【コラム】

ストリートインタビュー

180 世界から引く手あまた、人とロボットを探究する研究機関所長(7)

    山田久美  [2005/06/07]
    ID:99
    氏名:金出武雄
    年齢:59歳
    職業:カーネギーメロン大学教授/産業技術総合研究所 臨海副都心センター デジタルヒューマン研究センター センター長
    場所:銀座
    携帯電話:au 三洋電機製GLOBAL PASSPORT対応端末
    1カ月の携帯電話使用料金:-円

    どうしたかと言いますと、その基本的なアイデアはこうです。あらかじめデータベースとして、極めて多数の高解像度の顔画像を集め、それらに平滑化フィルタを次々とかけ、1/2、1/4、1/8、1/16……という風に、低解像度の画像を全部作って用意しておきます。一方、例えば、1/4の低解像度の画像が新たに与えられ、その解像度を4倍にしたいとします。与えられた画像の各点について、その値、その半分の解像度の画像の同じ場所の値、そのまた半分の解像度の画像のその場所の値を調べていくのです。それらの値は、データベース中の画像でいうと、1/16、1/32……のそれに対応するはずです。データベース中の画像を調べて、それらの値の組み合わせと一番近い組み合わせを持つひとの高解像度画像の4×4画像パッチを持ってくる。そういうことを全ての点に繰り返すのです。

    金出教授は、低解像度の顔画像から高解像度の顔画像を生成することに成功。「つまるところは、自分の顔の小さな領域を見てみると、その領域がまったく同じか、ほとんど同じ見え方をする人が他に誰かいるということ。このプログラムを『幻覚プログラム』と名づけました」

    つまり、作り出される画像は、いろんな人の4×4の高解像度画像パッチのつぎはぎというわけです。ちなみに、生成したい人の顔画像はもちろんデータベースの中には入っていませんよ(笑)。実際のアルゴリズムはもう少し複雑ですが、基本的にはこのようなやり方です。また、こうやって低解像度から作り出した高解像度の顔画像は、正解の顔画像とあまり変わらないことを確認することができました。これもなんだか不思議ですね。つまるところは、自分の顔の小さな領域を見てみると、その領域がまったく同じか、ほとんど同じ見え方をする人が他に誰かいるということですね。その似ている人は同じ人ではないのですが、---もしそうなら、その人は自分と同じ顔になります---、私は、本当はできないことをやっているという意味を込めて、このプログラムを『幻覚プログラム』と名づけました。この技術は、考え方としての面白みが主なものですが、その応用として、例えば、金融機関などに設置された解像度の低い監視カメラに映った銀行強盗の映像を高解像度に変換するといったことや、低解像度で読めないドキュメントの解像度をあげて読めるようにするといったことも可能になるはずです」

    1995年以降、金出教授が研究を進められている「バーチャライズド・リアリティ」についても、是非お聞かせ下さい!「バーチャライズド・リアリティ(Virtualized Reality)とは、私が命名したもので、『仮想化現実』と訳します。スポーツや手術のような時間的に変化するシーンを、その周りから複数台のビデオカメラで撮影し、そのシーンの時間+3D+見え方の表現を作り出すことで、その中で行われている出来事を、そこにいない人間が、あたかもそこにいるかのごとくに見ることができるというものです。

    金出教授が命名した「バーチャライズド・リアリティ(仮想化現実)」。スポーツや手術のような時間的に変化するシーンを、その周りから複数台のビデオカメラで撮影し、そのシーンの時間+3D+見え方の表現を作り出すことで、その中で行われている出来事を、そこにいない人間が、あたかもそこにいるかのごとくに見ることができるというもの。仮想現実(Virtual Reality)ではなく、本当に起こっている現実をバーチャル化する

    51台のデジタルビデオカメラを設置した3D Roomを作り、数々の実験を実施。51台のカメラは完全にリアルタイムで同期が取られており、1台1台のカメラは20MB程度、全体で1GB/secのスループット

