企業規模を問わず、ERPやSFAをはじめさまざまな業務アプリケーションが乱立する中で、システム間をつなぐインタフェースの増大と複雑化が大きな問題となっています。今回はアプリケーション間を疎結合化した上で有機的に統合する、次世代型ハブモデルについてご紹介します。

以下はアプリケーション統合におけるヘルスチェックリストです。

  • アプリケーション間の連携インタフェースが膨大なスパゲティ状態になっている
  • アプリケーション間の連携タイミングなどの運用設計が大変
  • 連携における障害発生時の原因特定と復旧が困難
  • 開発運用が、特定の個人や外部のベンダー任せでブラックボックスになっている
  • 複雑なシステム連携が足かせになって、柔軟かつ迅速に変化対応できない

規模の差こそあれ、このようなお悩みはどの企業も抱えているのではないかと思います。これは、従来型のファイル連携を主としたP2P(ピア・ツー・ピア)型の密結合モデルに起因しています。

ある製造業のお客様では、グループ内の400以上のアプリケーションを相互に結ぶ連携インタフェースが複雑化・煩雑化の一途をたどっていました。ひとつのアプリケーションが多数のアプリケーションと個別のファイル連携で密結合されていて、全体で4000本以上ものインタフェースが複雑に入り組み、どのアプリケーションがどのアプリケーションとどのようにデータをやりとりしているかを可視化することや、開発の統制を取ることが困難な状況になっていました。このような課題から脱却するための解決策が、ハブ&スポーク型の疎結合モデルなのです。

図1:P2P型とハブ&スポーク型

ハブ&スポーク型の疎結合モデル

P2P型はデータ連携元のソースアプリケーションと連携先のターゲットアプリケーションを直接つなぐ密結合モデルであるのに対して、ハブ&スポーク型はアプリケーションの間にデータを一時的にためておくハブを用意し、そのハブを介してデータをやり取りするという疎結合モデルです。これによって、開発運用のさまざまな面でメリットを享受することができます。主要な3つのメリットは次のとおりです。

メリット1 インタフェース本数の削減

P2P型では各アプリケーション間を個別につなぐため、N:Mの連携が必要な一方、ハブ&スポークモデルでは各アプリケーションはハブにつなぐ形となるため、N:1の連携となります。アプリケーション間連携ではマスターデータをはじめ、同じデータをいくつもの複数アプリケーションに連携する必要がありますが、ハブ型ではその冗長性を排除し、P2P型よりも少ない本数でデータの需給を満たすことができます。これは、開発はもちろん運用保守を含む工数・コストの削減に寄与します。

メリット2 非同期連携による運用の自由度向上

P2P型の密結合では、データの送信元と送信先アプリケーション両者の都合を考慮して連携タイミングをスケジュールする必要があります。グローバルのタイムゾーンが異なる複数システム間での連携となると、このアプリケーション間の相互依存が制約となり、運用設計が非常に困難になってきます。ハブ型では、間にハブが介在することで、送信元は送れるときにハブに送り、送信先は取れるときにハブから取っていくという非同期型の連携が可能になります。

メリット3 運用保守効率の向上

P2P型の特にファイル連携では、連携用ソースデータのファイル生成、転送、変換、ターゲットへのロードなど、複数のジョブを開発し、それらをバッチスケジュールを組んで運用することになります。1本の連携処理に複数のオブジェクトを管理・運用する必要があるため、連携処理に問題が発生した場合、その原因特定と復旧に多くの時間と工数を費やすことになります。これに対してハブ型では、各アプリケーションにはコネクターで直結し、単一のプラットフォームでデータの集配信を一元管理、モニタリングできるため、原因の特定・復旧もワンストップで対応できるようになります。

図2:ハブ&スポーク型モデル導入の期待効果

そのほかにも、データガバナンスの強化など多くのメリットを生み出す理想的なハブ&スポーク型モデルですが、その実現のためには、ハブ自体の設計・開発、データの集配信処理とスケジューリング、実行のモニタリングなど、さまざまな機能が必要となり、自社で開発・運用・拡張していくのは至難の業です。ハブ&スポーク型の考え方自体は新しいものではないので、自社開発・運用している企業も少なくないですが、多くがハブの運用保守や連携先アプリケーションの変更・増加への対応に苦労しています。

そこで重要になるのが、ハブ&スポーク型のアプリケーション統合に必要な機能を網羅したパッケージ製品です。例えば、弊社で提供している「Informatica Data Integration Hub (DIH)」は、メタデータ管理機能によって、ハブを介するアプリケーション間のデータの流れをデータ項目レベルで可視化、来歴・影響分析も実現します。

昨今、多くのお客様が、ERPの導入やクラウドとのハイブリッド統合、M&A、次世代IT基盤への刷新などを契機にDIHを採用・導入されています。このようなテクノロジープラットフォームを賢く活用し、開発運用の苦労を抑えつつ、数々のメリットを享受してみてはいかがでしょうか。

図3:Informatica Data Integration Hub(DIH)概念図

著者プロフィール

久國 淳

2013年4月1日より、インフォマティカ・ジャパン セールスコンサルティング部 ソリューションアーキテクト エバンジェリストを務める。データプラットフォームに関するソリューション提案活動のほか、データマネジメントを中心とした講演やセミナーを通して啓蒙活動に従事。現職以前は、SAPジャパンにて総合商社、小売、サービス業向けのERP営業や、BI/EPM製品やSAP HANAのソリューションスペシャリストを経験。