」と高く評価する。
野崎氏も「紙カタログは個人の管理に任せていたため、古い商品があったり、最新のものが入っていなかったりといったことがありました。例えば出張に出ているときに新しいカタログが展開されたときなどは、宿泊先のFAXで受信したモノクロの資料で営業したこともあります。iPad+スマートカタログになったことで、常に最新のデータでお客さまへご紹介できるのはもちろん、古い商品にさかのぼってすべて収録されているため、お客さまの欲しい商品が見つかる可能性も高くなります。実際に、iPadを利用してから10%ほど売上が向上した担当者もいます」(野崎氏)
ほかにも、iPadでは色や質感などの再現性が高いというメリットがある。カラープリンタのカタログだと、実際の商品と色味などが違っていたといったクレームもあったが、その心配もなくなったと野崎氏。
在庫表も改善された。
「紙の在庫表では検索ができず、お客さまへのお答えに時間がかかっていました。iPadでは商品番号などで検索も容易になり、即座に商品状況をお客さまへお伝えすることができるようになりました」(向谷氏)
現在は社内の担当者1人がデータを集計し、当日の朝にメールで一斉配信している。
「従来多くの人がばらばらにやっていたところを1人がやれば、大きな効率化につながります。この作業コストと、紙代の削減、プリンタを酷使するため保守の費用がかさんだり、印刷の待ち時間などもコストとして考えると、効果として月10~20万円以上は削減できていると思います」(岡氏)
在庫表の電子化の恩恵は大きく、今後は1日に複数回配信することも検討している。さらに将来的には社内基幹システムを直接参照するような仕組みにもしていきたいと岡氏。
「発注をいただいてからすぐに出荷できることが大原則です。キャラクター商品は生ものと同じで、タイミングを逃すと大きく売れ行きが左右しますから」(岡氏)
今後はグループ企業間での横展開や、エスケイジャパン本体での利用も始めていくという。
「今回の導入では、若い人たちの考え方を尊重して、あえて制限などをかけずに自由に使ってもらっています。そのほうがさまざまな使い方のヒントが生まれてくると考えたからです。それを横展開することで、より効果的なツールとしての活用が広がることを期待しています」(野崎氏)
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