素数、光の3原則、関数、ピタゴラスの定理……。そんな言葉に自然と拒否反応を示した人に朗報(?)です。理数系の世界を楽しく知ることができる体感型ミュージアム「リスーピア」を、今回はご紹介。小中学生が理科や算数・数学に触れるための施設、ではありますが、家族連れで訪ねると親の方が熱中してしまうとのこと。実際、理数の世界とは、ずーっと前に縁を切った筆者も、思わず仕事を忘れて没頭しまいました。

パナソニックセンターは2002年、リスーピアは2006年にオープンした。写真提供:パナソニックセンター東京

子どもより大人がハマる展示の数々

「まずはとにかく体験してみましょう」。スタッフの方にすすめられて「クエストライブラリー」というブースへ。画面に理科と算数・数学のテーマがいろいろと出てきます。理科の分野では、エネルギー、環境、植物、動物、人体など、算数・数学では、ピタゴラスの定理、小町算、魔方陣などなど。

この中から、人気が高いという「清少納言知恵の板」をチョイス。正方形を7ピースに分割したものを、指定された形にはめ込むという図形のゲームです。初級の小舟にチャレンジしましたが……。「??」。最初から指が止まる。「子どもが遊ぶものだし、初級だし……」と言いつつ、頭ン中からまわり状態で、なんとか完成したときは思いっきり「ほっ」とした次第。これ、子どもが隣にいて「パパ、できないの?」なんて言われたら相当あせりそうです。でも、ひとつできるといろいろ試したくなります。実際、つきあいで来たお父さんやお母さんが、がっつりとハマっている姿はしばしば見られるそうです。

リスーピアの入口。マークの中には「?」と「!」マークが隠されている。ちなみに「リスー」は理数、「ピア」は広場の意味

清少納言知恵の板。三角と四角をシルエットにはめていく。シンプルだがなかなか深いゲーム

「リスーピア」があるのは江東区有明の「パナソニックセンター東京」の中。りんかい線の国際展示場駅か、ゆりかもめの有明駅が最寄の駅となります。ちなみに、このセンター内には、ビエラコーナーとかブルーレイシアター、ニンテンドーゲームフロント、エコロジーフロア、カフェなどもあるので、こちらもゆっくりと楽しみましょう。パナソニックの最新技術に触れられます。

センターの1階は「リスーピア」の「クエストフロア」。入場は無料です。「クエストライブラリー」のほか、理数のモデルを展示した「クエストギャラリー」、いろいろな発明家を知ることができる「光の知究儀」があり、理数関係の好奇心をくすぐります。見てさわって学ぶものばかりなので、とにかくおもしろいし、何より不思議。人生のあれやこれやにちょっぴり疲れている大人も、ピュアな子ども心に戻れるはずです。

目盛がなくてもマスの水を図る装置や、4つのコースにボールをセットしてゴールへのはやさを比べるサイクロイド曲線など、クエストフロアには興味深い展示がならぶ

「?」と「!」の連続で脳もからだもリフレッシュ

「リスーピア」の醍醐味といえる3階の「ディスカバリーフロア」は大人500円(高校生以下は無料)。入場前、一人ひとりに「ディスカバリースコープ」が手渡されます。これは携帯情報通信端末で、フロア内の体感型展示の横にある光のポールにかざすと、より詳しい解説や身近な例などが聞けるというもの。

さらに、このスコープの中にはそれぞれ「光のエージェント」がいて、──光の天使(?)というか、光るクリオネみたいなもの(??)──、展示を体験するたびに色や形が変化し成長していくのですが、子どもたちはその成長ぶりを競ったりするそう。そしてさらに、このスコープの中にセットされているIDカードは出口でもらうことができ、ホームページでIDとパスワードを入力すれば、展示のより踏み込んだ説明を見ることが可能。と、家に帰ってからも「リスーピア」の奥深い世界を楽しむことができるのです。

「ディスカバリーフロア」はよりディープな理数の世界となっています。「おすすめはこちらです」と案内されたのは、「素数ホッケー」。エアホッケーのようなゲームで、素数以外の数字を打ち返し点数を競うというもの。「では実際に対戦しましょう」。「えーと、素数って確か……」。「1とその数以外で割り切れない数ですね。だんだんと数字の桁が大きくなりますよ」。とゲーム開始。いや、たぶん桁の問題ではなく……。2、素数。5、も素数で7、も素数で、9、13、15、17、26などともうこのあたりからパニック。やみくもに打ち返し、試合終了。「……慣れれば、もっと得点が取れますよ」。スタッフの方が慰めてくれるも、泣きたい気分に。

でも、大きな図形ゲーム「ビッグタングラム」や手の動きで音の波長を合わせる「ウェーバーモナイザー」など、頭とからだを使った展示の数々は、不思議と発見の連続で、まさにエンタテインメント。「苦手」「わからない」と思っていた理数の魅力にどんどん引き寄せられていきます。

ディスカバリーフロアは、このディスカバリースコープを持って巡る。おもしろさが何倍にもふくらむ

フロアの中は独特の雰囲気が漂う理数の世界。何度でも訪ねたくなる空間だ

素数ホッケーは子どもたちの方が飲み込みが早いとか。親は必死になってしまうはず

光のポールにディスカバリースコープをかざすと、さらなる情報を見たり聞いたりすることができる

清少納言知恵の板と同じく、7つの図形を壁に映し出されたシルエットに合わせていく「ビッグタングラム」

3月に新しく登場した関数のゲーム「ファンクションシューター」。写真提供:パナソニックセンター東京

白い部屋の中で色つきのボールを選ぶゲームもある。明かりの色が変わっていくのでかなり難しい。その原理を教えてくれる展示がこれ。見え方の違いが一目瞭然だ

手前の機械を使い、光の3原色を利用して絵を描く「ライトキャンパス」

また「リスーピア」では、週末などに多彩なイベントを実施していて、子どもたちに大人気。参加は無料で事前予約制となっているので、詳細はホームページで確認を。

さて、家に帰りIDカードの番号を入力して、さっそく「素数」の復習をした筆者。そう。確かに慣れればできる、はず。リベンジしたいと思います。ちなみにカードは次回以降も利用可能。リピーターとなって理数的な成長(?)、目指しましょうか。