保育園見学で見るべきポイントは?

保育園の日常をつぶやいたツイッターが話題の男性保育士「てぃ先生」に保護者の疑問をぶつけ、保育士としての"本音"をお話しいただく本連載。保活が本格化し始めるなか、保育園見学を始めている人も多いのではないでしょうか。

今回は、見学の際にチェックしておきたいポイントについてインタビューしました。





保育園の実態が見えるポイントとは

――現在、保活中の方も多いと思いますが、保育園の"実力"はホームページやパンフレットだけではよく分からなかったりします。そこで、保育園見学の際に注目して見るべきところを教えてください

保護者向けと保育士向けで観点が違うのですが、保活中の方であれば、玄関周りがきれいかどうかは最初に目につくポイントです。玄関はその保育園の"顔"ですよね。でも、日中は子どもたちが散歩や遊びで何度も出入りしますから、汚れやすい場所でもあります。そこに気を配ってこまめに掃除できているかどうかは見てすぐに分かります。

保育室では、おもちゃの人形を見てほしいです。というのも、人形の扱い方は、保育園の子どもたちの扱いと同じだからです。きちんと並んで座らせているような園はいいですが、カゴのようなものに頭から無造作に突っ込んでいるところもある。そういう園は子どもたちの扱いもおそらく雑。

それに、そこに目が向けられないということは、保育士に余裕がないということ。直す暇もなければ、気づく気持ちの余裕もない。個人用に持ち物を保管するカゴが、きちんと整理されているかなども同様です。

あとは、職員たちの対応にも注目です。僕もこの仕事を始めてからいろんな保育園の見学に行っているのですが、挨拶もまともに返してくれない園があるんですね。そんなときに「子どものオムツを替えていたからできなかった」って言い訳をする人がいるんですが、オムツ介助をしていても少し目線をやるとか、声を出すことくらいはできるはず。保護者の前ですらプロとしてのまともな振る舞いができないのでは、普段の様子も伺い知れますよね。

職員たちの対応にも注目しよう

2歳児・5歳児クラスに園の姿勢が現れる

――保護者向けと保育士向けで観点が違うとおっしゃいましたが、保育士さん向けにはどうでしょうか?

保育士なら、2つのクラスを見学するといいです。その2つというのは、2歳児と5歳児クラスです。

5歳児クラスは、言うなれば園の保育の集大成。子どもたちが0歳から5歳まで通ってきた成果が見えるクラスです。そのクラスの子どもたちが心配な感じだったら、園の実力もその程度だと予想できます。例えば5歳にしては落ち着きがなかったり、まとまりがなかったり、先生の話も聞いていなかったり。さらには、遊びが全然楽しそうではなく、幼稚だったりとか……。

また、2歳児も園の姿勢が顕著に出やすいクラスです。世間の認識としては、3、4、5歳は幼児クラス、2歳児は0、1、2の乳児のくくりにあると思われているかもしれません。でも2歳って意外としっかりしている。

子どもがいない人や初めての子どもを育てている人はまだ赤ちゃんだと思っているかもしれませんが、2歳を育てた経験がある人なら、もうすっかり"子ども"という感じがしませんか? それに、2歳から3歳の成長度合いってとても大きいんです。それなのに、0、1歳に近い赤ちゃん扱いをされてこの1年を過ごしては、せっかくのポテンシャルが台無しになってしまいます。

――赤ちゃん扱いしているかどうかはどこで分かりますか?

その園が2歳児をどう扱っているかは、保育室の環境を見れば分かると思います。乳児扱いをしている園では、過度に安全に配慮してテーブルの角を大げさにカバーしてあったり、赤ちゃんが使うようなおもちゃしか置いていなかったりする。

そしてきっと、子どもが何かやりたいと言っても「いや、危ないですからやめまちょうねー」なんて言って止めてしまうんです。それでは、せっかくの伸びるチャンスを奪ってしまうことになります。

一方で、2歳児を2、3、4、5のくくりで保育している保育園では、あるいはお母さんたちから見たら「2歳なのにこんなおもちゃを与えて大丈夫?」「飲み込んでしまわないの?」などと不安に思うこともあるかもしれません。

2歳って少し小さめのブロックがあったとしても飲み込んだりしないものですが、初めて子どもを持ったお母さんは心配してしまう。そして、そのことを保育士が分かっていなかったり、分かっていながら保護者の求めに応じて必要以上に"安全"な環境にしてしまったりする保育園もあります。

まずは両親が子育ての方針を話し合うこと

――てぃ先生から見てお勧めの保育園はどんな保育園ですか?

保育園には大きく分けて2種類あります。子どものための保育園と大人のための保育園です。子どものための保育園は、お母さんや保育士にとってはハッキリ言って面倒くさいことばかり。泥んこ遊び一つとっても、子どもにはいいことだけれど、保育士は着替えさせるのが大変だし、お母さんたちも着替えを洗って用意するのは大変でしょう。一方で、大人のための保育園はそういうことを一切しない。保育士にもお父さんお母さんにも負担がない。その代わり子どもたちにもいいことがない。

要はお母さんたちにとって、どっちがいいかなんです。自分たちがいくら手間をかけてもいいから子どもたちにとっていいことをやってほしいという人もいるだろうし、仕事が忙しいから手間をかけることなく保育園に預けたいって人ももちろんいる。大半の親は、前者が子どもにとっていいだろうと思いながら後者に入れています。園舎がキレイだとか、おもちゃがそろっているとか、どうやらリトミックをやっているらしいとか、そういう表面上のことで選びがちです。

親としての方針をしっかり持とう

―親のほうもしっかりした知識と方針を持っていないと、納得のいく保育園選びはできませんね

そうですね。僕はよくこんな話をするんですけど、子どもができたら妊娠中から、こういう子にしたいよねって、お父さんお母さんでよく話しあってほしいですね。そうした共通の目標がないと、何か起きたときに場当たり的に対応するばかりで子育ての方針が常にブレブレになってしまう。

何も「東大に入れる」みたいな目標ではなく、「優しくて我慢強い子になってほしい」みたいなアバウトな感じでもいいんです。ぼんやりとでもこういう子にしたいという子ども像があれば、その子ども像に向かって目の前の選択ができる。保育園選びもそうです。けれど、その目標がないと「いまはこれ」「こんどはこっち」という具合に、常にそのときの自分たちに都合のいい選択を重ねてしまいます。

―耳の痛いようなお話ですが、これを読んでいるお母さんたちもとっくに妊娠期を過ぎているかも……

まだまだ間に合いますよ! 子育てに関して、よくお母さんたちは「あのときこうしていれば……」って後悔なさるけど、そう思ったらいまからそれをやってあげればいいんです。遅いってことは何もありません。こうしてあげたかったと思ったこと、ぜひ、きょうからしてあげてください。

※画像はイメージです

てぃ先生

都内の保育園に勤める保育士。子どもの面白くてかわいい言動などをつぶやくツイッター(@_HappyBoy)が話題となり、フォロワー数は43万人(2017年9月20日現在)を超える。「顧問保育士」の肩書きを持ち、講演や研修の講師、保育園のプロデュースなど保育の幅広い分野で活躍している。著書に『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』『ハンバーガグー!』(KKベストセラーズ)がある。漫画『てぃ先生』(KADOKAWA/メディアファクトリー)のアニメもアプリ上にて配信中。