【連載】
千寿製薬は、医薬品に関する情報を医師へ提供するためのツールとして、MR(Medical Representative:医薬情報担当者)にiPadを配布、現在50名ほどがパイロットケースとして医師とのコミュニケーションに活用している。
千寿製薬(大阪府)は主に眼科に特化した製薬会社で、「マイティア」ブランド(販売は武田薬品工業が担当)など一般の薬局などで手に入る目薬のほか、特に医療用医薬品の分野に強みを持つ。これは医師らのアンメットメディカルニーズから検証、そのデータをもとに独自の研究成果を積み重ねてきた結果だ。
同社は、近年再注目されている非ステロイド系の領域でも多くのシェアを持っている。また、医師への開業支援部署を持ち、個人医の眼科開業に関して医業経営のサポートなども行っている。準備段階から開業後までさまざまな場面でフォローを行い、開業医からの信頼も厚い。
MRは医師にさまざまな情報を提供する、いわば医薬品の営業担当である。新しく開発された薬品や臨床結果などを、ディテールと呼ばれる定期的な医師への訪問によって伝えたり、医師から要求のあった事柄に関する資料などを届けるといった活動を通して、自社の医薬品が治療の現場に採用されることを目指している。
そのため、MRが持ち運ぶ鞄には常に製品関連のパンフレットなどの資料が詰まっており、その準備作業も大きな負荷となっていた。新たな製品が販売開始になると以前のパンフレットは廃棄処分となり、その一時保管や廃棄作業自体にも大きなコストが必要だったという。
また、医師との面会時間や場所などが厳しく規制されているため、たとえ資料を持参したとしても、医師の目に留めてもらえる保証はない。したがって、限られた時間の中でいかに情報を的確に伝えられるかがMRに求められている。
「ほんの少しの立ち話や廊下でのすれ違いざまなど、医師とのコミュニケーションをどうとるかが勝負になります」と、同社CC部 プロモーション・サポートグループのグループマネジャー 八尾孝治氏は言う。
「そんなときに、iPadを見せながら話をすると、立ち止まっていただけたりすることがあります。紙ではどこを見てよいか分からないなど、面倒がられていたものを、iPadなら強調したいところをさっと拡大表示ができるので、簡潔ながらインパクトのある説明ができ、短い時間の中でも医師の印象に残るようです」と、同社MR、関西ブロック 大阪第一グループの武田直樹氏も、iPadによる効果を実感しているという。
さらに、iPadならではのいつでもどこでも活用できる点が重宝されている。
「起動時間の待ちがないので、少しの隙間時間にも手軽に利用できるのが強みです。論文や過去のスライドなどをディテール前のちょっとした時間に目を通しておき、必要な時にさっと見せることができます。その場でインターネットで調べることができるのも大きな利点です」(武田氏)
また、MR独特の活動として、医師との面会時に行われるヒアリング(処方実態聴取)がある。これは、ある治療疾患にどのような薬剤を用いているのか、どういう比率で使っているのかという処方パターンを聞き取り、実際の使われ方からニーズの傾向を探ったり、新製品の開発など、今後の戦略に反映させる貴重なデータとする。
従来は、口頭でのやりとりを専用のアンケート用紙に手書きで記入し、グループごとにとりまとめて本社に提出し、データ化が行われていた。
「紙のアンケート用紙は作業が煩雑で大変でした。また、医師が忙しいときは用紙を渡しておくのですが、いつまでも書いてもらえなかったり、あるいは書いたものを放置され、他社に見られたりといったこともありました」と、医療マーケティング本部 マーケティング部の池田修造部長は振り返る。
そこで専用アプリを開発、iPadを用いた電子アンケートに変更した。
「紙と比べて入力も手軽ですし、何より協力的になった医師がいたのもうれしかったですね」(池田氏)。入力されたデータは3G回線ですぐに外部サーバに送信され、統計やグラフ化などの用途に利用を検討している。
処方に関しては、学会で発表された論文や資料を見せたり、ほかの医師の適用方法なども紹介する。
「iPadの専用アプリに資料として入れておき、ヒアリングの際などにご紹介しています。エビデンスとして説得力があるものをすぐにお見せできることが大きなポイントです。医師の反応も上々です。興味を引く話題を次々に提供できますから」(武田氏)
同社では使い方のサポートとして動画による操作解説を配信したり、アンケートなどを実施して、さらに使い勝手などの改善を検討している。また効果検証も実施、売上実績で、iPadを配布したグループとそうでないグループとを比較した結果、前者の売上が2~3%ほど上回っているという違いが見られたという。
今後は社内システムとの連携を視野に入れて、セキュリティ面を検証しながら全面採用を進めていくという。
「MRは地方出張なども多いため、FaceTimeによる遠隔会議なども有効活用できると思います。トライアルで制作したアプリケーションやNotesメールの検証なども含めて、MRが現場で役立つツールとして活用を進めていきたいと考えています」(池田氏)
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