スイッチドキャパシタDC-DCコンバータの波形と変換効率

次の図はRaven3チップの電源の波形で、0.9Vは実際は0.73~0.83Vののこぎり波で、0.67V、0.5Vも多少低めののこぎり波の電圧になっている。図の下側は電源電圧を切り替えた時の波形で、切り替えに要する時間は20ns程度と非常に速いことが分かる。

Raven3の電源波形。上は4種の電圧のスイッチドキャパシタDC-DCコンバータであるので、鋸の歯のような波形になっている。下は電源電圧を切り替えた時の波形。電圧は20ns程度で切り替わっている

Raven3の消費電力と性能

次の図は電源電圧を変えて、ある処理を行う場合の消費エネルギーを測定したもので、縦軸は必要なエネルギー、横軸は処理時間である。破線は理想的なリニア降圧電源を使った場合、青線はDC-DCコンバータをバイパスして外部電源から直接、電圧を供給した場合で、3つの点がRaven3チップのDC-DCコンバータを使った場合の実測である。

3つの点の左端の菱形は0.9Vと一番電圧が高い場合で、処理時間は短いが、消費エネルギーは23nJと一番大きい。そして、0.67V、0.5Vと電源電圧を下げると処理時間は長くなるが、消費エネルギーは減少して行く。そして、DC-DCコンバータをバイパスした場合の消費エネルギーと比較して、スイッチドキャパシタDC-DCコンバータを使用した場合の消費エネルギーは、多少大きくなっており、変換効率で言うと、左側から順に80%、83%、86%となっている。

ある処理を行うのに必要なエネルギーと処理時間の関係。青線はDC-DCコンバータをバイパスした場合。破線は理想的なリニア降圧電源を使った場合で、3つの点がRaven3チップの測定。バイパスの青線と比較してDC-DCコンバータを使った場合の変換効率は80%~86%となっている

このチップは最高971MHzのクロックで動作し、倍精度の行列積の計算で、DC-DCコンバータを使わず最適の電圧を外部から供給した場合は最大34GFlops/W、スイッチドキャパシタ方式のDC-DCコンバータを使った場合は、最大で26GFlops/Wの性能/電力値が得られている。

Raven3チップの外部電源とDC-DCコンバータを使う場合の動作周波数とGFlops/W性能(左)と遅延時間に対する消費電力(右)

まとめ

28nmプロセスで製造したRaven3プロセサは、0.45Vから1.0Vと広い範囲の電圧を20nsで切り替えられるスイッチドキャパシタ方式のDC-DCコンバータをCPUチップ上に実装し、80%を超える高い効率をもつDC-DCコンバータが作れることを実証した。また、Raven3チップは、コンバータ抜きでは34GFlops/W、コンバータ込みでは26GFlops/Wという非常に高い電力効率が得られた。これはRISC-Vコアがシンプルかつ強力で、オーバヘッドが小さいことが効いている。

Raven3プロセサは、0.45Vから1.0Vと広い範囲の電圧を供給できるスイッチドキャパシタ方式のDC-DCコンバータをCPUチップ上に実装し、80%を超える高い効率をもつDC-DCコンバータが作れることを実証した。また、コンバータ抜きでは34GFlops/W、コンバータ込みでは26GFlops/Wという非常に高い電力効率を実現した