【コラム】

ストリートインタビュー

208 あらゆる人に暮らしやすい日本を、ユニバーサルデザイン研究家(1)

    山田久美  [2006/03/13]
    ID:105
    氏名:関根千佳
    年齢:48歳
    職業:ユーディット代表取締役
    場所:新橋
    携帯電話:au「W11H」
    1カ月の携帯電話使用料金:6,000円

    今回は、情報のユニバーサルデザインを研究されている会社、ユーディットの代表取締役である関根千佳さんです。早速ですが、このお仕事を始められたきっかけから教えて下さい。

    「私は大学卒業後、日本IBMに入社したのですが、IBMの社員だった当時、夫の仕事の関係で、1988年から2年間ほど米国に住んでいたことがあります。そこで、ITに関する米国と日本の利用者像の違いにショックを受けたのです。

    当時から、米国では、高齢者や障害を持った方も生き生きと働いておられて、しかもPCなどのIT機器もかなり使いこなしていました。例えば、全盲の方が、大学に設置してあるコンピュータの端末を使って情報を検索していたのです。私はそれを見てすごいと思いました。それに対し、日本では、若者向けのIT機器は出回り始めていたにもかかわらず、40代~50代向けの機器さえ、ほとんどありませんでした。お金も時間も向学心もある人たちが、このままITを利用できないでいるというのは、日本全体にとって、今後、大きな損失になるではないかと思ったのです。

    そういった中、自分はせっかくIT産業の中で仕事をしているのだから、何か自分にできることがあるのではないだろうかと真剣に考えるようになりました。そして、IT産業の視点から、ユニバーサルデザインを考える今の仕事をしようと考えたのです。ユニバーサルデザインとは、子ども、女性、たまたま重い荷物を持っている人、外国から来た人、シニア、障害を持つ人など、多様な人々が、できるだけ暮らしやすく、利用しやすいよう、街やもの、情報や社会をデザインしていくプロセスのことです。私は現在、その中でIT機器やコンテンツのユニバーサルデザインを研究・提案するコンサルタントという仕事をしています」

    ユニバーサルデザインに関しては、米国や欧州の方が日本よりもずっと先を行っているように感じていますが、日本が遅れを取っているのはなぜでしょうか。

    「米国は確かに最先端を行っていると思います。日本の企業も、技術的には全く問題ないと思うのですが、障害や加齢に対する理解、多様性への理解が、残念ながらまだまだありません。なぜ、理解がないか。その根底には、日本の教育制度の問題があると思います。文部科学省は、障害児に関して、分離教育体制を基本的に採用しているのです。たとえ優秀で能力が高くても、障害を持った子供たちは特別支援教育に行くべきだということで、教育委員会が振り分けてしまいます。そのため、障害を持った子供たちは、高等教育を受ける機会が極端に減ってしまうのです。なぜなら、特別支援教育では、大学受験に関する教育が少ないためで、それに伴い、大学進学率も低くなっています。大学側も、支援体制が整っているところはまだ少ないのです。当然、就職先も限られてきます。その結果、障害を持たない人たちは、障害を持つ人たちを理解する機会を奪われているです。そうすると、何かの機会に障害者が自分の身近に来たとしても、どう接して良いか分からず、場合によっては避けてしまうのです。

    でも例えば、小学校の時に障害者の同級生が同じクラスにいればどうでしょう。一緒の時間を過ごす中で、「この段差を、こうちょっとサポートしてあげれば、車椅子で越えられるんだ」といったことを子供ながらに経験できれば、そういった人たちと一緒に暮らすための知恵や、また、自分が将来、突然障害を背負った時に、あるいは、いつか年老いて身体が不自由になった時に、対処するための知恵がついているはずなのです。

    実際、私たちだって、高齢者になれば目も耳も足腰も弱くなるわけです。また、年老いた両親の面倒を見ることになる可能性もあります。将来、自分が障害や加齢でどう変わるのかということに対して、何の経験も知識もないというのは、すごく不安なことなのではないでしょうか。

    要するに、日本の環境が、海外の環境と比べて最も異なる点は、そういった障害を持った人たちと日常的に接する機会が少ないということなのです。そのため、日本では、ユニバーサルデザインに関する意識が低く、市場ニーズも低いのです。

    (インタビュアー=山田久美)

    *次回に続きます

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