【連載】

事例で学ぶiPhone/iPad活用術

33 さくら総合病院がiPadで動画使ったトレーニングや遠隔治療(動画付)

      [2011/11/25]

    地域医療へiPhoneやiPadを導入する動きが急速に広まっているが、救急車にiPadを備えたり、大学病院内で電子カルテを取り入れるなど、活用方法はいまだ限定的だ。そんな中、医療法人医仁会さくら総合病院(愛知県丹羽郡大口町)では、レントゲン画像診断(読影)、救急救命に続き、リハビリの分野へも活用の領域を広げている。

    リハビリテーションで2つの活用法

    さくら総合病院では2010年より、医療現場におけるiPadの活用を進めている。最初の取り組みでは、患者のCT/MRI画像を遠隔地でもiPadで閲覧可能にして、必要な場合には外部の医師の協力を得て治療にあたる読影の仕組みを実現した。愛知医大放射線科の専門医によるリアルタイムのサポート体制が築かれている。

    次に活用を進めたのが、救急救命出動の現場である。同院では、消防の要請に応じて医師が事故などの現場に赴く「ドクターカー」を所有している。この出動時に、現場から送られてきた場所情報をiPad上の地図で表示させることで、現場地点への最適ルートが表示されるのだ。よりスムーズな現場到着で、救命率の上昇に役立っているという。

    そして2011年5月からは、同院のリハビリテーションセンターでもiPad2の活用が進んでいる。アプリを使って患者が思考トレーニングをしたり、訓練の様子をカメラで動画撮影し、進捗を客観的に判定して今後の治療プランに役立てたりしている。アプリを使ったトレーニングは、一時的な認知・記憶障害を持った患者向けに実施されている。


    さくら総合病院 リハビリテーションセンター長 磯村隆倫氏

    「指だけの簡単な動作で操作できるiPadに、右脳を鍛えたり計算ドリルのような頭の体操として使えるアプリを入れて、容易かつ遊び感覚でリハビリを進めていくことができるようになっています」と、リハビリテーションセンター長の磯村隆倫氏は説明する。iPad2導入以前には、計算ドリルやぬり絵といったものを紙ベースでそろえておき、患者の状態によって適したものをリハビリに組み込んでいた。

    「実際の道具を用いたリハビリについてはiPad2を導入した現在でも行っています。ただ、iPad2の操作は平面上であってもフリック入力などさまざまな動きのバリエーションがありますので、例えばタッチペンを用いた動作を含むリハビリも行っています」(磯村氏)

    iPad2ならではの活用が進んでいるのが、理学療法・作業療法の分野である。一定の動きや動作などを繰り返しながら運動機能の維持回復をしていくリハビリの現場では、さまざまな効果が報告されている。

    リハビリの様子をiPad2のカメラで動画として記録に残し、後で患者に見せて自身の現在の状態や回復状況を客観的に見える形で知らせている。患者は自分の動きを確認でき、以前の状態と比較できるので、明らかにリハビリに取り組むモチベーションが違ってくるようだ。

    「結果が目に見えると、もう一歩先に進もうとする意欲が生まれてきます。また同じような症例患者の動画があれば、その回復過程を見せることで、リハビリを続ければここまでできるようになると頑張るきっかけになると思います」(磯村氏)

    さらに、リハビリ実施の時間に面会できない患者の家族にも、その効果がどれほど表れてきているかをいつでも見せることができる。

    リハビリの様子をiPad2のカメラで動画撮影し、患者とその家族および医師たちとの間で情報共有している。リハビリの進み具合を確認したり、その後の治療方針の決定などに役立っているという

    「以前は、リハビリを行っている姿を実際に見ることのできないご家族に対しては口頭で進行度合いを説明していましたが、イメージすることが難しかったようです。しかし、iPad2で患者さんの様子を動画で見せると、回復度合いをよくご理解いただけます。まさに百聞は一見に如かずですね。

    ご家族から、身内の様子をビジュアルで把握できるという点でご好評を得ています。療法士だけでなく、ご家族や患者さんご本人とも同じ認識のもとで状況を把握できる点が大きいですね。効果は分かっていたはずですが、いざ導入してみると予想以上に反響がありました」(磯村氏)

    理学療法の立場からも、後で映像を見直しながら動作分析ができる点が優れていると磯村氏。その分析内容をもとに、次のリハビリプログラムを組んでいくことも可能になるという。

    さくら総合病院 情報部 下端一弘氏

    現在、さくら総合病院では関連施設を含めて147台のiPadが利用されている。情報部の下端一弘氏は、以前からさまざまなデバイスの検討も行われていたが、やはりiPad2にたどり着いたと語る。

    「病院は多くの個人情報を扱うため、セキュリティ面で不安のあるデバイスは使えません。あとはタッチパネルの反応速度がポイントになりました。iPadと比べると引っかかりがはっきり分かるほどのデバイスもありました。病院内だと極限の状況で使用する場合もあるため、少しでもフラストレーションがたまるようなデバイスは使えないですね」(下端氏)

    心電図などを遠隔監視し、処置までの時間を短縮

    さらに将来に向けた使い方も試験的に運用中だ。同院の関連施設として、老人保健施設「さくら荘」と有料老人ホーム「太郎と花子」がある。この入居者のうち希望者には心電図モニターを設置し、1分単位に自動更新される患者の生体情報を、iPad2から遠隔操作で確認できるシステムを試験導入している。これによって、医師が遠隔地に居ながら患者の心電図を確認でき、緊急処置の必要性を判断することが可能になる。

    さくら総合病院 院長 小林勝正氏

    「患者が異常な状態に陥った場合に、初期処置を行うまでの時間が短縮され、また、常に医師の判断を仰ぐことができるという安心感が生まれたというメリットがあります」(下端氏)。

    生体情報を常にiPadで管理することで、アラームが鳴ったらすぐに心電図に切り替わり即座に医療処置・救急搬送ができる。そんなシステムを早急に整えたいとさくら総合病院 院長 小林勝正氏は語る。

    「iPad2のようなデバイスを活用していくことで、家庭と病院、施設と病院とがいつでもコンタクトが取れる状態になります。それが実現すれば日本の医療がことごとく変わっていくと思います」(小林氏)

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