【コラム】
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| ID:99 |
| 氏名:金出武雄 |
| 年齢:59歳 |
| 職業:カーネギーメロン大学教授/産業技術総合研究所 臨海副都心センター デジタルヒューマン研究センター センター長 |
| 場所:銀座 |
| 携帯電話:au 三洋電機製GLOBAL PASSPORT対応端末 |
| 1カ月の携帯電話使用料金:-円 |
ところで、将来、コンピュータが人間の頭脳を超えるということはありえるのでしょうか。「私は、そうなることは明白だと思います。よく、SF映画などでロボットが暴走するシーンなどがありますが、そういったこともありうるでしょう。人間だって、暴走する人、優しい人など、色々な人がいるのと一緒で、ロボットにも色々な性格のものが出てきて不思議はありません」
また、例えば人の皮膚でロボットを覆うことによって、人間とロボットとの区別がつかなくなるといったことも起こりうるのでしょうか。「それをしたいかどうかという問題であって、できないという理由はないと思いますね。一部の日本のジャーナリズムでは、『欧米では宗教上の理由でヒューマノイドロボットを作ることに消極的だ』などと言いますが、これはジャーナリストの作り話だと思いますよ。
確かに、日本の場合、人の行動を宗教が律しているという面はほとんどなく、そういう意味で特殊なのに対し、欧米では、政治に対する影響を含め、日常生活の中に宗教が入り込んでいるという点があります。しかし、どこの国だろうと、どういった宗教を信じていようが、必ず、反対する人、賛成する人、どちらもいるんです。ヒューマノイドロボットが本当に人間のようになったときはともかく、今のところ、ヒューマノイドロボットと宗教はあまり関係ないのではないでしょうか。
現在のところは、人間とロボットの区別がつかなくなるとか、まだまだ、そんなことを言っていられる段階ではありません。ただ、あと30年も経てば、コンピュータの生の計算能力と人間のそれが近づいている可能性が十分ありますから、そういったことを真剣に考える人は出てくるでしょう。
ヒューマノイドロボットの研究開発は日本が明らかに進んでいますし、急速に進化していますね。でも、人間の動きの速さにはまだまだ到底追いつけません。人間は10秒間に100mの速さで走れますが、今の2足歩行ロボットは1秒間に1mいくかいかないかですからね。そういう意味では、本当に『まだまだ』ですね。アメリカでもCMU(カーネギーメロン大学)などでは、ヒューマノイドロボットの研究に弾みがつきつつありますよ。歩行といった動作だけでなく、計算機視覚、人工知能やヒューマンコンピュータインタフェース技術を使った賢いヒューマノイドロボットの研究です。これからが楽しみです。
私がセンター長をしている産業技術総合研究所 臨海副都心センター デジタルヒューマン研究センターでもヒューマノイドロボットの研究開発を行っています。ここでのヒューマノイドロボットの研究は、『人との対比』という点に特徴があります。ヒューマノイドロボットに、人と同じようなことをさせたときにどう違うのか、そこから何を学んで、よりよいものを作れるかどうかといったことを研究しています。
というのも、今まで私がやってきた自律ロボットの研究を通してよくわかったことは、私たちがいかに人間というものの働きをわかっていないかということなんです。われわれ工学者は、いろいろな機構やシステムをシミュレートします。ところが、人間だけはなかなかシミュレートできないんです。だから、われわれのセンターで、人間をもっと研究し、その機能を計算機モデル化しようというわけです。
つまり、計算機で人間全体、つまり、体の働きから、動き、考え方までをシミュレーションしようとしているのです。人間だって物質でできているのですから、できないわけはないと考えています。簡単にできるとは思っていませんよ。しかし、人間だけはできないという考え方はおかしいと思いますね。医学的にも生物学的にもわかっていないことはまだまだたくさんあるので、一方でヒューマノイドロボットを開発しながら、人間を研究し、解析していきたいと思っています。
ただ、そういった研究は必ずしも分子、遺伝子、細胞のレベルで説明できるものでなければならないというわけではないと思っています。人間の構造や行動などといった高いレベルの現象は、それに適切な表現方法や思考レベルがあるはずです。
簡単な例で言うと、空気には圧力という概念があります。圧力とは、空気や気体の行動の非常にグロスな現象論的表現方法ですね。それを使うことによって、気体に関する色々な現象を表現したり、解析したりすることができます。気体が他の物体にどんな力を与えるか、膨らむかといったことです。また、よくよく圧力を研究してみると、そのもとは空気の中の分子が動くことによって構成されている、だから温度が上昇すれば、分子の動きが活発になって圧力が上がるといったことがわかってきました。しかし、そういう熱力学がわかったからといって、圧力というグロスだけれども便利な概念が不要になったわけではないのです。タイヤを最適な状態に保つには、"タイヤの中の分子がこういう状態になっているのが良い"といったことを言わずに、圧力計を使って最適な圧力の数値を提示することの方が手ごろでかつ正確な表現方法です。つまり、人間は、圧力というそれ以下では詳細すぎて不便、それ以上ではグロス過ぎてダメという、ちょうど良い概念を見つけたのです。
人間も同様で、細胞のひとつひとつやレベルではなく、もう少しグロスだけれど十分役に立つレベルでの表現方法 - それは結局は機能、Functionでしょうが - があっても不思議ではないというわけです。いずれはそれが分子レベルの表現に帰着されるでしょう。
人工知能も同じです。人間と同じと思われる仕組みで知能を実現する、それとは違う仕組みで人間と同じようにあるいはそれ以上に振舞えるようにするなど、同時に色々な方向性があり、どれも有効だと考えています。現象論的にきちんと説明できれば、今のところ、どういった方向でも良いのではないかというのが私のスタンスです」
(インタビュアー=山田久美)
*次回に続きます。
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