アンジャッシュ、アンタッチャブル、ドランクドラゴンなど。彼らに共通するのはお笑いプロダクション人力舎が運営する「スクールJCA」の卒業生であるということ。そして今回紹介するラバーガールも、そんなJCAの卒業生コンビ。得意のコントを抑揚のないボケとツッコミで淡々と進行し、飄々とした空気感を醸し出す期待の新星だ。『お笑いホープ大賞』の決勝にも進出した実力派の2人に、コンビ結成秘話や今の芸風に至るまでの葛藤、今後の抱負について訊いてみた。

ラバーガールの飛永翼(左)と大水洋一

――どういう経緯でお笑いの道に?

飛永翼(以下、飛永) : 「小さい頃からネタ番組が好きで、中学生の頃はよく『ボキャブラ天国』を観てました。友達とネタをコピーしたりして。高校生になるともうお笑いをやりたくてやりたくて、しょうがなかったですね。それで調べてみたら、好きな芸人さんがたくさん所属しているのが人力舎だったので、JCAに入学しました」

大水洋介(以下、大水) : 「僕もお笑いは子供の頃から好きで、最初は放送作家とかディレクターとかお笑いに関係する仕事をしたいと思っていたのですが、なる方法がよく分からなくて。それで学校の図書室で『ディレクターになるためには』みたいな本を読んでみたら、まず大学に行け、と。なんだか面倒くさいから、だったら自分で芸人になっちゃえばいいや、と思ったのが高校2年の時でしたね。吉本のNSCにも願書を出しましたが、JCAの方がオーディションの日が早くて、しかも受けに行ったらみんな合格。当時は、お金を払ってちゃんと自己紹介できれば、誰でも入学できるシステムだったみたいです(笑)」

――コンビを結成されたきっかけは?

飛永 : 「スクール時代、アンタッチャブルの柴田さんが講師で、ショートコントの授業があったんです。それで適当にコンビを組めと言われて、大水君とやってみたら感触が良かったんで、そのまま。同期が40人いる中で、お笑いのことが分かってて、こいつと組みたいと思える奴って5人いるかいないかぐらいなんですよね。それでフィーリングが合う人を探したら、大水君がいました」

――初めから今の芸風だったんですか?

飛永 : 「いや、最初は2人ともボケたりしてましたね。つっこむと見せかけてこっちもボケる、みたいにどんどん被せていって。でも僕らのネタは分かりにくかったみたいです。『オンエアバトル』に連続で落ちたりして、なぜ自分達が面白いと思っているものがウケないのかと、挫折を味わいました」

――転機は何だったのでしょう?

飛永 : 「悩んでいた頃、事務所の先輩、東京03の豊本さんがアドバイスをくれたんです。あまり無理をせず、もっとお前ら自身が言いそうなセリフをネタの中に入れていけば分かりやすいんじゃないかって」

大水 : 「20歳そこそこの人間がおじさんの役をやっても無理がある」 飛永 : 「大水君みたいな、ぬぼーっとした顔の人が女にモテる役をやっても説得力がないですし(笑)。とにかくテンションを下げたらテレビに出られるようになりました。まだまだ未熟だと思って無理してテンションを上げていましたが、普通にしてみたら、それが良かったみたいです」

大水 : 「自分達の年齢に合ったキャラクターじゃないとね」

飛永 : 「今ならアルバイトの役とか、会社員でもせいぜい新入社員とか。上司くらいならいけるか。年齢が上がるごとに役の幅が広がる感じです」

――ネタはどうやって作っているんですか?

飛永 : 「文章にはせず、2人で会って設定を考えます。ネタの中ではできるだけ嘘をつきたくないので、経験に基づいたりしています。例えばレンタルビデオ店で働いていたとき、朝礼で5大接客用語を言わされていて、それを元にネタを作ったり。バイト経験はネタに活きてますね」

大水 : 「僕は高いところが好きなので、ビルの窓拭きのバイトを5、6年やってました。でも一度、5階の高さから落ちたことがあって。何とか助かりましたけど、ぶら下がっていたロープの摩擦で首を火傷したり、落ちて足に打撲を負ったり。って、これはネタにはなりそうにないですけど」

飛永 : 「うちの事務所の良いところは、ネタにダメ出しされないところですね。本番前に3回もネタ見せをやらないといけない事務所もあるらしいですが、うちはそんなことはありません」

――ブレイク目指して、今後の目標を教えて下さい

飛永 : 「僕らはM-1グランプリにエントリーしないんですよ。漫才をやらないことはないですけど、自信がなくて(笑)。でも新しく始まるキング・オブ・コントは頑張りたい。お笑いホープ大賞で優勝しますと言いつつ1回戦負けしたことがあるので、優勝しますとは言いませんけど」

大水 : 「台本の上では面白くないネタでも、言い方とか演技の部分で面白くできればいいかな」

飛永 : 「この一発ギャグが求められる世の中に逆行して、完全に開き直ってるけどね(笑)。これからも無理はしないで、堅実に行きたい。将来が不安で、貯金しているような僕達ですから」

大水 : 「お酒を呑みにも行かないですしね。僕なんて普段、だいたい一人でカフェに行って、本を読んでます」

飛永 : 「それはブレイクしても変わらない?」

大水 : 「ちょっといい喫茶店に行くようになるくらいかな(笑)。本を読んでいるのは、書くことに興味があるから。8月から東京ウォーカーで連載も始まりますし、今後は文章を書くことを仕事にできれば」

飛永 : 「え、そうなの? 僕が引くくらい、野心があるね大水君(笑)」

ラバーガール プロフィール

飛永翼 1983年2月13日生まれ。静岡県出身。A型。ズレた視点で迫り来る大水のボケを冷静に指摘していく、つっこみ担当。趣味は電気屋めぐり。大水洋介1982年12月12日生まれ。青森県出身。O型。まったくの無表情で淡々と話を進めていく、ボケ担当。メジャーリーグと高校野球に目がない。
出演情報:『ことばおじさんのナットク日本語塾』(NHK教育)『SUPER KIDS ZONE Beポンキッキ』(BSフジ)、『完売劇場』(テレビ朝日)にレギュラー出演するほか、日本テレビ『エンタの神様』(日本テレビ系)にも不定期出演。9月2日、5日には人力舎のライブ『バカ爆走!』(ミニホール新宿Fu-)に出演する。また、ソロライブDVD『メキシカンキャッシュボーイ』(発売元:コンテンツリーグ)が9月24日に発売される。