一般的な学習塾や自宅学習用教材には馴染めない子供や、学習塾に通いづらい環境にある小中高生に向けてeラーニングソフト「すらら」を提供しているすららネットは、現在成長中の企業だ。少人数で多くのユーザーに対応し、新たな展開にも注力できる環境の構築を目指して採用されたのが、Google Appsだった。

丁寧なカリキュラムで学習を助ける「すらら」

すららネットは、自社開発した「すらら」という小中高生向けeラーニングソフトをメイン商材としている会社だ。主な取引先は私立中学や高校と、小中高生を対象とした塾だという。現在、600の塾と70の学校で採用されており、2万8000人が「すらら」を使って学習している。

小中高生向けeラーニングソフト「すらら」

ユニークなキャラクターたちが学習を助ける

「すらら」の大きな特徴は、飽きずに学習が進められるつくりだ。楽しいキャラクターをたくさん用意し、一つの単元が終わるごとにキャラクターが変化するような仕掛けを用意している。カリキュラム自体はすららネットが用意しているが、すららネットが直接生徒に教えることはない。直接販売を行った場合でも、必ず生徒にはコーチ役の大人がつくという。

すららネット 企画開発グループ システム開発 マネージャー 鈴木浩之氏

「学習塾の中には大学生のアルバイトが講師であるなど、教務品質の安定性に疑問が残るところもあります。また地域によっては学習塾に通うこと自体が難しい場合もあるでしょう。そうした生徒に向けてよい学習機会を提供することを目的として開発したシステムです」と語るのは、すららネット 企画開発グループ システム開発 マネージャーである鈴木浩之氏だ。

当初は上場企業のベンチャー支援部門で開発がはじめられたが、後に独立。本格的に事業を行うことになった2010年、新たなグループウェアが必要であると考えて導入したのが、Google Appsだった。

軽快に利用できるクラウド型システムを求めてGoogle Appsを採用

「以前の企業ではノーツを使っていましたが、十数人で使うにあたってもっとコストが低く使いやすいものがよいと考えていました。そのとき、知り合いの評価も高いということでGoogle Appsに興味を持ちました」と鈴木氏は語る。

「すらら」は比較的低学力な子供にとってよい教材だといわれている。それは教材を与えて勝手に学習させるのではなく、学習習慣をつけるためのサポートも先生がしっかり行うからだ。学習塾のなかには、全く教育とは関係のない分野で活躍していた人が新たに立ち上げたところも多い。教務は「すらら」に任せて自分はコーチングに専念できるため、営業職を経験した人などが活躍しているようだ。

「運営の手伝いなどもしているためスタッフが地方へ出張することも多いですし、外出先でも利用できるクラウドベースの製品ということは最初から考えていました。半年ほどかけて検討したのですが、最初に考えたGoogle Appsに決めてからは1カ月程で導入を完了させました」と鈴木氏。

プライベートでGmailを使っていたスタッフも多く、Google Appsへの抵抗感はほとんどなかったようだ。特にユーザーからの問い合わせなどもないという。

「ノーツよりもずっと運用は楽ですね。使っていればすぐにわかりますから、問い合わせへの対応も不要です。本業に注力できるのがとてもよいと思っています」と鈴木氏は語る。

情報共有やアンケート実施にも活用

現在すららネットでは、メールとスケジュールをメインとしながら、Googleドライブとドキュメントも活用している。Googleドライブは業務用必要となるデータを保存し、閲覧権限の設定を行ってそれぞれ必要なものを利用する形だ。

「Googleドキュメントは業務的なドキュメント作成にも活用していますが、Googleフォームを利用したアンケートも便利に使っています。塾を開業したい方に向けたセミナーをWeb会議で行っているのですが、その参加者に感想を聞くようなアンケートです」と鈴木氏。アンケート結果が自動的にスプレッドシートに集計され結果をすぐに共有できることなどがよいという。

他には、サテライトオフィスの提供するワークフローも利用中だ。「これはスタッフの中からこういうものが欲しいと言われて導入しました。紙の稟議書が回らなくなり、効率的に仕事ができるようになりましたね」と鈴木氏は満足感を語った。

本業に注力できる環境づくりと少数精鋭の事業にGoogle Appsは不可欠

すららネットには「すらら」を海外展開して行きたいという狙いがある。2015年5月からはスリランカでのサービス提供がスタートし、その後はインドネシアでのサービス展開も予定している。日本で作ったコンテンツを現地で翻訳しての利用だ。

「東日本大震災で被災した子どもを支援するNPOを通じて、満足な学習環境が得られない子どもたちに安価で使ってもらっているケースもあります。勉強したくてもできないという人が、世界にはたくさんいるはずです。そういうところに届くサービスにしたいですね」と鈴木氏。大きく事業を展開して行きたいと考えているすららネットにとって、本業に注力できる環境づくりは大切なことだ。

「Google Appsは誰でも使いやすいだけでなく、いつでもどこでも利用できるというメリットがあります。現在25名のスタッフがいますが、基本的な考え方として少数精鋭でやっていきたいというものがあります。そのため、時と場所を選ばずに利用できるGoogle Appsは必須なのです。急ぎの連絡をとりたいときには、プレゼンスを見て在籍状況を確認してからチャットで打ち合わせをしたりしていますよ」と鈴木氏はWeb環境さえあれば利用できるGoogle Appsの価値を語った。

事業の拡張に合わせて段階的な活用を目指す

比較的シンプルな使い方をしているすららネットだが、将来的にはいろいろな機能を活用して行きたいとしている。「まだ勉強不足で、使いこなせていません。ユーザーからも、もっといい機能がいろいろあるだろうと指摘されている状態です」と鈴木氏。

しかし、手早くシンプルな形で導入してから、企業の実情に合わせて変化させて行けるのもGoogle Appsの魅力だ。サテライトオフィスの提供する各種アドオンについても情報を集め、随時利用して行きたいとしている。

「特に低学力児に強いといわれてきたシステムですが、最近ではその丁寧な学習方法に注目されて進学校での導入なども増えてきました。事業の変化や拡張に合わせて、必要なものを入れて行けるのはよいですね。段階的にいろいろなことをやっていきたいと思っています」と、鈴木氏は今後の展望を語った。