【連載】
ムラコシ精工 住インテリア事業部は、ドアレバーや扉金具といった住宅内装用機能家具の製造販売部門として、大手建材メーカーやキッチン/ハウスメーカーなどと多くの取引実績を持つ。東京本社のほか浜松、大阪、福岡の営業所と、福島県と山梨県には工場を構えており、自社開発製品を自社工場で生産して提供できるという、開発力と製造力の両翼によるシナジー効果が強みとなっている。
1918年に村越鉄工所として創業、飛行機の精密部品から戦後にはミシン用ねじの製作、その後自動車のブレーキ部品など商品の拡充を図りながら、1976年に現在の家具用金具などをつくるムラコシ精工として独立する。現在の顧客数は4,000社以上、年間の出荷個数は3億数千万におよぶという。
住インテリア事業部 営業部 次長の柄沢祥史氏は、同社の特色をこう表現する。
「開発部隊と営業部隊とが常に一体となって顧客ニーズを取り入れ、試作してすぐに提案ができ、品質確認の試験までがワンストップで行えること。お客様はハウスビルダーの設計士さんなど住宅に関する開発部隊の方なので、開発者・技術者同士で直接会話ができることは、その後のスムーズな商談につながる大きな可能性を持っています」(柄沢氏)
こうした機能家具の流通(卸・小売)ではいわゆる「商社型」の業者が多く、自社で工場や開発部隊を持つことは珍しいという。この点にも同社のこだわりがあり、特に品質管理を徹底することで他社と明確な差別化を図っている。製造現場ではppm(parts per million:100万分の1、百万分率)管理(高信頼性や安全性を要求される製品において、その不良品発生率を100万分の1の低い単位まで保証すること)を徹底し、その結果2010年度の実績は0.8ppmという数値を達成した。
「製造業ではほぼあり得ないほど精巧で厳密な管理」(柄沢氏)を強みとしている。また自社工場ならではのメリットで、家具メーカーのミリ単位の細かな要望にも応えられるという点が、既成の輸入金物との大きな違いと柄沢氏は説明する。
2011年7月、同社は25台のiPad2を営業職に配布、カタログの電子化などを行って、現在は営業提案活動に利用が進んでいる。導入以前の営業スタイルを、住インテリア事業部 営業部 営業一課の中藪勇介氏はこう説明する。
「以前はカタログなどの販促ツールが紙で用意されていました。しかし、商品点数が増えるにつれて、紙カタログの厚さ重さも加速度的に増していったのです」(中藪氏)
当初は木工用ジョイントやボルト、ナットといったものを中心に一般・婚礼家具メーカーに納めており商品数も限られていたが、欧州の先進的な家具メーカーに採用された家具用のスライドヒンジが国内の家具にも採用されはじめたのがきっかけとなり、飛躍的に取り扱う商品の数やカテゴリが増えていったという。そのため、カタログの電子化は喫緊の課題だった。
さらに、同社の扱う商品の特徴が、お客さまに伝わりにくいという悩みもあった。先述のスライドヒンジは、外から金物が見えない、上下左右前後の調整ができる、着脱が可能といった数々の利点を備えていたため、国内ではキッチン家具に採用され、次第に一般家具や扉付きのクローゼットとして広く普及していった。
この扉の動きや開け方などが、機能性を伴いながら進化していったことが、悩みの一因となる。閉まる直前になって動きがゆっくりになるもの、折り畳まれより広く開いて使い勝手を上げているものなど、開閉する様子などの「動き」の表現を訴求する必要が出てきたのだ。引く、開く、折るなど動きも複雑で、しかも静音化したものなど、紙や口頭の説明では表現不可能。
「見て触って聞いてもらわないと理解できないものになってしまいました。そこで展示会を開くなど、実際に実物を見ていただく機会が必要になったのです」(柄沢氏)
その機会として3日間の展示会を3年連続で開催したが、知名度は上がったものの、コストに見合う効果が得られなかったこともあり、商品を常設できるショールームを新宿にオープンさせた。
「近隣のお客さまには見に来ていただけますが、それ以外の方にも訴求する手段が依然として必要でした。そこで、動画による説明しかないという結論に至ったのです。早速、地震時扉をロックするための耐震ラッチなど、いくつかの商品紹介を動画化して、ノートPCでの閲覧などを行っていました。ただ、持ち運びには大きくて重く、起動が遅い、バッテリの持ちや故障が心配などの欠点も目立っており、あまり活用が進んでいませんでした」(柄沢氏)
そこに、iPad2の登場があったと柄沢氏。起動の速さ、動画や音声が活用できる、扱いも簡単という点から試験的に導入し、有効性を確認後、本格導入と進んでいった。
こうしてiPad2を営業部隊25人全員に配布、商品を1分で説明する動画などを制作し、営業活動に取り入れていった。
「一目瞭然とはこのことですね。紙あるいは口頭で説明してもご理解いただけなかった動きが瞬時に分かっていただけるようになりました。iPad2にはカメラが付いているので、いろいろなドアや扉の動きを自分で手軽に撮影してお客さまに見せることができるのも便利です」(中藪氏)
紙のカタログは、凸版印刷によるアプリケーション「iCata」を導入して電子化、閲覧や検索をより手軽に行えるようにした。部品の利用例の写真や単価表、施工実績などを入れて利用している。
「入れておいて場所をとらないのがいいと思います。いろいろな種類の紙カタログをそろえてバインダーに入れて……。以前はこうして荷物が大きく重くなってとても苦労していました。それを劇的に変えてくれたのがiPad。今はこれ1台でよくなったので、非常に仕事がしやすくなって助かっています」(中藪氏)
さらに見積、日報などを管理している社内システムへの接続にも活用が進められている。外出先から3G回線を通して接続し、社内業務を消化することもできる。
「外でいろいろいなものがチェックでき、社内との連絡も取りながら雑務を排除して営業に専念できるようになりました。30~60分以上は営業に費やす時間が増えていると思います」(中藪氏)
導入コストについて柄沢氏は、「このように、営業提案にかける時間が増えたことを考慮すると、iPad2導入の費用対効果は非常に高いと思います。また顧客へ見せるツールのコスト、特に動作のサンプルとしてお見せするドアなどのミニチュアづくりが減ったのと、分厚いカタログを営業の人数分用意しなくてもすむようになった影響が数字的には大きいです」(柄沢氏)
今後は技術部門へも配布展開したいと柄沢氏は考えている。いつでもどこでも3Dの図面を表示できるiPad2が、技術部の生産性向上へどのように寄与できるか、また利用効果の高いアプリケーションはどのようなものが想定できるかなどを考案中とのこと。
「iPad2のようなツールはいずれ誰もが持つ時代になるでしょう。そこへ何を入れてどう効果的に見せて利用するかが大切です。われわれは、何をすれば顧客に喜んでいただけるのかという点を最重要視しています。紙の無駄とかアプリなどは二次的三次的なもの、商品の機能を理解していただき、本当に必要で正しいものを買っていただくために、正確な情報を提供することが今回の導入の目的なのです」(柄沢氏)
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