新しい空間が次のビジネスチャンスとなる。昨今の「AR/VR/MR」ブームをそう捉える経営層は少なくない。調査企業であるIDGは2017年2月に発表したレポートで、AR/VR関連ハードウェアやソフトウェア、サービスを含めた市場規模が、2016年の61億ドルが2020年までに1,433億ドルと20倍以上まで成長すると予測している。

世間はAR/VR/MRが生み出す新たな空間で何を目指しているのか。それを知るには、各キーワードを理解しなければならない。まず我々は五感を通じて認識する物理空間(Physical Reality)に存在する。他方で人工的に作られた仮想空間が「VR(Virtual Reality: 仮想現実)」だ。

VRの一部を切り出して現実空間にあたかも対象が存在するのが「AR(Argument Reality: 拡張現実)」。そして、物理空間と仮想空間を融合させたのが「MR(Mixed Reality: 複合現実)」である。ただし、ARとMRは似て非なる存在だ。ARは空間座標を保持せず、情報はスマートフォンなどのディスプレイ上から認識するものだが、MRは空間情報を保持するため、物理空間の干渉が発生する。

Microsoftが定義するMRの概念

MRに対するアプローチは各社が率先して取り組んでいるものの、現時点で抜きん出ているのは「Microsoft HoloLens」を発売するMicrosoftだろう。CPUやOSを内蔵するHMD型のコンピューターを頭部に装着すると、正面のホログラフィックレンズを通じて、仮想的な世界が目の前に現れる。利用者の視線を常に追いかけ、ジェスチャーや音声を通じて対象物にアプローチ可能だ。

「Microsoft HoloLens」

既に国内の導入事例として、JAL(日本航空)や小柳建設の名前が並ぶ。JALは、整備士訓練生向けに「ボーイング787型用エンジン整備士訓練用ツール」、副操縦士を目指す運航乗務員訓練生向けに「ボーイング737-800型機運航乗務員訓練生用トレーニングツール」を開発。小柳建設はMicrosoftと連携し、BIM/CIMデータを活用した検査ソリューション「Holostruction」の開発を急ピッチで進めている。

小柳建設の「Holostruction」イメージ図

このようにMRデバイスを用いたビジネスソリューションは既に始まっている。新たなプランで業務拡大を目指す経営層は、現実空間と仮想空間の融合する世界に注目するべきだ。

阿久津良和(Cactus)