    この研究により、将来人は、NBAのコート内で試合を見る、また、プレーヤーと一緒に走るといった体験も可能となるだろう、と金出教授

    実際、51台のデジタルビデオカメラを設置した3D Roomを作り、数々の実験を行ってきました。51台のカメラは完全にリアルタイムで同期が取られており、1台1台のカメラは20MB程度、全体で1GB/secのスループットとなります。いわゆる仮想現実(Virtual Reality)ではなく、本当に起こっている現実をバーチャル化しているので、バーチャライズド・リアリティというわけです。撮ったビデオフレームを組み合わせて再生しているだけのスーパーボウルの『Eye Vision』と違って、実際にはカメラのないところからの映像も作り出せるのが特徴です。最終目標は、NBAのバスケットボールコートを多くのカメラで囲って、"Let's watch NBA on the court." (NBAをコートで見よう)を実現すること、と言っています。そうなると、人はNBAのコート内で試合を見る、また、プレーヤーと一緒に走るといった体験も可能となるでしょう。

    動画
    wmv形式 614KB 18秒
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    wmv形式 224KB 6秒
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    一般的によくいわれているバーチャルリアリティとは、仮想の世界をコンピュータ上に作って、シミュレーションしようというものです。では、なぜ、シミュレーションする必要があるのかと考えると、それは、リアルリアリティ(実世界)というものがあるからです。リアルリアリティの中で実証実験などをしようと思うと、不可能である、莫大な費用がかかる、危険を伴うなどさまざまな問題が発生することから、バーチャルリアリティを利用するのです。例えば、この場所に建物を建てると景観はどうなるかを知りたい場合、建ててしまっては遅いわけです。あるいは、原子力発電所で事故が起こった際に、ロボットを送りこむことを想定した場合、ロボットは何をどうすべきかを考えたい。でも、実際には実験することはできません。そんな時、バーチャルリアリティを利用するのです。宇宙での実験についても、基本的にはあらかじめに実行することはできないので、バーチャルで行います。つまり、リアルリアリティでやりたいのだけれどできないので、仕方なく、バーチャルリアリティで行い、そして、バーチャルリアリティで行ったことをリアルリアリティに還元していくというわけです。

    でも、リアルリアリティをバーチャルリアリティに入れてやらないと、そもそもシミュレーション実験をする環境が作れません。そこで私は、シーンを簡単かつ手早く3次元化する、レーザーによる装置の開発も行いました。レーザーをぐるぐる回転しながら、上下にも動くミラーで反射させてシーンをスキャンします。そして、レーザーがその中にある物体の表面にあたって、跳ね返ってくる時間を計り、距離を測ります。ミラーは水平方向に360度、垂直方向には60度くらいレーザーの方向を変えられるので、自分の周り全ての距離をパノラマ的に大画面の3次元データとして測ることが可能となっています。1回のスキャンで400万点以上をとります。いろいろなとこらからスキャンしたデータから、シーン全体の3次元モデルを作ることができるのです。そういうサービスをする会社も作りました。こういったセンサーをヘリコプターにのせて、地表や大きな建造物を空からスキャンして、そのモデルを高速に作ることにも成功しています。画像、ロボット、3次元といった分野はまだまだ面白いことができると思っています」

    シーンを簡単かつ手早く3次元化する、レーザーによる装置の開発に成功。レーザーを回転させながら、動くミラーで反射させてシーンをスキャン。レーザーがその中にある物体の表面にあたって、跳ね返ってくる時間を計り、距離を計測する。同センサーをヘリコプターに搭載し、地表や大きな建造物を空からスキャンしてそのモデルを作ることにも成功

    動画
    wmv形式 530KB 14秒

    興味深いお話の数々、本当にどうもありがとうございました! 今後の金出教授のご活躍、楽しみにしています。ではまた次回です。

    カーネギーメロン大学教授で産業技術総合研究所 臨海副都心センター デジタルヒューマン研究センター センター長の金出武雄さん

    (インタビュアー=山田久美)

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