いよいよ四次面接

ついに来た。ついにここまで来てしまいました。2度目の就活を始めてから数カ月、わたしはついに第一志望の会社の四次面接までやってきました。ちなみに前年度は筆記試験で落ちた会社です。ここに行ければいいな、と淡い期待を抱きつつ就留を決めたわけですが、まさか自分が本当に四次面接まで残るとは思わず、「わたしはこの一年で四次面接に残るにふさわしい人間に成長できたんだ!」という喜びと、「いやでも、就活は何次まで進んでも落ちたらまた振り出しに戻る非情なゲームなんだ…。ここで落ちたらまた他社のESを書くところから始めないといけないんだ…」という不安で、胸が張り裂けそうになりながら面接会場に向かいました。もちろん、道中元気の出るアイドルソングを聴きながら。

面接会場に着くと、まず待合室に通されました。待合室には既に同じ就活生が数人いて談笑していたのですが、その姿にまずビビってしまいました。だって皆、ものすごく感じが良くてものすごく頭が良さそうだったんですよ…。わたしは人見知りしてしまう方なので、初対面の人と和やかに話をするのがとても苦手なのですが(アイドルファンとだったら初対面でも何時間も話せるのに…)、そこにいた就活生たちは皆そんなわたしにも優しく話を振ってくれて、そりゃここまでの面接も受かるわ、というような雰囲気の人ばかりでした。これまでは選考を受けている人数が多すぎていまいちピンときていなかったのですが、ここにきて初めて、ライバルたちの姿が具体性を帯びて目の前に現れたような感じでした。

これまでとは全く違う雰囲気に飲まれ、しどろもどろに

さて、いよいよ面接です。面接は2回。どちらも面接官6~7人との個人面接で、面接官の方は年齢的に皆役員クラスのようでした。扉を開けた瞬間に、今までの面接とは違う重厚なオーラを感じました。最初に聞かれた志望動機も、これまでの面接ではESに書いたことに多少肉付けして言うと「なるほどね」とうなずかれて終わりだったのですが、今回は「でもそれって○○なんじゃないですか?」と矛盾点を突かれてしまい、いきなり一筋縄ではいかない雰囲気でした。

更にこれまでの面接と違う点と言えば、面接官の方がクスリともしなかったところでしょうか。これまでは割と早い段階で笑いが生まれていたのですが、今回の面接ではわたしが何を言っても面接官の方々は眉をぴくりとも動かさず、話している途中でだんだん焦りが出てきて、ついには言葉を噛んでしどろもどろになってしまいました。わたしの悪い癖なのですが、こういうときにすぐ立て直したり切り替えたりすることができなくて、1年目の就活でも何度もそれで失敗してきました。このときも、話をしながら1年目失敗したときのことを思い出し、どんどんしどろもどろになっていきました。

アイドルファン仲間に話すテンションで話して、落ち着きを取り戻す

そんなとき、一人の面接官の方からこんな質問をされました。

「僕はこのESに書いてあるSexy Zoneについて全く知らないんだけど、どういう人たちなの?」

たぶん、面接官の方は「このアイドルグループは何人グループで、どんな曲を出していて、どんなテレビ番組に出てるのか」というような意味で聞いたんだろうなと今になって思うのですが、このときはとにかく頭が混乱していて、自分でも何を話しているのか分からない状態で、勢いよくこんな風に答えてしまいました。

「センターの佐藤勝利くんが、御社から発行されている『○○』というマンガの△△というキャラクターに似てるんです!」

だから何? って感じなのですが、勝利くんが△△に似ている、という話はふだんからアイドルヲタク友達とよく話していたことでした。そこでつい、友達に話すようなテンションになってしまったのです。ですが、アイドルヲタテンションになったおかげでふだんの自分を思い出し、焦りも自然と解消されていき、それ以降の質問も落ち着いて対応することができるようになりました。四次面接前にOB訪問をした方から言われた「面接官は自分の娘にしたいと思えるような子を採るから、面接で自分の父親の話をしろ」という教えもふと思い出し、うまい具合に自分がいかに父親を尊敬しているかというような話もすることができました。面接が終わって部屋を出るとき、面接官の方が優しい表情で「お父さんによろしくね」と言ってくださって、かなり安心したことを覚えています。

しかし2回目の面接は、特記することもないくらい可もなく不可もなくな出来で、正直どんなことを聞かれたのかもあまり記憶に残っていません。一回目の面接のインパクトが強すぎたのかも知れません。待合室に戻ると、他の就活生たちも皆「片方はうまくいった気がするけどもう片方が不安」という話をしていたので、そういうものなんだと思います。それぞれ戦いが終わったわたしたちの間には妙な団結心が芽生えていて、会場を出たあとは皆で近くのファミレスにご飯を食べに行きました。皆かなり饒舌(じょうぜつ)で、色んな話をしたのですが、今思うとそれは面接が終わった開放感のせいではなく、その後に待ち構えている現実を直視したくなかったせいなのかも知れません。四次面接では例年、約半数が落とされるのです。こんなに人数が減ったのに、ここから更に半分になる。結果が来るまでの数日間、生きた心地がしませんでした。


<著者プロフィール>
ぽんず
都内の私立大学文学部に通い始めて5年目。一浪・一留・ジャニヲタという女として崖っぷちスペックの女子大生。中学生の時にデビューしたてのNEWSに一目惚れして以来、アイドルヲタ歴は約10年。現在は、ジャニーズ全般、また女子アイドルや若手俳優の現場にも年平均50~60回足を運ぶ。熱しやすく冷めやすく思い込みの激しい牡羊座のO型。

(イラスト:womi)