半導体ポータルサイトを運営しているセミコンポータルが主催する「iPhone 7の姿を追う」と題する会員向けセミナーが去る3月15日に東京都内で開催された(図1)。過去のiPhoneの分解・解析結果を基に、2016年秋にも発売される可能性がある次機種がどのようなものか予想してみようという興味深いテーマであったので、セミナーで語られた内容を以下に要約して紹介したい。

図1 「iPhone 7の姿を追う」セミナーの会場風景

スマホはあらゆるリモコンのプラットフォーム

図2 セミコンポータル編集長の津田建二氏

まず、司会を務めたセミコンポータル編集長の津田建二氏が「ポストスマホは何か?」と題してこのセミナーの意義について話した。

津田氏は、「2012年にスマートフォン(スマホ)は、出荷数量ベースで、パーソナルコンピュータ(PC)の2倍に成長し、2015年にはPCの5倍の14億3000万台へと成長している。いまや人々の情報プラットフォームは、PCからスマホに替わっている。スマホの普及率は韓国が7割を超え、米国が6割を超えているのに対して日本は25%程度とまだまだ低く、新興国同様、伸びる余地がある。いままでのような等比級数的成長は期待できなくても成長そのものは続くだろう」とし、「機能面や技術面でも、スマホはまだまだ未熟で、成長ののりしろは十分ある。スマホは、あらゆるリモコンのプラットフォームになるだろう。そのベースとなるのがコンテキストアウエアネスだ。スマホは、2020年に向かって進化していく。スマホの次はやはりスマホだろう」と、ポストスマホは進化したスマホになると指摘した。

iPhoneには、 心臓部にあたるアプリケーションプロセッサだけではなく、さまざまなセンサやセンサハブ、パワーマネジメント、タッチセンサコントローラ、フラッシュメモリなど、多数の半導体が使われている。しかもiPhoneに限らず、スマホではそれぞれの電子部品は必ずしも次の世代の機種には使われず他社製品に置き換わることも絶えず行われている。半導体メーカーにとっては脅威であると同時にチャンスでもある。携帯電話の栄枯盛衰は激しく、かつてトップだったモトローラが姿を消し、ノキアに代わったが、同社はスマホブームに乗り遅れた。スマホは変化がさらに激しい市場であるが、そんな中でもスマホの元祖であるアップルは経営的に安定した地位を確立し続けている。

津田氏は今回のセミナーの狙いについて、「テクノロジーやビジネスモデルでリードしているアップルは、次のiPhone 7でどのような機能を搭載するのか、これまでの半導体テクノロジーを捉えることで、それが見えてくるだろう。半導体ビジネスの視点で、歴代のiPhoneはじめ、さまざまなモバイル製品や電気製品を分解してきた専門家にiPhone 7の姿を語ってもらうことにした。議論を深め、1社でも多くの日本の半導体・電子部品メーカーが次世代スマホ向けの市場に参入していただきたい」と述べた。

スマホはまだまだエレクトロニクス業界の牽引車

図3:テカナリエ上席アナリストの清水洋治氏

次に、テカナリエの取締役・上席アナリストである清水洋治氏(元ルネサス エレクトロニクス主管技師長)が「iphone 7の姿を追う」と題して講演した。清水氏は津田氏の「スマホの次はやはりスマホ」という話を受けて、「スマホが当面は、まだまだエレクトロニクス業界の牽引車であってもらわないと困る状況にある。IoTとか自動運転車とか将来期待されるモノはいろいろあるが、これらが爆発的に市場を生み出す気配はいまのところ見られない。これからも、消費電力をさらに落とすとか、ユーザインタフェースを充実させるとかして進化していってほしい。スマホが、発展期を過ぎて衰退期に入ったとは考えにくいし、考えたくもない。まだ大きな市場があると考えられる」と述べた。

初代iPhoneに日本勢はひややかだった

「初代iPhoneは2007年6月29日(米国時間)に発売された。Steve JobsはiPhone発表会の席上、『ブラックベリーはスマートじゃない』といってiPhoneを取り出したが、スマートフォンと追う言葉は使っていない。発売当時、日本の携帯電話メーカーは「こんなものが成功するわけがない」と皆批判的だった。中国勢は無関心だった。欧州勢は、当時、ノキア一色と言う感じで、iPhoneはせいぜい『ブラックベリーの代替品』ぐらいの認識しかなかった。iPhoneも最初はこんな具合だった」(清水氏)。しかし、アップルはその後、ほぼ毎年、性能を向上させ、新機能を取り入れた新機種を投入し、今日に至っている(図4、図5参照)。

図4:iPhoneの通信方式および速度の変遷 (出所:テカナリエ)

図5:iPhoneに搭載されるヒューマンセンサの変遷 (出所:テカナリエ)