【連載】

事例で学ぶiPhone/iPad活用術

32 営業のスキル不足をカバー、BMWが店舗でiPadを積極活用(動画付)

      [2011/11/16]

    東京駅近くのBMW Group Japan本社

    ドイツ発の世界的な高級自動車メーカーとして知られるBMW Groupの日本法人であるBMW Group Japanでは、2010年末から全店でiPadを営業活動に取り入れている。

    2010年夏頃からモバイルデバイスの営業活用という課題にiPadが応えられるのではないかと検討を開始した同社では、2010年10月から積極的な導入を開始。試験運用を経て、正式採用されたのが2010年12月のことだ。現在では1店舗1台を基本として、186台を導入。系列ブランドである「MINI」の店舗も含めると、約280台のiPadが導入されている。

    BMW Japanが導入したiPad

    iPadの活用シーンは、主に顧客に対する店舗での商品説明だ。カタログと関連動画等をiPadで閲覧できるようにした結果、従来は紙カタログベースで行っていた説明が、より詳細かつ手軽に行えるようになった。

    BMW マーケティング・ディビジョン カスタマー・リレーションシップ・マネジメント CRMスペシャリストの市川智一氏

    「何より、お客様と同じ情報を見ながら商談できる点が非常にいいですね。BMWのお客様は最新のものやサービスを好まれる方が多いので、iPadは親和性が高いと感じています」と、BMWマーケティング・ディビジョン カスタマー・リレーションシップ・マネジメント CRMスペシャリストの市川智一氏は語る。

    iPadで利用するカタログは、閲覧アプリを自社開発し、紙カタログ用データを活用している。ページめくりのアニメーションも付いた、本格的なカタログアプリだ。

    「カタログを見せるだけならPDFでも十分ですが、iPadでカタログを見ているという実感のためには紙をめくるような表現も必要だと考えました。PCで資料や動画を見せるのでは、起動時間が長く、持ち運びには不便だったので、iPadの手軽さと速さが強みになると感じています」と市川氏。

    従来は数冊の紙カタログを積み上げ、いろいろなページをめくりながら比較する必要があったが、iPadのカタログ機能ならば同一の画面を見ながら手軽にデータを参照し、商談を進めることができる。ワンタッチで動画再生も行えるため、より深い製品紹介が行えるようになったのだ。

    さらに、店舗ではあらかじめBMWのサイトを表示した状態にしておき、起動すればすぐに公開している情報や動画を閲覧できるようにするなど、より手軽に利用できるよう工夫している。

    カラー・ホイールやインテリアを着せ替えられるアプリが好評

    もうひとつ、BMWが独自開発したアプリがある。車のカラーリング変更や大きく見た目が変化するオプションの有無を画面上でシミュレーションできるアプリ(BMW Colourring Japan)だ。これはApp Storeから自由にダウンロード可能で、BMWの一部車種が対応している。

    ボディカラーや内装もボタン1つで切り替えられ、確認できる

    「店舗には展示していないカラーのシミュレーションができてわかりやすいと好評です。営業担当者からも商談が進みやすくなったという声が届いています」と市川氏。

    カラーシミュレーションは以前から一部ではPCを利用して行っていたが、営業担当者が操作してから顧客に見せるという形になってしまい、iPadのような同一の画面を見ている感覚や、直感的な操作は実現できなかった。iPadでより簡単に利用できるようになったことや、販売の現場において効果的なシミュレーションができることから、営業担当者、顧客の双方から高く評価されている。

    導入にあたって、全店にスムーズに配備するための苦労は多少あったものの、大きなトラブルはなかったようだ。ユーザー教育は、普段から行われている会議やトレーニングの中で扱う程度だったという。直感的な操作が可能なiPadはほとんど抵抗なく現場で受け入れられた。店舗ごとに行う営業報告についてもiPadから行えるようにWebアプリケーションを対応させており、iPadで営業活動の報告を行う担当者もいるという。

    iPad導入により商談回数も削減

    茨城県つくば市にあるBMW正規ディーラー「モトーレンつくば」

    茨城県つくば市にあるBMW正規ディーラー「モトーレンつくば」の店内には、タッチ操作が可能な大型モニターが設置されており、車体や内装の色、タイヤホイールデザインの組み合わせを画面上で自由に変更できる。車体の色は車種によっては10種類以上もあり、例えばシルバー系でも明るめの色や渋めの色といったバリエーションがある。画面上で車の色を何度も切り替えながら確認することで、顧客が気に入った色をイメージできるのだ。同様に、内装の色やタイヤホイールも切り替えながら好みの仕様を作り上げることができる。

    店内にあるタッチ操作可能な大型モニター

    この大型モニターで活用されている販促ツールをiPad用に最適化したものが、無料アプリケーション『BMW Colouring Japan』だ。このアプリをiPadに入れておくことで、ユーザー宅でも店内同様のサービスを提供できる。iPadの導入前は、紙カタログで車のイメージを持ってもらうか、店頭の展示車を確認してもらうかのどちらかであった。紙カタログではスペースの都合上、車のイメージが分かる2色程度が紹介され、ほかの色は小さく記載されているだけである。iPad導入後はすべての色合いを見ることができ、購入したい車のイメージを持ってもらうことが可能になった。

    『BMW Colouring Japan』により、購入したい車のイメージを持ってもらうことが可能だ

    モトーレンつくば 営業本部 次長 土浦本店 店長 大内翼氏

    「新規のお客さまが来店してから受注にいたるまでの商談回数は、これまで4~5回ほどでしたが、iPadの活用により3~4回程度と、平均1.5回ほど減りました」と、モトーレンつくば 営業本部次長 土浦本店 店長の大内翼氏は導入効果を説明する。

    大内氏によれば、iPad導入前は顧客宅を訪問した際、要望があった資料を再度届けることも多かったという。

    「お客さまの細かい要望が分からない状況で訪問することもあるため、望む車種や仕様、色、内装、お支払い方法、自動車保険の資料などをすべて用意できているとは限りません。膨大な商談資料をすべて持ち歩くことはできなかったのです。iPadを導入したことでそれが解決できました。資料はすべてアプリケーションの『iBooks』に入れています。お客さまが必要とする情報をその場ですぐに提供できるので、お客さまの不安が即時に解消されるのです。店内の商談でも、不足していた資料を取りに離席することがあったのですが、iPadは必要な資料が入っているので席を離れることなく円滑に商談が進められるのです」(大内氏)

    iPadには資料のほかに、車が走っている風景の動画やエンジン音なども収められているため、見て聴くという人の五感に訴えることもできる。この点が紙の資料と大きく違う点だ。また、商談は経験年数や営業スキルにより大きく左右されるが、iPadを活用することで営業経験の浅い担当者でも分かりやすく説明できるメリットもある。

    BMWドライバーズポジション(左)や試乗コース(右)の説明もiPadで行う

    より積極的に触ってもらう環境を構築

    今後の課題として市川氏が挙げたのが、来店客がより積極的にiPadに触れ、活用できる環境の整備だ。

    「現在でもiPadはショールーム内に置いてあり、お客様に触っていただけるようになっています。カラーシミュレーションなどを楽しんでいただき、商談のきっかけにして欲しいのですが、お客様がその存在に気付かないケースも多く、さらに活用できる可能性があると感じています。」と市川氏は語る。

    そこで同社では、利用促進の手段として、独自コンテンツの用意も検討しているという。現場レベルでも、訪問営業時に持ち出して活用するなど、工夫も広がっている。今後は、より多彩な使い方が出てきそうだ。


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