業務効率の改善効果とコストメリットが導入の決め手

トップツアー 旅行営業本部 営業企画部 部長 脇坂克也氏

トップツアーでは2000年頃より、社内のグループウェアとしてLotus Notesを使用していた。その同社がGoogle Appsへのリプレースを行った経緯について、旅行営業本部 営業企画部 部長の脇坂克也氏は「理由は大きく2つあります。まずは、時期的にリース契約の更新やバージョンアップの必要性があったこと。そしてもう1つが、営業活動の生産性向上を図ることです」と語る。

通常、企業のシステム更新やリプレースには膨大な費用と手間を要する。しかし、外部環境によって業績が大きく左右される旅行業界では、この時期を見極めるのが非常に難しい。2001年のアメリカ同時多発テロ事件を皮切りにアフガニスタン紛争やイラク戦争が勃発したほか、紛争以外でもSARSウイルスや鳥インフルエンザ、新型インフルエンザなどの新型感染症の発症、リーマンショックなど経済環境の要因も加えると、ここ数年で世界的に厳しい環境要因が立て続けに発生。こうした環境下で、同社は今まで必要性を感じながらも、システム改革のタイミングを見送ってきたのである。

同社では契約更新に先立ち、さまざまな観点から次期システムの在り方を模索してきた。「単純にLotus Notesを4.6から最新版へバージョンアップするのか」、それとも「別のグループウェアを導入するのか」では、コストだけでなく日頃の業務効率も大きく変わってくる。そんな時、営業の生産性改善を議論していた社内プロジェクトから候補として挙げられたのがGoogle Appsだったという。

「Lotus Notesのバージョンが古いこともあり、今まではインターネット経由で社外からアクセスできませんでした。例えば、営業マンが添乗や営業に出かけている際、お客様からのメールのチェックはできませんでした。そのため、航空機やホテルなどの予約依頼をメールで送ったお客様も担当営業からの返答がないので、結局他社に依頼する形となり、機会損失はおろか信頼を大きく失墜しかねない状況がありました。しかし、Google Appsを使うことで、担当営業が外出先でメールや社内の必要な掲示板を確認して、お客様にその場で対応することが可能になりました」と、Google Appsのメリットを語る同氏。

顧客に対する迅速な回答は機会損失の低減につながるだけでなく、担当営業が移動する時間の削減、さらには新規顧客を開拓する時間も生む。もちろんLotus Notesのバージョンアップでも対応できるが、初期投資額や運用コスト、将来的な機能の拡張性および拡張費用などを比較した結果、Google Appsが選ばれたというわけだ。

「Lotus Notesのライセンス購入やサーバのリプレースなどを含めて同じユーザー数で比較した場合、Google Appsを導入すれば5年間のイニシャルコストとランニングコストで約3割も削減できます。このコストメリットは企業にとって大きいですね。そのほか、Salesforceの『Force.com』も候補に挙がりましたが、ランニングコストとGmailの利便性からGoogle Appsに決定しました」

現場の意見を生かした実用的な社内ポータル

こうして同社では、Google Appsへのリプレースに向けて2010年1月に社内プロジェクトを設立。アカウント整備やトレーニングを行うと同時に、掲示板などデータベースの移行作業を開始した。

「Lotus Notesを利用している企業では、データベースの数が1,000を超えるケースも多いようです。しかし当社は従来からメールや掲示板を中心に使っており、データベースの数も100前後でした。最新データを最優先に統廃合を行った結果、データベースの数は30から40程度に抑えられました」と語る同氏。

実際の移行作業は、アドバイザーとしてベンダーのSEが3ヵ月間駐在したが、あくまでも社内ユーザー主体で行われたという。例えば、Googleサイトを使った社内ポータル構築については、サイトマップに沿ってSEがフレーム部分だけを作成し、各部署の担当者が直接移行・編集作業を実施した。

あえてSEを増員しなかったのは、より現場の社員が使いやすく、完成度の高いポータルサイトに仕上げるためだ。単純に以前の社内ポータルを再現するのではなく、社員が持つ旅行業の知識やノウハウを、レイアウト変更など利便性の向上に生かしたかったのである。

同氏も「現場の社員が移行作業を行うにあたり、GoogleサイトはITに関する専門的な知識がなくても、ある程度のレクチャーだけで使えるようになるのがありがたかったです。やはり、ユーザー目線で作成したものは利便性が違います」と、そのメリットを語る。

なお、同社では国内旅行部、海外旅行部、総務部など各部署からプロジェクト参加者を選出し、そのメンバーにGoogleサイトのトレーニングを実施。質問に関しても常にSEが回答できるような体制を作って、プロジェクトの円滑化を図ったそうだ。さらに、プロジェクト自体を人事考課上の加点対象に含めるといった企業としての方針も、プロジェクトメンバーのモチベーションを向上・維持させるという観点から重要なポイントだろう。

今回は前編として、トップツアーがGoogle Appsを導入した経緯や移行作業を中心に紹介してきた。次回は後編として、現場の声や今後の展望などについて触れてみたいと思う。

トップツアーのポータルサイトの画面