近年、様々なモノがインターネット経由でつながる技術「IoT (モノのインターネット) 」が大きな注目を浴びている。このIoTを実現するには、情報の取得源となる各種センサーに加えて、その情報を扱うためのネットワーク技術やシステム開発技術などが必要不可欠となる。本連載では、国内でIoTへの先進的な取り組みを進める企業の対談から、IoTの実用化に向けたヒントを探っていく。

第一回では、センシング技術に長けたオムロン、そして国内電気通信事業者の雄であるニフティの2社に、IoT関連事業に関する取り組みを語ってもらった。

オムロンが推進するIoT市場の活性化

オムロンは、非常に幅広い事業領域を持つ企業だ。オムロンと言うと、一般的には、オムロンヘルスケアが提供する体組成計をはじめとした健康医療機器・サービスのイメージが強いかもしれないが、グループ全体で見ると実は工場向けのFA(Factory Automation)システム事業がかなりの割合を占めている。各種センサーやコントローラー、セーフティ機器まで10万仕様以上もの製品を製造・販売する同社は、国内の制御機器市場でトップシェアを誇り、海外でも欧州/北米/アジア/中国を中心に世界80ヶ国で事業を展開している。

オムロン 事業開発本部 マイクロデバイス事業推進部 営業推進部 環境センサー プロジェクト リーダーの柿谷淳也氏は、同事業の概要と、近年のIoTへの取り組みについて次のように説明する。

「マイクロデバイス事業推進部は、新規事業開発の中でも半導体をメインに扱っている部署です。特に近年は『MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)』のデバイス開発・製造が中心であり、IoTへの市場ニーズが高まる今は、"半導体を切り口としたアプローチ"を推し進めています」。

高性能なセンサーによって企業のIoT市場参入を支援する同社。オムロン 事業開発本部 マイクロデバイス事業推進部 技術開発部 開発2課 主査の上田直亜氏は、次のように説明する。

「IoT関連の引き合いは多いのですが、実際のところ、お客さまでも、データを収集した後でどのように扱えば良いかという肝心な部分が、不明瞭な段階にありました。弊社からセンサーと一緒にデータの扱いに関する提案をするために、エンドユーザーの利用を想定したアプリケーションの企画と開発のノウハウを持つ企業との連携を求めていました。さらに、企画を具体化する上ではインターネットへの接続を踏まえたシステム開発が必要でした。こうした問題をクリアするためには、豊富な知見と技術を持つ企業と連携する必要があります。しかし、IoTの市場は未知数で、各社とも手探りの状態です。そのため、アプリケーションの開発においては、大きな予算を投じて推進することも難しい状況でした」。

オムロン 事業開発本部 マイクロデバイス事業推進部 営業推進部 環境センサー プロジェクト リーダーの柿谷淳也氏

オムロン 事業開発本部 マイクロデバイス事業推進部 技術開発部 開発2課 主査の上田直亜氏

「環境センサー」のアプリケーション開発&クラウド連携でニフティと協業

上田氏が語ったアプリケーションの「企画」「開発」そして「コスト」という3つの壁を乗り越える方法は意外と早く見つかった。オムロンが選んだ方法は、「環境センサー」の発売に伴い、企業のIoT市場への参入支援を目的に、事業プラットフォームの構築パートナーとしてニフティと協業することだった。

ニフティでは、2015年7月から「ニフティIoTデザインセンター(以下、IoTデザインセンター)」を開始し、IoTサービスの開発・提供を検討している企業を、ネットワーク技術とシステム開発、データ分析に精通したニフティの専属エンジニアチーム「ニフティIoTラボ」が支援していた。また、アプリケーションの設計/開発/検証/プロトタイプ作成などの技術面だけでなく、企画自体の立案やリサーチ、マーケティングに至るまで幅広い支援ができることを特長としていた。

オムロンは、「IoTデザインセンター」を通じてニフティと協業することで、アプリケーションの3つの壁を短期間で乗り越えて、2016年7月15日には、法人向けの複合型センシングコンポーネント「環境センサー」および専用のスマートフォンアプリをリリースすることに成功した。

同製品は、縦46mm×横39mm×厚み14.6mmというコンパクトな本体に、温度/湿度/気圧/照度/紫外線/音圧/加速度と7種の環境情報を取得するセンシング機能と無線通信機能、バッテリーを搭載したものだ。設置するだけで周囲の環境情報をリアルタイムに収集するほか、スマートフォンを介しクラウドへデータを蓄積し、そのデータを遠隔地から参照できるなど、企業がIoTサービスを開発する上で非常に有用な製品となっている。

温度、湿度、気圧、照度、紫外線、音圧、加速度、以上7種類の環境情報を取得できる「環境センサー」

ニフティ IoT推進室 IoTデザインセンター センター長の佐々木浩一氏

ニフティ IoT推進室 IoTデザインセンター センター長の佐々木浩一氏は、「IoTデザインセンター」について、「システム開発にとどまらず、IoTのビジネスとテクノロジー両面で包括的に支援できる点が特長です。また、IoTは市場への期待が高まっている一方で、事業性が見極めにくい未成熟な市場でもあります。そのため、IoTに取り組みたいが意思決定に二の足を踏んでいるケースや、『どこから手をつけたらいいか分からない』といった声も多く聞かれます。その場合は、まずは仮説検証をするためのPoC(概念実証)を小さく早く回す手法のご提案や、アイデアデザインや企画の段階からの支援ができるのも、特長の一つです。」と説明する。

