【連載】
アイエスエフネットは、インフラ導入やシステム構築から、運用監視ソリューションの提供まで、企業のITシステム構築・運用を手がける企業だ。ただ、社員のうち、7~8割は顧客企業に常駐しているという業務形態であるため、社内コミュニケーションが少なく、社員との連絡が取りづらいという問題があった。そこで、同社がこれを解決するために導入したのが、1,700台のiPhoneだ。
「以前は個人の携帯電話が連絡手段だったため、緊急時にも連絡が取りづらく苦労していました。客先で電話に出るのは難しいですし、PCでメールチェックができるのは業務が終わる頃。台風などで年に数回は緊急連絡を取りたいことがあったのですが、そのたびに苦労していました」と語るのは、管理本部 副本部長の安永剛氏だ。
毎月、帰社日は設けているが、業務の都合上全員が戻れるとは限らない。社内コミュニケーションの強化やBCP対策のためにも、何らかの連絡手段を持たなければならないというのが同社にとっての課題であった。
「営業担当者や役職者を中心に150人ほどには会社名義の携帯電話を配布していましたが、この先どうしたらいいのかと考えていた時に出会ったのがiPhoneです」と、経営情報本部 本部長である金貴浩氏は語る。
2009年12月に導入検討が開始され、当時はまだスマートフォン自体が少なかったこともあり、端末にiPhoneを選択。2010年3月からまず営業担当者や役職者に導入が開始され、他の社員にはその後3カ月かけて順次導入された。
「当初は利用方法がわからないという声も多く、ソフトバンクテレコムさんのサポートを受けてマニュアルを作成したり、iPhone事務局を設置して対応したりと、教育にも苦労しました。現在はiPhoneニュースという形で毎月おすすめのアプリなどを紹介しています」と、金氏は導入当時を振り返る。
アイエスエフネットでは独自アプリの導入などは行わず、市販アプリを業務に活用している。打ち合わせにはSkypeを利用し、マニュアルはPDFで配布するといった具合だ。
セキュリティ対策について金氏は、「誓約書で悪意のある利用については制限を設けているほか、パスワードは桁数やミス回数を厳しく設定しています。業務のデータは全てクラウド上にあるものをオンライン参照するようになっていますので、基本的には端末を落としても情報漏洩にはつながりません。端末を無くさないというのは無理なので、無くしても情報が漏れないようにすることが大切だと考えています」と説明する。
利用料金については、元々携帯電話を配布していたメンバーを中心に一部は全額会社負担となっているが、他のユーザーに関しては一定額を超えた分について個人に請求する公私分計を利用している。有料アプリの決済分などは個人に請求されるという仕組みだ。
特に活用しているアプリはHandbookで、社長メッセージの動画配信や教育などに広く利用されている。
「当初から社長メッセージを動画で配信したいと考えていました。週次で動画メッセージを配信し、その感想を週報に書いて提出してもらうようにしています。98~99%の社員から感想が戻ってきますから、ほぼ全員にメッセージが届いているということになります」と、安永氏はiPhone導入により、目標であった社内コミュニケーションの強化が実現できていると語る。
教育利用ではセキュリティとビジネスマナーのテストを3カ月に1回実施したり、アンケート等のフィードバックでもHandbookを活用している。今後はさらに機能を充実させ、日報や週報で集まってくる改善案やトラブル対処などをまとめて配信したり、マニュアル類を充実させていくという。
またBCP対策では、MMSでの一斉メール送信を利用した防災訓練のようなことも行っているという。残念ながら東日本大震災の折には3Gネットワークの混雑から、スムーズなメール連絡は実現されなかったものの、電話のみで対応していた時よりは迅速に安否確認が行われたという。
ソフトバンクテレコムが提供する導入効果測定を実施した結果、iPhoneを活用することで残業時間が減ったという回答が全体で12%あり、外勤技術者に絞ると、実に75%が残業時間が減ったと回答したという。また、営業担当者では17%が訪問件数が増えたと回答した。
「資料を取りに戻る、お客様との連絡のために戻る、という帰社のための移動時間がなくなったのが非常に大きいですね。その時間を業務に向けられるようになったため、訪問件数が増えたり残業が減っているのだと思います」と、エンタープライズサービス事業本部 営業部の松谷浩平氏は説明する。
従来はオフィスや自宅に戻ってPCを起動しなければ読むことができなかった会社ドメインのメールをiPhoneで見られるようになったことで、対応のタイムラグが減ったのは確かだ。それ以上に、空き時間を効果的に使えるようになったという感想が聞かれたという。
「問題点や改善案を日報に書き込むのですが、すべてを終えて帰社してから作業すると時間がかかりますが、今は思いついた時に簡単にiPhoneで書き込んでおいて、帰社してから清書するようにしています。疲れた頭でゼロから考えるより、ずっと効率がいいですね」と松谷氏。移動時の地図確認や、電車の乗り換え案内なども予想以上に便利さを実感したという。
現在同社ではiPhone 3GSを中心に利用しているが、今後、順次iPhone 4/4Sへの乗り換えを進め、iCloudをファイルバックアップに活用していく予定だという。
「今までiPhoneを個人PCには接続させないために、iTunes用のPCを別途用意していましたが、iCloudが使えればそれが不要になります。また、今後はMDMにも注目したいですね。ただ、セキュリティ、資産管理、アプリ等の一括インストールなど管理側からは魅力的な機能ですが、まだスタンダードが決まっていないと感じています。今後の流れを見守りたいですね」と金氏。
営業担当者からは各種申請や承認についてもiPhoneから行えるようにして欲しいという声があるが、これにも近いうちに対応が予定されているようだ。
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