【連載】
セルフSS受託業務が主力事業である大器は、主に自宅を起点として終夜店舗を巡回管理するエリアマネージャーの勤務状況をリアルタイムで把握するため、iPhone 4Sとナビッピドットコム提供のソリューション「位置情報ASPサービスDP2」(以下、DP2)を導入した。
「スケジューラとは未来の行動予定、週報は過去の業務記録です。いずれも"今"の情報ではありません。しかし、全国各地の担当エリアに常駐するエリアマネージャーの勤務状況をリアルタイムに把握できなければ、業績を拡大させるのは難しいと感じていました」と、大器 営業本部長 兼 SS事業部長 島田昌和氏は、iPhone 4SとDP2を導入した背景を振り返った。
直行直帰型の勤務形態となる社員を抱えた企業にとって、彼らの働きぶりを正しく把握して公平な勤務評価を下したり、労災を防ぐための健康管理を施すのは非常に困難である。本人の業務報告をそのまま信じるくらいしか手段がなかったのが実情だ。それでも、販売台数など具体的な成果が出る営業職であれば、どんな行動を取ったかには目をつぶって、業績だけで評価することは可能だ。
ところが、大器の主力事業であるセルフSS(*1)の受託業務では事情が異なる。
「当社のエリアマネージャーは、担当する地域の店舗を巡回して現場オペレータースタッフの業務を監督し、問題が発生したら駆けつけて解決に当たります。また、店舗の運営会社様とコミュニケーションを図るといった運営管理業務を行います。ですから、営業職のような受注件数連動型評価といった管理手法は取れないのです」(島田氏)
*1 セルフSS(セルフ・サービス・ステーション)
セルフサービス型のガソリンスタンド。セルフサービスといえども、必ず1人の管理者を常駐させなければならない。管理者は給油ポンプの起動/停止スイッチを操作し、顧客に安全な給油を実施させる義務がある。
セルフSS受託業務とは、セルフサービスのガソリンスタンドから業務委託を受け、自社で採用・業務研修を受けさせたオペレータースタッフ(契約社員)によって、店舗の営業を代行するサービスである。特に24時間営業のセルフSSで、夜間業務をアウトソースしたいというニーズを捉え、首都圏を中心に27都府県におよぶ321のサービス・ステーションからの受託実績を持つ(2012年3月末)。
「エリアマネージャーはきつい仕事です。担当店舗を巡回するだけではなく、オペレータースタッフのシフトを作成し、指導監督しなければなりません。急な欠員が出ればすぐに交代要員を手配し、場合によっては自分が店舗に出ます。夜間のトラブル発生時には、即現場に急行して対応します。営業車が自宅兼事務所のような生活ですね」と語るのは、同社SS事業部 SS部 エリアマネージャーの飯村政樹氏だ。
こうしたエリアマネージャーを評価する手段は、これまで自己申告であるスケジューラと週報のみだった。労を惜しまず多くの店舗を巡回しても、それを客観的に裏付ける証拠は存在しないから、仮に虚偽の記載をしても分からない。社員を信じていないわけではないが、虚偽記載が可能な状況を放置していれば、いずれ業務報告は形骸化してエリアマネージャーに対する評価は“どんぶり勘定”になり、彼らのモチベーションアップにはつながらない。島田氏はSS事業部長に就任したのを機に、こうした状況を改善できるツールがないか探したという。
「DP2は位置情報と勤務ステータスを一定間隔で記録し、それをPCでリアルタイムに閲覧できるとの説明を受け、これまでは裁量労働制と変わらない状態だったエリアマネージャーに対して、時間軸を持った勤怠管理を導入できると思いました。そして、スマートフォン1台あたり1,000円/月と管理用PC1台あたり5,000円/月というASPタイプの低価格も魅力でした。初期費用は不要なので、『もし導入してうまくいかなかったら……』と心配する必要もありません」(島田氏)
DP2の導入を機に、それまで業務用端末として支給していたフィーチャーフォンをiPhone 4Sに切り替えた。
「私を含めてiPhoneユーザーが社内にいて、その使いやすさやが分かっていたこと。そして、ソフトバンクさんにはiPhoneの法人導入実績が豊富にあるのも安心材料となり、迷わずiPhoneに決めました」と島田氏。全国にいる20人のエリアマネージャーにiPhone 4Sを配布し、2011年12月からテスト運用を開始した。
「導入してすぐに気づいたのは、エリアマネージャーと彼らを直接管理する2名の部長との距離感が縮まったこと。例えば、あるサービス・ステーションでの滞在時間が長かったら、何かトラブル対応があったのだなと分かるので、すぐに電話で状況を聞けます。トラブル対応の直後に『大変だったね』と一言かけてあげるだけで、相互の信頼関係は厚くなります。以前なら週報を見てようやく気づくので、事象発生から数日のタイムラグがありました。管理される側のエリアマネージャーにとっても、上司が常に自分たちの業務状況を気にかけてくれているという安心感が生まれています。もちろん、常に行動軌跡を正確に記録できていますから、彼らの頑張りを正しく評価できますし、頑張り過ぎによる体調不良を未然に防ぐ効果もあります」(島田氏)
テスト導入の成功を受け、島田氏は2012年4月より本格的な業務改善に着手するという。DP2が記録した行動履歴を基にデータ分析を行い、非効率な行動を洗い出し、その原因と対策を明らかにする。そして、すべてのエリアマネージャーが効率よく業務を遂行できる標準的な行動パターンをマニュアル化し、業務スキルの平準化を目指すのだ。
位置情報にひもづいた行動履歴の"見える化"によってもたらされる業務ノウハウの共有は、生産性の向上に直結する。同社のセルフSS受託業務では、現在エリアマネージャー1人当たり平均15~20店舗を管理しているが、業務効率向上により1人当たりの店舗数を増やしていければ収益率の向上につながるはずだ。
「実は、そう単純に事は運びません。セルフSSの運営会社様から見れば、エリアマネージャーの担当店舗数が増えることは、1店舗当たりに投入する当社のサービスが薄まると感じられますから」と島田氏。しかし、業務記録をデータで残すという同社のポリシーは、別の側面で運営会社にアピールできると島田氏はいう。
「それはコンプライアンスです。運営会社様は人件費の抑制を求めて当社へのアウトソースを選択されますが、一方で業務の質を高く維持することには大変厳しい。当社はiPhoneやDP2といったITソリューションを導入することで、きちんと法令にのっとった業務管理ができていることをデータで示せます。他社は『頑張ります!』などと情緒に訴えるしかありません。当社の優位性は明らかです」(島田氏)
本格的なデータ分析が始まったら、前述のスキル平準化に加えて、エリアマネージャーの"頑張り"を賞与や昇給昇格といった人事評価に反映させることも計画されている。スキルアップだけでなく、モチベーションアップにも活用する狙いだ。
これまで社員の自己申告に任せていた勤務状況を、iPhoneとDP2を使ったソリューションで見える化することは、同社をもう一回り大きい企業に成長させるために不可避の道だと島田氏は考えている。
「社員の皆さんはきっと、今以上の給料を受け取りたいと思っているはずです。それを実現させるポジティブな勤怠管理手法として、iPhoneを使った位置情報サービスを積極的に活用していきたいと思います」と島田氏は語った。
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