【連載】

事例で学ぶiPhone/iPad活用術

49 営業社員がCRMやクラウド上の物件情報をiPadで活用(動画付)

  [2012/03/22]

ボルテックスのある西新宿のビル

ボルテックスは、収益不動産を核とした資産形成コンサルティング会社で、高収益資産の組成から、売買および仲介、賃貸管理、さらには出口戦略の立案まで、高付加価値のワンストップサービスを提供している。

顧客は主に中小企業やその経営陣を含めた富裕層が中心で、収益性の高い不動産資産の取得をサポートし、それを運用して安定した収益基盤を形成することが主力業務となっている。

宮内氏のプレゼンテーションで導入を決定

同社では、営業活動において大量の資料を持ち出す必要があるが、一部資料をデータ化して持ち運ぶために選ばれたのがiPad 2だ。全社員に行き渡る49台を順次導入し、クラウドとiPad 2を活用したSFAの利用が始まっている。


アセットマネジメント事業部 ストラテジーグループ 三ツ廣美香氏

「以前は基本的に紙ベースでした。Excelを活用する文化もなく、手書きで営業資料を作っていました。PCも全員が持っているわけではなく、営業担当者は25名ほどいますが、3台のPCを共用していました。2009年にはSFA(Sales Force Automation)としてSalesforce CRMを導入しましたが、これも全員が入力するようになるまで1年ほどかかりました」と、iPad導入前の業務状況を語るのは、アセットマネジメント事業部 ストラテジーグループの三ツ廣美香氏だ。

勤続年数にもよるが、1人あたりの担当案件数は100~200件。大量の資料を綴じた分厚いファイルを並べての仕事は大変だったが、PCがなければどうにもならないという状況ではなかった。そのため、Salesforce CRMへのデータ入力を徹底させるため、週次の会議で未入力者を名指しして促したが、従来通りのやり方で十分だとなかなか受け入れない社員もいたという。

SFAとしてSalesforce CRMを利用

新規顧客の開拓は電話営業に頼っているなど、基本的にアナログな対応を行っていた同社がiPad 2を導入するきっかけとなったのは、ソフトバンクモバイルの副社長である宮内謙氏のプレゼンテーションだったという。

「アセットマネジメント事業部ストラテジーグループ本部長が宮内さんのプレゼンテーションに感銘を受け、導入を決意しました。社内では、まずは経営層のみで使ってみようという案もあったのですが、そういった導入の方法はよくないという宮内さんのプレゼンテーションを参考に、全体導入を決意しました。使っていく中でいろいろなアイデアが出てくる、使い方が無限にあるというのが特に魅力でした」と三ツ廣氏。試用に数台導入した後、すぐに全員分の導入が行われた。

他社員の予定を確認、移動時間も有効活用

実際にiPad 2が導入されたのは2011年8月のことだ。すでにGoogle Appsのアカウントを作成し、カレンダーの共有を行っていたため、iPad 2経由で外出先でも予定の確認や入力を行う準備は整っていた。また、導入にあたってはソフトバンクの提供するオンラインストレージサービス「PrimeDrive」の利用も開始しており、外出先での資料閲覧に活用することも決まっていた。しかし、意外にも最初に行われたのは、自由な利用だったという。

「ちょうどお盆休みの前に導入したので、お盆の間は自由に使ってもらいました。今でも個人利用はOKで、有料アプリの購入も自分で支払うなら問題ありません。仕事に使えないようなひどい状態になっていたらリセットします、とだけ言ってあります」と三ツ廣氏。自由に使うことで操作に慣れ、新たな活用方法を見つけてもらおうという方針だ。

アセットマネジメント事業部 コンサルティンググループ 本部長 石川義朗氏

「最初のうちは使いこなせませんでしたが、使っているうちにノウハウが蓄積されました。以前はもったいないと感じていた移動時間が資料確認やSFA入力などに有効活用できるようになりましたし、メールでの社内とのやりとりがしやすくなったのはうれしいですね。クラウドに資料がアップしてあれば、持ち忘れた資料を外出先から見ることもできます」と導入効果を語るのは、アセットマネジメント事業部 コンサルティンググループの本部長である石川義朗氏だ。


物件資料は常に50件程度がPDF化され「PrimeDrive」に格納されている。ボルテックスの業務性質上、同一物件を同時期に複数顧客に紹介することもあるため、担当者が自由に引き出して利用する形だ。

「PrimeDrive」に格納されている物件資料

「お客様の中には『この物件をぜひ』という方もいらっしゃいますが、基本的に投資する物件は、予算を決めた上で弊社にお任せいただいています。物件情報はそのための材料なので、必ずしもその物件を購入していただくわけではないのです。しかし、お客様にそれだけの信頼を得るには上司と同行しての営業活動が不可欠です。そのため、営業社員は上司や他社員の予定をチェックしておかなければなりません。iPadであれば外出先でも全員の予定が確認できるため、お客様に次の訪問をお約束しやすくなりました」と石川氏は語る。

現在は文字化けを警戒してiPad 2からのメールは社内メールを主体としており、取引先へのメールは帰社してデスクのPCから送る。導入したiPad 2は3G回線モデルだが、仕入れ担当者など大容量ファイルのやりとりが頻発する社員にはモバイルWi-Fiルータを持たせ、他の社員にも必要時には貸与できるように予備機を確保するなど運用も工夫されている。

紙資料との使い分けがポイント

導入の立役者である営業統括本部長の理想は、PCはIP電話機としての利用にとどめ、他業務をすべてiPad 2に集約したいというものだ。よりiPad 2の活用シーンを増やし、紙資料も減らしたいという考えだ。

「iPadなら大画面で物件情報を見せられますし、GPSの反応がよく、地図も使いやすいですね。お客様にはGoogleストリートビューで物件の周辺を見せたりしています。長文はPCの方が入力しやすいですが、iPadは外出先の時間がうまく使えるのが魅力です」と語るのは、アセットマネジメント事業部 コンサルティンググループの大髙英司氏だ。大髙氏は積極的に新しいアプリを試し、可能性を模索しているという。

しかし一方で、紙資料に勝るものはないという声もある。

「お客様に資料を見せるとき、3種類のものを一度に見せたいという場合があります。iPad 2の画面では複数資料を並べて見せることができませんし、ページを行きつ戻りつしながら紹介することになるので不自由です。何より、お客様の手元に資料を置いて帰ることができません。高額な買い物をする場合、お客様は必ず後でゆっくり資料検討をしたいものです。紙資料がなくなることは今後もないでしょう」と語るのは、アセットマネジメント事業部 コンサルティンググループの部長である五十嵐昇氏だ。

ただ、紙の優位性を語る五十嵐氏も、iPad 2の効用を認めていないわけではない。実際、客先で用意してきた資料とは別に、参考程度に見せるのに、iPad 2は非常に効果的だという。

「こんなものもありますよ、と軽い雰囲気で見せるにはiPadは最適です。事前準備をした紙資料だと押しつけがましいときもありますし、興味を持っていただいたのに帰社してから改めてというのでは遅すぎます。たまたまの持ち合わせですがこんなものも、と見せたことで商談成立の後押しになったことがあります」と五十嵐氏。

まだ活用方法を模索している部分はあるが、同社は利用拡大には熱心だ。現在は端末のパスワードロックとリモートワイプ、リカバリサービスの利用というシンプルなセキュリティだが、今後セキュリティを充実させた上で自席PCのリモート操作を許可しようという考えもある。また、物件紹介に動画を盛り込みiPad 2で提案するという手法も考えられているという。

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