【コラム】

ストリートインタビュー

131 新しいコミュニケーションを作る道具を生み出すメディアアーチスト(1)

    山田久美  [2004/03/01]
    ID:089
    氏名:クワクボリョウタ
    年齢:32歳
    職業:デバイスアーチスト
    場所:六本木ヒルズ
    NTTドコモ「NM207」
    1カ月の携帯電話使用料金:5,500円前後

    今回はデバイスアーチストのクワクボリョウタさんです。

    クワクボさんは現在、2月7日~4月11日にかけて、六本木ヒルズの森美術館で開催されている「六本木クロッシング」にも作品を出展されている注目の若手アーチストさんで、昨年第7回を迎えた「文化庁メディア芸術祭」では、2003年アート部門で大賞を受賞されたとのこと。大賞受賞作品は、2月27日~3月7日、東京都写真美術館に展示されているので、読者の皆さんも是非足を運んでみて下さい。

    今回、クワクボさんにストリートインタビューに登場していただいたのは、実はインタビュアー山田の熱烈ラブコールによるものです。山田がクワクボさんに初めてお会いしたのは、昨年8月に東京・有明のパナソニックセンターで開催された「デジタルアートフェスティバル東京2003」の会場で、作品のコンセプトなどをお伺いしているうちに、すっかりクワクボさんの世界に魅了されてしまったのでした。

    そんなわけで、今回は、クワクボさんがこれまで手掛けられてきた電子部品などを使ったデジタルアート作品と、普段、愛用されているデジタル機器などについてお伺いしようと思っています。

    ではさっそくですが、最初に、現在、「六本木クロッシング」に出展されている作品についてお聞かせ下さい。「「分子構文」というプロジェクタを使ったソフトウェア作品です。暗い部屋の床に、最初、ひらがなだけが漂っています。そして、例えば、「あ」と「き」というひらがなが出会うことで、「あき」という単語になり、「秋」へと漢字変換されます。変換された単語はインターネットで検索され、その単語が含まれている文章が表示されます。さらに、文章は文節に分解されてバラバラになり、漢字はかなに変換され、ひとつひとつのひらがなに分解されます。そのひらがながまた別のひらがなと出会い、単語になるというプロセスが延々と繰り返されるという作品です」

    現在、六本木ヒルズの森美術館で開催されている「六本木クロッシング」ではクワクボさんの「分子構文」という作品を見ることができる。パソコン画面の内容を天井に設置されたプロジェクターを使って床に映写している


    天井のプロジェクター

    どういう発想に基づいて生まれた作品なんですか?「インターネットにはさまざまな興味を持った人たちがアクセスしていますが、何かを検索したり、ネットサーフィンをしたりする場合、結局、自分の趣味や嗜好によって選んでしまうので、自分の興味のない世界や知らない世界を覗くことって、意外とないのではないかと思っているんです。そこで、今までまったく関心を持っていなかったようなものを見せられたら面白いなと思ったのと、この展覧会場は小さい子供からお年寄りまで幅広い客層が来るところなので、世代によって見え方が違うようなものが出せたら面白いなと思って作りました。以前、「デジタルアートフェスティバル東京2003」に出展したような、体験型のインタラクティブ性のある作品って、年配の方は中々やってくださらないんですよね。その代わり、文書を読むことが比較的お好きな世代で、例えば、Microsoft OfficeのWordを初めて使う場合なども、実際に使ってみる前に、まずマニュアルを読むことから始めるという発想を持っています。一方、文字は子供も共有できるもので、漢字は難しくとも、ひらがなには興味を示したりします。また、文字自体に関しても、本などに書かれているような活字を読むのが好きな人もいれば、モーショングラフィックスのように動いている文字に興味を持つ人もいます。このように、文字と言っても幅広いので、何か文字を使って、世代によってそれぞれ見え方が違うような作品を作れたら良いなと思ったんです」

    クワクボさんらしい奥深い作品ですね。ところで、クワクボさんは"デバイスアーチスト"という珍しい肩書きですが、何故、このような肩書きにしようと思われたのでしょうか。「最初に名刺を作った時に、いきなり"アーチスト"と名乗るのはおこがましいと思ったからです(笑)。かといって、"エンジニア"と名乗るのもおこがましいですし、考えた末、名乗ってもおこがましくないようなオリジナルな肩書きにしようということで、デバイスアーチストになりました。また、自分の作品を作るだけでなく、他の方のサポートもやりますよという意味合いも込められています。でも、気付くと、自分が作ってきたものの多くがデバイスだったので、今はフィットしていると思っています。本来なら、メディアアーチストという方が一般的にはわかりやすいのかもしれませんが、通常のメディアアーチストの場合、その多くが、映像がからんだデジタル作品を作る方を指しています。一方、僕の場合、メディアを道具として何かを作るのではなく、メディア自体を作りたいという気持ちがありまして、それを強調していきたいとも思っています」

    コミュニケーションツールを作りたいということでしょうか?「僕の作品作りに対する考え方がどう変わっていったかを話しますと、最初の頃は、現在、発表しているようなインタラクティブな作品は、実は嫌いだったんです。学生時代は、人がただ見るための作品を作っていたんです。美術作品というのは、鑑賞する相手が読み取るべきものだと思っていたんですよ。でも、自分にとっても美術というのは難しすぎて、作家が込めた作品の意図などを読み取るのは容易なことではありません。そこで、作品から自動的に語りかけてくるようなものがあると良いなと思い始めたんです。そのため、デジタルを利用して、鑑賞する人に向かって何か動作する作品を作り始めたんです。さらに、鑑賞する人に何か操作をさせたり、遊んでもらったりする作品を作るようになっていきました。そのうちに、作品が人に働きかけるというよりも、道具そのものに変化していきました。例えば、電話自体は話すことが目的です。でも、電話があることによって、遠くの人と話すというコミュニケーションが生まれます。そういった新しいコミュニケーションを作る道具というものに、段々興味の対象が移っていったんです」

    (インタビュアー=山田久美 k-yamada@pc.mycom.co.jp)

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