前回は、「やみくもに電話をかけ、商品を売り込む」という従来型の営業方法では、営業活動における"最も重要な信頼関係の構築"に時間を割くことができず、見込み顧客の獲得・育成に多くの時間を使ってしまうため、とても非効率になってしまっているという現状をお伝えしました。

では、このような無駄の多い営業方法から脱却するために、企業は何を取り入れていくべきでしょうか。その答えは、「見込み顧客に見つけてもらう仕組みをつくること」だと考えています。

具体的には、まず、ユーザーに自社のホームページや企業ブログなどへ訪問してもらうため、顧客にとって有益なコンテンツを作成し、検索エンジンでのSEO対策やSNSを活用した情報発信を行うことで、資料請求やサービスの問い合わせ(リード)を獲得することを目指していきます。これにより、企業は、見込み顧客の獲得に営業リソースを割くことなく、ニーズの発生しているユーザー(顧客)に対して"のみ"営業活動を行うことができるようになるというわけです。

弊社では、この手法において最も重要なことを、「顧客の興味・関心に合わせたコンテンツを作成・発信し続けること」であると考えています。なぜなら、ユーザーの求めるコンテンツを発信し続けてこそ、ターゲットとなるユーザーの呼び込みと、継続的なコミュニケーションが可能になるからです。

また、ここで重ねて強調しておきたいのは、コンテンツとは「売り手側(企業)が発信したい情報」ではなく、あくまでも「買い手側(顧客)が求めている情報」であるということです。

見込み顧客に見つけてもらう仕組みのつくり方

では、次に「見込み顧客に見つけてもらう仕組みをつくる」ための具体的な方法に移りましょう。

先ほど、この手法において最も重要なことを、「顧客の興味・関心に合わせたコンテンツを作成・発信し続けること」だとお話しました。では、その"コンテンツ"とは一体、どんな内容のものでしょうか。ここを明確にするためには、まず「ターゲット読者のペルソナを考える」必要があります。

1. ターゲット顧客の"ペルソナ"を考える

ペルソナとは、自社の顧客となりえるターゲットの年齢や性別、職種、役職といった要素をまとめたもので、理想的あるいは典型的な顧客像を指します。

ペルソナを作成することで、顧客に関しての理解が深まり、ターゲットの抱える課題やニーズを鮮明に想像することができ、ターゲットが「どんな情報を必要としているのか」や「どんなコンテンツを読みたいと思うのか」などを、ターゲットの立場から発想することが可能になります。

また、考えたペルソナを、マーケティング担当だけでなく営業担当や経営者と共有することで、同じ顧客像をイメージした上で議論や日々の活動が行えるため、判断の相違がなくなり、意志決定も早くなるというメリットもあります。

ペルソナを実際に考える際は、まず、「製造業」や「教育機関」といったターゲットの大まかなセグメントを決定します。その後、ユーザー調査やインタビューの実施、アクセス解析のデータや一般に公開されている調査結果の閲覧などにより、ターゲットに関する情報を収集します。ここでは、実際に顧客と接している自社の営業担当の意見も参考になるでしょう。

なお、法人向け(BtoB)商材は、その多くが、情報収集から比較検討、導入に至るまでのプロセスの間で、さまざまな部門・役職の人が関わってきます。業界などの大枠だけでなく、企業の部署等の細部も、それぞれに応じたぺルソナを考えられるとより良いでしょう。

2. ペルソナが求める情報を考える

続いて、作成したペルソナが求める情報は何かを考えます。このときに重要となるのが、そのペルソナが「どの検討段階にいるのか」を併せて考慮することです。なぜなら、ペルソナが求める情報は、検討段階によって異なってくるためです。

例えば、まだニーズが発生したばかりのターゲットに対し、具体的な自社製品の仕様や価格を見せても興味を持たれるでしょうか。むしろ、その製品やサービスの必要性や業界トレンドに関してのコンテンツを提供した方が、よりニーズが顕在化するでしょう。また、ニーズはあるもののまだ導入検討に至っていないターゲットに対しては、製品の導入事例に関するコンテンツを提供し、検討を促すこともできるかもしれません。

このように、ターゲットの段階に合わせてコンテンツを提供することで、より訴求率が高まるほか、ターゲットの検討段階を引き上げることも可能になります。「どのようなコンテンツにするか」といった判断は難しく、迷う場面も多いと思いますが、基本的には「誰に」「何を」提供し、「その後どうなって欲しいのか」を考えて進めていくとよいでしょう。

なお、コンテンツ作成時には同時に、「このコンテンツを探す際に、ターゲットが用いる検索ワードは何か」を同時に検討する必要があります。これについては、のちに詳しく説明します。

3. コンテンツを発信する

それではいよいよ、"見込み顧客に見つけてもらうため"に、コンテンツを発信していきましょう。

弊社では主な発信方法として、企業自ら管理・運営し、情報発信をするブログなどの「オウンドメディア」が最も一般的だと考えています。同時に、"よりターゲットの目につきやすくする"ための集客の手法、例えばSEO対策やFacebookやTwitterなどのSNSの活用などが有効でしょう。

生活者が情報収集をする際に最も活用するのは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンでしょう。そのため、検索エンジンでコンテンツを見つけてもらいやすいよう、「ターゲットが検索するだろうキーワード」でのSEO対策は重要なポイントになってきます。

また、SNSは、「いいね!」や「フォロー」といったかたちで、ユーザーとの継続的なコミュニケーションが可能となる唯一のツールだと言えます。加えて、「シェア」や「リツイート」によってコンテンツが拡散されることで、検索エンジンなどではリーチできない層にもアプローチすることができます。

このような3ステップを通じて、「見込み顧客に見つけてもらい、資料請求やサービスの問い合わせ(リード)を獲得すること」を目指します。営業部は、マーケティング部からこのリード情報を引き継ぐことで、見込み顧客の獲得に営業リソースを割くことなく、見込み顧客に対して"のみ"営業活動を行うことができるようになるというわけです。

見込み顧客データを収集しただけでは、必ずしも案件化するわけではない

ただ、このように見込み顧客に見つけてもらう仕組みを構築できたとしても、それによって得た顧客データ(リード)はすぐに案件化するとは限りません。案件化しなかったリードを放置せず、継続的なフォローを行っていくことが重要です。(海外のある調査では、フォローしなかったリードのうちの約8割が、2年以内に競合から製品・サービスを購入しているとの結果も出ているといいます。)

では、ここでいう「継続的なフォロー」とは、具体的にどのような施策なのでしょうか。次回、詳しく説明します。

執筆者紹介

株式会社イノベーション

「BtoBマーケティングを変革する」を使命に、年間900社以上の営業・マーケティング支援を行う。提供サービスとして、有望商談を発掘することを目的に、企業Webサイトにアクセスした企業名と個人名を判明し見込みリードを生み出す「リストファインダー」を提供する。そのほか、自社運営メディアとして、「ITトレンド」や「BIZトレンド」も展開。これらを通じて"法人営業の仕組み化と効率化"を実現し、BtoBマーケティングを変革することを目指す。