【連載】
相互印刷工芸は、カタログやパンフレットといった印刷物の企画立案からコピー制作、印刷納品までをすべて一手に行う総合印刷会社だ。トータルな制作体制で提供されるサービスは、ほかにも動画や電子ブック、Webサイトの開発・運営など幅広く、多くの顧客ニーズを捉え続けて創業50年を超えた老舗企業である。
同社代表取締役社長の北條修氏は、同社の強みをこのように語る。
「当社は昭和34年に設立、その翌年にはデザイン部を設置し、以来、印刷会社でありながらコンテンツ制作に主軸を置いています。また、現在では一般的になりましたが、印刷は分業が当たり前だった時代からワンストップサービス、つまり社内一貫体制を敷いています。当時からわれわれのお客さまは業界トップの企業が多く、企業機密にまつわるものなども扱わせていただいていました。例えば新商品のカタログなどですが、それが外部に漏れるといったことを避けるため、制作から印刷・加工・配送まで全部含めて一手に行うということを50年前から続けています。それが、スピーディーな対応とコストダウンにもつながっています」(北條氏)
同社では、営業マンと制作スタッフにiPadを配布、日々の営業活動や情報共有に活用を広げている。
「販促や広告制作といった業務の中で、お客さまのiPad導入支援も行っており、実際に導入のお手伝いをして動画などのコンテンツを制作しています。われわれが作ったサンプルの映像をiPadで即座にお客さまに見せて、こういったもので何かお役に立てませんかというご提案のスタイルは、説得力とか迫力がありますね」(北條氏)
こうした営業スタイルを進めていくにあたり、「営業マンのリテラシー向上が営業力強化に必須であると考え、iPadを導入しました」と北條氏。ただ、配布しても使われないと意味がないと考えた同氏は、営業マンが自主的に使うようになる手法を考えた。
「いろいろ検討したのですが、個人と会社での費用折半という方法をとりました。自分でお金を出すことによって利用意欲を向上させつつ、家庭でも自由に使ってかまわないという仕組みにしました。先行投資ではないですが、営業マンが5年後、10年後と自身のレベルを上げていく取り組みとしても、確実に効果が出てくるのではないかと思っています」(北條氏)
社員同士の情報共有基盤として、ビジネス向けSNSシステムの「ホワイトクラウド クリアベイル」を導入し、迅速かつ広域な情報交換の場として利用している。
「営業部隊が4グループあり、それぞれが異なる活動をしています。従来、それぞれのグループ内でのコミュニケーションは行われていたのですが、それを超えたグループ同士のつながりというものがありませんでした。そこで、クリアベイルを使って細かな情報をどんどん公開して共有することにしました。今ではそれが4グループを通してすべて見えますから、どこかのグループの営業が何か困っていると、ほかのグループの先輩がアドバイスする、などということが実現しています。会議室に集まって手間と時間をかけながら行っていたブレーンストーミングも、今ではクリアベイル上で手軽にできています。『お客さまからこういうご要望があったんだけど、なんか無いかな』となると、ベテランの営業マンが『こういう方法があるよ』と現実的な手法を紹介したり、あるいは制作部門のスタッフが斬新なアイデアを出したりと、組織や距離を超えた連係が生まれています。それがiPadによって非常にスピーディーかつタイムリーな対応へとつながっているため、会社にとても良い流れができていると思います」(北條氏)。
iPadの導入後、顧客への対応も、従来から3~4日ほどは短縮されたという。「現在はビジネスのスピードがどんどん加速しているため、お客さまからのメールに対してもすぐに返信しますし、同僚の悩みもすぐにアドバイスしたりするというようにしています」(北條氏)
相互印刷工芸では通話連絡用として、外出機会の多い営業マンや制作スタッフ、そして社内の各部署に40台のPHSを配布している。携帯電話ではなくPHSである理由を、北條氏は次のように語る。
「PHSは定額のみで通信料が無料というメリットを活かして、社内外で通話する端末として利用しています。従来は他社のサービスを利用していましたが、固定電話との通話料サービスの併用で大幅なコストダウンを実現しました。営業マンによっては月に2万円ほどの通信料がかかっていたのが、やはり定額になって数千円で済むというところが最大のメリットですね。また取次ぎの手間とか、席外しといった機会損失がなくなったので、お客さまと効率的にコンタクトを取れるということもあります」(北條氏)
携帯電話との比較で懸念される通話エリアについても、「当社は大企業のように全国展開しているわけではないので、都内近県できちんと通話ができればよいということで導入しました」と特に不都合を感じることはないという。むしろ、PHSの利点については2011年3月11日の震災時に強く感じるところがあったと北條氏は語る。
「その日、私は出張で愛媛県に行っていました。そこで、お客さまに連絡しなければならないことがあったのですが、携帯電話では全然つながりませんでした。けれども社員にはPHSがすぐにつながり連絡がとれたので、それがすごいなと思いました。本当に衝撃的でしたよ。会社の固定回線にもかけたのですがこれも全然つながらず、幸い総務にもPHSがあったのでそれにかけるとすぐにつながって、会社の被害はないか、従業員や社員に怪我はないかといったことがすぐに確認できました。それぞれがPHSを所持していたので、1時間もかからずに全員の安否確認ができたと思います」(北條氏)。
PHSを導入する際、その電波方式の違いによる通話品質の高さや、アンテナの多数設置による回線確保のしやすさといった特徴は理解していたと北條氏。ただ、「それを今回の震災で実際に目の当たりにしたということは貴重な経験でした」(北條氏)
PHSとiPadとの併用は、どのようなメリットを生み出しているのだろうか。
「PHSの音声通話回線とデータ通信用の3G回線を同時に、しかもどちらも定額で利用できるということは、さまざまな面からメリットが大きいと思います。BCPの観点からももちろんですが、通話をしながら資料を確認できるなど業務の効率化という面でもこの組み合わせは最強です。これからも同時利用をさらに進めていきたいと思います」(北條氏)。
画面の大きなiPadは情報収集やプレゼンでの利用、気兼ねのない通話ができるPHSは顧客との密な連絡用。この使い方は1+1以上のさまざまなメリットを生み出す可能性を持っているといえるだろう。
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