札幌、小樽、函館、千歳、北見など、北海道の主要都市で展開している北海道ガス。グループ各社で異なるメール・スケジュール・掲示板システムを利用しており、共通利用できるものがなかった。この状態から共通のグループウェアを導入し、グループの総合力を高め、競争力のあるサービスが提供できる組織づくりを実現しようとしたのが、Google Apps導入につながるきっかけだった。

グループ共通の情報システム構築を目指す

北海道ガスは、札幌、小樽、函館、千歳、北見など、北海道の主要都市で展開しているガス事業者だ。1911年の設立以来、「安全・安心・安定供給」をベースに、都市ガス事業を中心として地域に根付いた付加価値の高いエネルギーサービスを提供し続けている。現在、北海道ガスグループはエネルギー関連事業を中心に全17社。

北海道ガス本社。右は、マスコットキャラクターの「てん太くん」。天然ガス一族の御曹子 てん太くんの年齢は6億2011歳

従来はグループ各社で業務コミュニケーションに必要なシステムを独自に管理していた。そのため、メール・スケジュール・掲示板といったシステムは各社で異なるものを利用しており、共通利用できるものがなかったわけだ。この状態からグループ共通のグループウェアを導入することで、グループの総合力を高め、競争力のあるサービスが提供できる組織づくりを実現しようとしたのが、Google Apps導入につながるきっかけだったという。

「総合エネルギーサービス事業」を実現するために不可欠な、グループ全体での仕事変革を促すためには、どのようなものが必要なのかを考えた時に、早い段階で決定したのはクラウド型サービスを選択するということだった。

「オンプレミスで運用していると、ハードトラブルやシステムトラブルに対応しなければなりません。この負担を軽減し、コストを低くすることが目標でした。またクラウド型サービスは情報系システムでは移行がしやすいという意識があったため、クラウド型にしようということは最初に決まっていました」と語るのは北海道ガス ICT推進部 ICTサービスグループの係長である稲垣 利陽氏だ。

コスト・アドオン・ユーザー満足度の高さで選択

クラウド型のグループウェアをいくつかならべて検討する中、Google Appsが選択された理由は、将来性と柔軟性の高さにあった。

「国産のグループウェアは旧来型のものとインタフェースは似ているのですが、新しさを感じられず、早い段階で候補から外しました。残ったのはOffice365とGoogle Appsで、両者は機能的にはほぼ同じであると感じましたが、コスト面と豊富なアドオンという魅力でGoogle Appsが勝っていました」と秋本氏は語る。

Office365とGoogle Appsの両方について、先行ユーザーの紹介を受けて実際の利用感をヒアリングしたところ、Google Appsユーザーの方が満足感が高い様子であったことも、選定に影響したようだ。

導入に際し支援ベンダーをグーグル社に問い合わせたところ、紹介されたのがサテライトオフィスだったという。偶然の出会いではあったが、実際に導入検討を行う中で対応力の高さやアドオンの豊富さが特に評価された。

Google Appsの導入を決定したのが2013年6月。その後、検証からユーザー教育までを含めた全てを終えて実際に全社での利用が開始されたのが2014年1月だった。約2000人のユーザーが利用する新システムは、ごくスムーズに導入されたという。

事前準備を重ねて満足度の高い導入を実現

検討段階で先行ユーザーに対して、既存システムで利用している機能をGoogle Appsで実現する方法や、それらを利用するための教育方法、導入後の問い合わせ対処方法などの聞き取りを十分に行った。そうした素地があったために導入は至って順調に行われたが、教育に関しては苦労もあった。

北海道ガス ICT推進部 ICTサービスグループ係長
稲垣 利陽氏|

「2000人が相手ですから、2週間の間に1日3回などの密なスケジュールで教育機会を設けました。また遠隔地の事業所に出向いての教育なども含めると合計で50回以上行ったことになります。マニュアルのベースをサテライトオフィスから提供してもらい、現場で理解されるよう工夫しました」と秋本氏は語る。

十分な準備を行ったおかげで、導入後の評判はよい。特にGoogleドライブを利用した情報共有や、掲示板を使ってのグループ内の行動確認といった機能がよく使われているという。グループポータルサイトに掲載されている内容が昼休みの話題にされていたり、スタッフ全員が集まりにくい環境でのミーティング代わりに情報共有機能が使われたりと、現場ではよく活用されている。

グループ従業員全てのアドレスが登録されているためメールのやりとりも容易になり、スケジュール調整や情報共有が楽になった、グループでのつながりが感じられるようになったという声が出るなど、当初目的は十分に達成されている。

よい面を評価し変化を恐れないことが成功の鍵

「現在、組織カレンダー、組織アドレス帳、社内掲示板、在籍状況確認、ブラウザ切替機能といった、サテライトオフィスのアドオンを利用しています。今後は安否確認機能なども利用していきたいですね」と稲垣氏が語るように、北海道ガスではGoogle Appsの機能だけでなく、サテライトオフィスの提供するアドオンもかなり使い込んでいる。

すでに導入後、要望の強かったモバイル対応も完了させた。しかも、社員の個人端末を利用できるBYODへの対応だ。「外出先で使いたいという要望が多かったので、4月にリリースしました。今後はGoogle+のようなSNS機能を社内でクローズドに利用できるようになったら、ぜひ活用したいですね」と機能拡張にも意欲的だ。

北海道ガス エネルギー営業部 都市エネルギーグループ主査(4/1付でICT推進部より異動)
秋本俊一氏

こうした満足度が高い導入が行えたのは、導入を担当する部門の意識が成功に向いていたことが大きな理由だと考えられる。詳細なカスタマイズを行ったオンプレミス型システムから、パブリッククラウド型システムへと移行する時には、特に従来できていたことができなくなる、インターフェースが変化するということをネガティブに捉えがちだが、そうした考え方を変える必要があると稲垣氏は指摘する。

「実際に見た目が変化したことで最初は問い合わせもありましたが、慣れれば問題ありませんでした。今まで使っていたものを劇的に変えることになりますが、変化を恐れずにやることが大事です。システム部門はよい面をアピールするべきでしょう。あくまでもツールなのですから、ツールの使い方そのものよりも、ツールを使って何を実現するかということが大切なはずです」と稲垣氏。

もちろん、Google Appsだけでは日本企業が求める機能を全てカバーすることはできないかもしれない。しかし、そうした部分をカバーするために導入支援企業が提供する各種アドオンが存在する。北海道ガスのように柔軟にそれらを取り入れ、活用することが導入成功の鍵といえそうだ。