このインタビューでは、人気の整理収納コンサルタント 本多さおりさんに聞いた「収納」「家事」に関することをまるっと紹介中。中編は、皆が知りたい「収納のルール」についてです。

『家事がしやすい部屋づくり』(マイナビ/2015年1月/1,250円+税)

収納で重要なこと

--「収納」を考える上で、一番大事なことはなんですか?

本多さん「『分類』です。なぜかというと、分類するということは、ルールができるということなんです。分類したモノをセットにして収納することで、定位置が明確になります。後から探しものをするときも、『このセットは棚の上段にある』という分類のルールに紐付いて見つけられます。収納の前の段階に当たりますが、分類に苦手意識が多いお客さんも結構いらっしゃいますね」

--分類をする上での基準は?

本多さん「まずは『思い出の品』『文房具のストック』『シーズンオフの寝具』など、ざっくり一言でくくれるように分類していきます。さらに『使用頻度』も重要です。整理収納サービスでは、一度モノをだして分類するんですけど、その基準に『使用頻度』を入れています。全部出さないと難しいですけれど、ここで収納がうまくいくか決まるんです。よく使うのか、たまにしか使わないのか。使わなくはないけど、特定のシーズンしか使わないものなのか。例えば『おせちの重箱』も、食器だからといって、食器棚に入れておく必要はありません。お正月飾りと一緒に『シーズンもの』として、アクセスの良くない場所にしまっておいてもOK。その代わり、重箱を仕舞ったことを忘れないように、ラベルリングをしておくことが大事です」

モノは使用頻度で分け、ラベリングを(『家事がしやすい部屋づくり』より)

--他に気をつけることはありますか?

本多さん「使用頻度の高い低いと収納の良い悪い(取りやすい場所かどうか)のマッチングも重要ですね。例えば『メジャー』。工具と分類する人もいるし、文房具という人もいるでしょう。そこは正解はないので、その人の感覚、使用頻度で分類していいんです。私の場合、メジャーは仕事柄よく使うので、サッと取れる『文房具』の場所に分類しています。けれども、メジャーはあまり使わないな、という人は、使用頻度の低い『工具』の分類にしてしまっておく。このように、自分のルールで分類して、使うものは出しやすいところ、使わないものはちょっと出しにくいところにまとめておくんです」

--自分流の分類が重要ですね

本多さん「要は、『理由』がちゃんとある収納にできるかということなんです。パズルみたいな収納は、結果崩れてしまうので。『なぜそこに収納しているのか』という理由がないので、モノがどこにあるかわからなくなっちゃうんですよね。ですから、最初にしっかり分類してそこにしまう理由、ルールを作る。ここは『工具』『薬』『日用品ストック』という風に。そして分類をラベリングしておけば、次必要になった時に、それだけをすっと取り出せるんです。収納のお陰で、未来の自分が楽できるのです」

--分類しきれないモノはどうすればいいですか?

本多さん「そういう時はまた『迷うもの』『寝かせるもの』という分類ルールを作って、ラベリングをしておく。中身を詳しく明記しておけば、もっといいですね。これも『迷っているもの』はここというルールを作ることになるんです。重要なのは分類して、ラベリングをすることにつきますね」

分類の「理由」を考えることが重要(『家事がしやすい部屋づくり』より)

片付けが苦手な家族への対処法

--家族が片付けてくれない場合はどうしたらいいですか?

本多さん「お客さんにもよく聞かれますが、まずは自分が共有のスペースや自分のモノを、決まった分類ルールに基づいて片付けること。いつもキレイにしていて気持ちよさそうだなというところを見せびらかすんです(笑)。捨てるものは捨てて、いるものはルールを使って分類し、ラベリングして収納するんです。そして整うとこんなに過ごしやすくて気持ちが良いんだということを家族に知ってもらう。まずは家族全員が毎日必ず使う洗面所などを整えるのがいいかもしれませんね」

--心地よさを体験してもらう

本多さん「あとは無理強いをしないこと。片付けが苦手な家族には、ハードルをすごく低くするんです。例えば、我が家では玄関が入ってすぐのところに、夫がポケットの中身を出して置いておくための場所があります。こんな丸見えなところには置きたくないけど、夫は片付けが苦手なのでこの方法がベストなんです。見た目は悪いですけど、リビングに財布や携帯、タバコが散乱することはなくなります」

--玄関のすぐそばがポイントですか?

本多さん「その人の導線上で、簡単に置けちゃうところに設定することが重要なんですよね。人間が自然とやってしまう行動に収納を寄せていく。習性のままにできるようにハードルを下げるんです。『放り込めばOK』なレベルにする。例えば見た目が気になるから『この引き出しに入れてね』と家族に言って失敗している例がよくあります。片付けが苦手な人には、引き出しを開けて、モノを仕舞って引き出しを閉じるというのがおっくうなんですよ。だから、そのまま放り込める収納にする。ハードルを下げることが家族への思いやりですし、『リビングが散らからない』という望みも叶いますね」

人の導線上に収納ポイントを作る(『家事がしやすい部屋づくり』より)

【後編では、本多さんおすすめの収納グッズなどを紹介します。】


本多さおり
「暮らしを楽しむための整理収納術」で人気の整理収納コンサルタント。2010年より開始したブログ「片付けたくなる部屋づくり」では、コンサルタント実例の他、著者の住まいである2Kの団地部屋での収納テクニックを披露している。5冊目となる著書『家事がしやすい部屋づくり』(マイナビ/2015年1月/1,250円+税)では、「家事が楽になる」という視点に基づいた収納事例を紹介している。