【コラム】

ストリートインタビュー

173 初代日本語ワープロを開発、今もワープロを使う大学院教授(6)

    山田久美  [2005/03/29]
    ID:98
    氏名:森健一
    年齢:66歳
    職業:東芝テック相談役 兼 東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科(MOT)教授 兼 科学技術振興機構研究主監
    場所:飯田橋
    携帯電話:NTTドコモ「N504i」
    1カ月の携帯電話使用料金:数千円

    ところで、「2003年度本田賞」受賞、おめでとうございます。ちなみに本田賞とはホンダの財団法人である本田財団が1980年に設立した賞で、効率と利益のみを追求する従来の技術ではなく、人間活動を取り巻く環境全体の調和を図った新しい技術概念「エコ・テクノロジー」、つまり、エコロジーとテクノロジーの調和を目指すという観点から、国籍を問わず、顕著な業績を上げた個人やグループに年に1度贈呈するというものです。

    それに対する森先生の本田賞受賞理由は、森先生のリーダーシップの下で開発された「日本語ワードプロセッサ」が工学的、情報科学的な側面はもとより、言語学、日本語学など幅広い分野にわたる総合的な研究・開発が不可欠なものであり、それを見事に達成したことに対する評価からくるもの。実際、現在の日本文化に対する影響力は計り知れないものがあり、また、開発された仮名漢字変換の方式は中国その他の国々にも採用され、国際的な技術として貢献されているとのことです。

    「私が東芝にいた約7年前、中国の大連市にTV工場を作ったのですが、その際、大連市の方々には非常にお世話になりました。そのため、ずっと大連市にはお礼をしたいと思っていました。そこで、大連理工大学への訪問をお願いして、そこで言語処理の研究を行っている先生に会わせてもらったのです。その先生は、"日本語ワープロと同じ方法で、ピンイン漢字変換をやりたい"とおっしゃいました。日本では、小学校1年生で最初の文字としてかな文字を習いますが、中国では、日本のローマ字に相当するピンインというものを学ぶのです。そこで、ピンインで文章を入力すると中国語に自動変換される『ピンイン漢字変換ソフト』を試作したんです。それが、現在、中国で広く受け入れられているんですよ。

    ピンインの漢字自動変換を行おうと思ったそもそものきっかけは、今から約10年前、中国の新華通信の支局長が私のもとを尋ね、"どうして東芝のかな漢字変換方式が日本中に広まったのか、その理由を教えて下さい"と言ってきたことに始まります。

    当時、中国では中国語の入力方式に関する研究が盛んで、500くらいの研究チームがあったそうです。ところが、政府はすべてのチームに研究費の援助はできないということで、入力方式を基にグループを大きく4つに分けて、それぞれのチャンピオンを決めたのです。でも、実際に4通りの方式全てを普及させるわけにはいきません。そこで、東芝は"どうやってこのかな漢字変換方式を普及させたのか?"というわけです。

    私は、"政府も東芝も何もやっていません。国民が選んだのです"と答えました。それに対し、"中国語の入力方式を最適なものに統一し、普及させるためのよいアイデアはありませんか?"と聞かれたので、"中国の小学校では、日本のひらがなにあたるものとして何を習うのですか?"と訊き返したところ、"ピンインというものを習う"との回答でした。それを受けて、"では、ピンインから漢字に変換する方法はいかがですか?"と提案したのです。それがきっかけとなり、大連理工大学と共同で、ピンイン漢字変換ソフトをWindows上に試作したというわけなのです。

    でも、ソフトを完璧なものにするには辞書が必要です。文法は生きた言葉ですので、"ネイティブの中国人にしか、本当に中国人が望むワープロというものはつくれません。ですので、作り方は教えられますが、コアの部分は中国人の方々でお作りになって下さい"とお伝えしました。そのため、この件に関して、東芝が事業化することは無く、無償でのお手伝いということになりました。

    日本人は、昔、中国から無償で漢字を教えていただいたという歴史を持っています。そのことによって、ひらがなやカタカナを作ることができたわけです。大連にTV工場を作った際のお礼もさることながら、日本が中国から受けたご恩の一部をお返ししたいといった気持ちも、私の中では大きかったんですよ」

    では最後に、森先生がお使いのデジタル機器を紹介して下さい。「ケータイはNTTドコモ『N504i』です。会社から支給されたもので、普段は電源を切っています。不要なメールが届いたり、電話がじゃんじゃんかかってきたりするので、自分が通話したいとき以外は使っていません。秘書、会社の事務所、運転手、自宅など頻繁にかける電話番号だけを登録してあります。

    メールの送受信はパソコンで行います。使っているパソコンは、東芝の『Dynabook Satellite J11』です。光学式マウスは、プレゼンテーションや講演を行う際、離れたところから操作ができるように、ワイヤレスのものを使っています。メール以外の文章入力はすべてワープロで行っています。ワープロは『東芝RUPO JW98UP』です」

    ケータイはNTTドコモ「N504i」

    サンワサプライの「MA-WIH-DSRF イオミヌート」(ストーンシルバー)

    東芝RUPO「JW98UP」と「JW95B」

    「JW95B」の表面

    Dynabook Satellite J11

    貴重なお話をしていただき、本当にどうもありがとうございました! ではまた次回です。

    東芝テック相談役 兼 東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科(MOT)教授 兼 科学技術振興機構研究主監の森健一さん

    (インタビュアー=山田久美)

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