【連載】
中外製薬は2012年1月、医療従事者への情報提供を目的として、MR(Medical Representative:医薬情報担当者)ならびにMA(Medical associate:学術情報担当者)にiPad2 1,750台を配布した。また同時に、インフォコムが提供している営業支援システム「MR Support DigiPro for iPad(以下、MRサポート)」と、ソフトバンクテレコムが提供している「PrimeDrive(以下、プライムドライブ)」の運用を開始した。
MRは医療機関を訪問し、自社製品に限らず疾患に関する幅広い情報、業界の動向など、医師に役に立つ情報を提供している。そのため、MRは常に多くのパンフレットや書類を持ち歩く必要があった。
また、MRは医師から製品や疾患について質問された際には、迅速な対応が求められることも多い。しかし、すべての資料を持ち合わせているとは限らず、その場で回答するのは難しいこともあった。急ぎの質問については訪問の途中で会社に戻り、できうる限り当日中に回答を行うが、十分な時間がとれない場合は翌日以降の対応になることも多かったという。
同社 営業業務部 推進グループ 小田育子氏はiPad2導入の背景について、「当社は、2002年より世界的製薬企業であるスイスのF. ホフマン・ラ・ロシュ社(以下、ロシュ社)と戦略的アライアンスを締結しています。ロシュ社との協業により、国産初の抗体医薬品を国内外に投入するなど着実な成果をあげています。また、2008年にはがん領域で国内売り上げがトップになるなど、革新的な製品に定評があります。しかし、最近では他社製品との競合も激しく、MRは今まで以上に知識を高めることが求められています。iPad2、そしてMRサポート、プライムドライブというツールがあることで、医師から質問を受けた際に、その場で資料を提示してお答えできます。その場で質の高い回答ができれば、医師から信頼を得ることが可能になります。医師は対応が速く、的確な情報が提供できるMRに相談されますので、何か困ったときや調べたいときにいつでもお答えできる体制を構築することが重要となります」と説明する。
実際の利用方法は、以下の動画が参考になる。
iPad2の導入までには、3回の検証を実施したという。1回目の検証は2010年秋にiPad20台を東京第一支店と鹿児島オフィスに配布し、iPadの操作性や電波状況などを確認した。
2回目は2011年1月に大阪支店、名古屋支店、横浜支店に製品資材を搭載したiPad60台を配布。日頃の活動に活用できるかを検証した結果、iPadを使用したディテール(医師に対する医薬品等の説明)で、医師の興味・関心、理解度、処方意向が向上する手ごたえを得た。
その一方、業務効率を高める機能への要望も高いことを把握。そこで、社内で打ち合わせを繰り返し、PCとiPadのすみ分けを明確にし、原点に戻り期待する導入効果を再検討した。
そして、同社の強みである医師に対するコンサルティングプロモーション、つまり医師との会話を充実させ、質の高い提案を行い、最終的に患者さんの役に立つという流れを強化するツールとしてiPadを位置づけた。こうした背景の中で、2011年8月から2カ月間にわたりiPad2で200台規模の3回目の検証を行い、ディテールに必要なツールや運用体制の検証を行った。
検証終了後、MRからは継続して使用したいとの声が多数あったほか、iPad2を活用することで、医師からの質問に対し、その場で情報を引き出し、迅速な受け答えが実現できたという結果を得たことから、採用を決断した。
製薬業界のMRは外出することが多いので、常時携帯するiPad2のセキュリティ対策には注意を払ったという。
情報システム部 営業支援システムグループ 池村真彦氏は、「iPad2を管理するツールとしてMDM(Mobile Device Management)を導入していますので、すべてを一元管理することができます。iPad2には、医薬品の効果や安全性情報など多くの重要な情報を入れていますので、情報漏えいがおきずに安心して利用してもらうために、二重のセキュリティ対策をとっています。iPad2起動時にはパスワードを要求し、パスワード入力を一定回数間違えるとすべてのデータが消えるように『ローカルワイプ機能』を、紛失や盗難時には、情報漏えいを防ぐために迅速な対応ができることを重視し、内部データを遠隔地から消去できる『リモートワイプ機能』を実装しています。iPad2から社内の情報にアクセスする場合には、別途パスワードを要求することで、第三者による不正アクセスを防止しています。また、市販のアプリケーションからの情報漏えいを防ぐために、アプリケーションのインストール制限もしています」と語る。
iPad2の導入により、医師からのとっさの質問にも受け答えが可能になった
MRサポートは、PDFや動画・HTML5などの各種デジタルコンテンツを一括でiPad2へ配信し、管理できる機能を持っている。MRの活動支援ソリューションとして、文書や画像・動画を含めたプロモーション用の資材管理ツールを備え、ディテールに役立つ情報を提供することができる。
プライムドライブはクラウド型のサービスであり、システム構築やサーバの運用管理が不要なため、企業規模を問わずに短期間で導入できるメリットがある。業務での使用は、閲覧したいファイルをPCからアップロードし、iPad2で事前にダウンロードしておくことで、必要な情報をオフラインでも、すぐに閲覧することが可能である。また、共有フォルダとしての利用も可能なので、バックオフィスでアップロードしたファイルを、iPad2ですぐに閲覧することができ、迅速な情報提供が実現できる。
MRサポートの活用について、東京第一支店 プライマリーユニット 東京東営業部 新薬一室 奥原美紀氏は、「MRサポートはiPad2同様、直感的に操作ができるので分かりやすく、必要な情報を速やかに確認することができます。医師からの質問に答えられなかったときは翌日回答することが多かったのですが、導入後は当日中に正確な情報の提供もできるようになりました。医師との面談時間が短い中で、さらに効率を向上させる手段として、MRサポートの『Myシナリオ機能』を活用しています。資料の並べ替え機能を使いながら、それぞれの医師のニーズに合った資料を作成することが可能ですので、短時間で医師に効果的なディテールができています」と語る。
「セキュリティ対策が充実しているiPad2の導入により、多くの資料を持ち歩く必要がなくなりました。新しい治療ガイドラインや学会の情報などは、従来、印刷物を配布していたのですが、今はMRサポートに最新情報が共有されますので、他社より速く確実に情報を届けることが可能になりました。それが当社の強みになります。また、ほかの活用方法として、MRにはiPad2とプロジェクタをつなぐコネクタを配布していますので、医師向けの説明会ではPCを必要とせず、プロジェクタを介して簡単な説明会を開催することが可能です」(小田氏)
MRが外出する際にはノート型パソコンを持参していたが、当日中に会社に戻れるときはiPad2のみで外出するMRも増加しているという。多くの資料を持ち歩くスタイルからiPad2を持つようになったことで提案方法も変化してきた。
「当社は医薬品の効果、安全性情報など数多くの情報を蓄積していますので、今後もその情報を適切に提供し、医療機関や医師の方々にご活用いただきたいと思っています。それが患者さんのためにつながるからです。このような取り組みを今後も続けていきたいと考えています」(小田氏)
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