同サービスのローンチ後の反響は大きい。佐々木氏によれば、アイデア出しから具体的なサービス化まで、既に相談件数は100件を超えていると言う。

企画から開発まで企業のIoT展開をトータル支援する「ニフティIoTデザインセンター」

上田氏は、同社が「IoTデザインセンター」を採用した理由について、次の2つを挙げる。

「一つは、アプリケーションの企画力に優れていたことです。『IoTデザインセンター』では、@nifty会員を活用したエンドユーザーへのマーケティングリサーチが可能で、これはSI系企業のサービスには無い大きなメリットでした。また、『ニフティクラウドmobile backend』とその開発パートナーを活用することで、迅速かつ低コストに開発が進められる点にも期待しました。『ニフティクラウドmobile backend』を活用することで、コストを当初の試算から2分の1にまで圧縮することができました」。 また、柿谷氏は、「センサーから集めた情報はクラウド上に蓄積するだけでなく、場合によっては各現場単位でのリアルタイムな活用が求められます。具体的に言えば、加速度センサーを用いた地震検知の機能です。マーケティングリサーチでもその有用性が示されましたので、環境センサーでは、スマートフォンアプリの実装を必須とし、開発を進めました」と、同プロジェクトで重要視した事項にアプリケーション開発があったことを強調する。この点においても、IoTデザインセンサーは強みを持つという。

スマートフォンアプリのダッシュボード画面とグラフ画面

ニフティ IoT推進室 IoTデザインセンターの三嶋英城氏

開発支援を手掛けた、ニフティ IoT推進室 IoTデザインセンターの三嶋英城氏は、「今回の案件では、スマートフォンアプリの企画開発と、クラウドへのデータアップロードという2点をメインに開発支援をさせていただきました。ニフティではこの度活用した『ニフティクラウドmobile backend』をはじめ、様々なIoT開発を支援するソリューションを保持していることが大きな強みです。また、数百万人規模の『@nifty』会員基盤を活用したマーケティングリサーチなど商品企画の支援が可能であり、これを開発にシームレスに活かすことができるのも、当社サービスの大きな特徴だと思います」と語る。

実態として、製品売切りが中心となるメーカーではユーザーとのつながりが希薄な場合が多いという。先の通り、「IoTデザインセンター」ではマーケティングリサーチを通じて、メーカーとユーザー間の距離を縮める役割も果たす。この点については柿谷氏も高く評価する。

「顧客との接点が多く、その声を吸い上げる手段が豊富な『IoTデザインセンター』を利用すれば、ユーザーニーズに基づいたアプリケーションの企画と開発を進めることができます。結果として、コスト圧縮だけでなく、プロジェクトの期間短縮とその質の向上にもつながりました」。

"モノ売り"から"サービス売り"の時代へ

市場ニーズに即した製品である「環境センサー」の開発に成功したオムロン。柿谷氏は、「IoTで重要なのは、市場に既にある"類似機器が増える"のではなく、"今まで無かったところにIoTが追加される"ことです。こうした状況を作り出すには、普及へ向けた低コスト化が求められる背景から市場競争も必要になってくるでしょう。誰かがやらなければ前には進みませんので、今回提供を開始した環境センサーがその皮切りなるべく、尽力していきます」と、製品への意気込みを語る。さらに、今後のIoTへ向けた構想として、「人間はデータを見れば自然に思考能力が働きますから、"見える"ことは非常に重要です。弊社では"今まで見えなかったものを可視化する"ことにこだわり続け、今後もセンシング技術の向上に取り組んでいきます」と続けた。

これを受けて佐々木氏も、今後、IoTの普及に向けて支援のレベルを上げていくと語る。

「『IoTデザインセンター』が持つ最大の強みは、クラウドや通信のプラットフォーム、そこに携わる優秀なエンジニアを含めたテクノロジーアセットです。また、コンシューマ向けを含めた大規模なサービス提供実績が豊富であり、テクノロジーアセットを用いたビッグデータ活用などデータドリブンのアプローチが可能なことも大きな強みだと考えています。『IoTデザインセンター』の誕生から1年が経過し、企業が抱えるIoT関連の悩みやアドバイスのポイントなども掴めてきました。今後は様々なモノがサービス化していきますから、"モノ売り"から"サービス売り"の実現、さらにはそこから得られたデータを活用した継続施策においても、お手伝いしていきたいと考えています。十数年前に登場したスマートフォンが今では人々の必須デバイスとなっているように、IoTという言葉や技術、企業の取り組みなどもより自然なものになっていくでしょう」。

オムロンと「ニフティIoTデザインセンター」という強力なタッグが生み出した環境センサーは、大きなポテンシャルを備えた製品だ。アップデートや新製品・サービスの展開などを含め、今後も、IoTへの先進的な取り組みを続ける両社の動向に期待したい。

左から、ニフティ 佐々木氏、三嶋氏、オムロン 上田氏、柿谷氏

・オムロン株式会社「環境センサー」製品サイト
http://www.omron.co.jp/ecb/products/sensor/special/environmentsensor/
・ニフティIoTデザインセンター
http://iot.nifty.com/
・ニフティクラウド mobile backend
http://mb.cloud.nifty.com/

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