町やテレビなどなどで見かける着ぐるみ。ここ数年は「ゆるきゃら」ブームもあって、全国各地にたくさんのキャラクターが生まれています。でも、見ているだけではなく、自分が中に入ってみませんか? 気軽に体験できる場所があるんです。あれやこれやで「やってられねーよっ」と思っている方も、着ぐるみで楽しく新しい自分が発見できますよ。

代表は「にこにこぷん」の「ポロリ」

新宿から京王線特急で約25分。アラサー編集T(女性)とアラフォー筆者(男性)が降りたのは、聖蹟桜ヶ丘駅。東京で長いこと働きながらも、ここに来るのはふたりとも初めて。で、さらに今回は初体験に挑戦することに……。

リス初体験中の編集T、女性アラサー

パンダ初体験中の筆者、男性アラフォー

うかがったのは「CHOKO.group(ちょこグループ)」。テレビやイベントに登場する着ぐるみの役者さんのグループで、1985年に創立されました。代表の大平長子(ちょうこ)さんは、NHKテレビ「おかあさんといっしょ」の「にこにこぷん」(1982~91年)で「ポロリ」役を務めていた方。「観てましたぁ」と感激する編集Tに、世代の差を感じた筆者、でしたが、大平さんをはじめとするグループの経歴を見れば、その活躍の幅は一目瞭然です。

テレビでは何といってもNHK。「おかあさんといっしょ」は1981年以来の出演で、「英語であそぼ」「BSどーもくんワールド」「BSななみDEどーも!」「高校講座」など、その番組は多数。そのほか、着ぐるみ劇団こぐま座のイベント、NHKのさまざまなイベント、マリオファクトリー、ポケモンフェスタ、しまじろうキャラバン、横浜開国博Y150たねまるショーなどなど、とっても多種多彩なのです。

衣装や着ぐるみもグループで作っている。着ぐるみだけではなく、リアルなオブジェなども制作している

大人の初体験はクセになりそう!?

で。何よりも、まずは着ぐるみの体験を、ということに。こちらでは、着ぐるみクラスの授業の体験と、着ぐるみに入って街に出て子どもたちと触れ合う「グリーティング」の体験ツアーがあり、誰でも気軽に参加することができます。

人生で初めて着ぐるみの中に入るわれわれふたり。編集Tはリス。筆者はパンダ。まずは体のかたちをつくるため、座布団をつめたような「あんこ」と呼ばれる胴体部分を身につけ、でっぷり体型に。その上から、衣装を着るわけですが、ひとりでは着れません。というか、ひと仕事です。

そうしてようやく頭の部分をかぶるのですが……、前が見えない。目の部分から外は見えるものの、両目でまっすぐ前を見ることができず、「はーい、こっち見てください」と言われてそのつもりでも、パンダの顔はちょっと横を向いていることになっている、らしい。それに、想像通り、暑い。やっぱり、着ぐるみって大変、と実感。

でも、しばらく鏡を見ながら動いていると、自分がかわいい姿で映っていることが、ちょっと快感になってくる。「着ぐるみの設定をしてみてください。年齢とか、性格とか、好きな遊びとか」。そう大平さんからアドバイス。「じゃあボク3歳、走ったり跳ねたりするのがたーいすき」。みたいな感じで動いてみる。リスさんは、「わたしはちょっと恥ずかしがりやさん。でもネ、食べるのはとっても好きなの、もぐもぐ」(以上、想像)みたいな動きを続けています。

ま、「いい大人が何を」と、なかなか伝わりにくいかもしれませんが……。ほんとうに、これはハマるはずです。何よりも普通の役者と違い、顔が出ていないので、別の自分に結構すんなりとなれてしまいます。レンタル(詳細はHP参照)もあるので、忘年会、新年会に登場したり、ご家庭でのサービス(?)にも最適、かも。なお、今年はアキバ系(?)顔の「流々戸蘭(るるど らん)」ちゃんも登場しました。

着ぐるみクラスの様子。参加している年齢層は幅広い。「ボランティアで発表したい」「プロになりたい」と目標はさまざま。MCクラスもある(写真提供:CHOKO.group)

ひつじ、ゴリラなどの動物系やオニなどのほか、女の子、おじいさんなど、キャラクターは数多い。着ぐるみは身長160~180cmくらいに対応できる(レンタルの際は要確認)

頭だけ被るとこんな感じに。ちょっとアブナイ雰囲気

「あんこ」の上に衣装を着る。体が頭のサイズと同じになることでかわいらしくなる

「いない、いない……、ばぁー」と遊ぶリスさん。さらに「もぐもぐ」。みんなが着ぐるみを着ていれば、職場の雰囲気も和やかになるのではと、ふと思ってしまう。絶対、ムリだけど……

大平さんの指導を受けると、だんだん動きがそれらしくなってきた

流々戸蘭。17歳の高校2年生。新聞部所属で、趣味はボランティア活動と詩をかくこと。しっかりもので自分の考えをはっきり言うが、たまにはおっちょこちょい、なのだとか

「グリーティング」は人生を変える!?

とにかく、たった数十分の体験でも着ぐるみの大変さはよーくわかります。これを着て踊ったり演技したりって……。「踊った後のお芝居で、息があがっているのに肩を動かせないのが大変ですね。でも実は、動きが決まっている舞台の仕事より、グリーティングの方が難しいんです」。子どもたちは着ぐるみに飛びついてくるし、まわりにいる子どもは見えにくいと大平さんは話しました。

なるほど、ただでさえ前が見えずらいのに、体のまわりにいる子どもたちは余計に気づきにくいはず。勢いよく動いてしまうと、子どもを押し倒してしまうのです。さらに、グリーティングの難しさがあるとのこと。

「それは、子どもたちとのコミュニケーションなんです」。初めての人でも、子どもたちと握手までは普通にできるそうですが、問題はそのあと。「みんな何をしていいか、わからなくなってしまうんですよ。それからの時間を、子どもたちといかに楽しく過ごすか。それがグリーティングの一番難しいところであり、醍醐味でもあるんです。楽しくコミュニケーションが取れるようになると、人生観が変わるかもしれませんよ」。

今回は、スタジオだけでの体験でしたが、大平さんの話には納得。着ぐるみだけでも自分は変わるし、そこに笑顔で近づいてくる子どもたちと触れ合うことができれば、本当に別の世界が開けそうです。

もともと興味があった人はもちろん、そうでない人も、着ぐるみでコミュニケーションを取ることの難しさ、楽しさを体験してみてはいかが?