経営統合を機に情報インフラも大幅改革

ユニヘアー 情報システム室 室長 廣瀬拓生氏

アデランスホールディングスが2009年6月から大規模な経営改革を実施したのは記憶に新しいだろう。2010年9月には男性と女性向けにオーダーメイドウィッグや育毛・増毛サービスを提供するアデランス、女性向けにレディメイドウィッグやポステ(つけ毛)などを提供するフォンテーヌという2つの子会社を合併し、社名をユニヘアーへと変更したのである。

この改革では経営統合だけでなく、メールや社内ポータルなどの情報インフラ関連も見直しが行われた。そこで大きな役割を果たしたのがGoogle Appsだ。

「アデランスホールディングスでは2009年7月より、経営者層限定でGoogle Apps を試験導入していました。これは経営環境が変わるに際し、スピーディな情報共有ができる組織作りを目指したためです」と語るのは、ユニヘアー 情報システム室 室長の廣瀬拓生氏だ。

アデランスホールディングス、アデランス、フォンテーヌの3社はそれぞれ独自にオンプレミス環境でメールサーバや社内ポータルを運用していた。しかし、経営統合を実施するにあたり、インフラから自社で新たに構築するとなると、どうしても膨大なコストと時間が必要になる。

また同氏は、当時のシステムにおける課題について、「3社における情報共有に加えて、"リモートアクセスの実現"、"ビジネスのスピードの向上"、"セキュリティの強化"がありました」と説明する。

こうしたニーズを満たすサービスを模索した結果、アデランスホールディングスはGoogle Appsに辿り着いた。Google Appsであればイニシャルおよび運用コストを抑えられるほか、導入にかかる時間を大幅に短縮することができる。

「現在、ノートPCやスマートフォンからGoogle Appsにリモートアクセスすることができますが、従来のシステムでは社内のネットワーク環境からしか接続できませんでした。従来のシステムでリモートアクセスを提供しようとすると、セキュリティ対策に新たな投資が必要など、実現が難しい状況でした。しかし、SaaSのGoogle Appsなら簡単かつ安全にリモートアクセスが可能なのです」と同氏。

こうした点から、アデランスホールディングスではまず試験運用として、経営者層と経営企画のメンバー向けにGoogle Apps のアカウントを25個用意。実際にメールやグループウェアなどを約1年間使い続け、その利便性や業務効率の向上を体感したという。

試験運用を通じて使い勝手に加え、コストやセキュリティ面なども含めて総合的に調査が行われた結果、Google Appsが最良の選択肢という判断が下され、経営統合後のユニヘアーも全社的にGoogleAppsで統一することになった。

自社構築と比べて圧倒的なスピード導入を実現

ユニヘアー 情報システム室 副長 中井康貴氏

Google Appsの全社導入にあたっては、情報収集を続けるなかで特に評判の良かったベイテックシステムズに依頼した。ユニヘアー 情報システム室 副長の中井康貴氏は「ベイテックシステムズはGoogle Appsを熟知しており、最適な利用方法を提案してもらいました。実際にここまで小回りのきく企業はありませんでしたし、何より当社が求めている機能について深い知識とノウハウを持っていたのが選定の理由です」と語る。

こうしてユニヘアーでは、800アカウントを一括購入。その後必要に応じて徐々に追加し、現在は全社で1,194アカウントを利用している。本社の全社員はもちろん、これには、今までメールを使っていなかった旧アデランスおよびフォンテーヌが有する約400店舗の営業拠点向けアカウントも含まれている。

アデランスホールディングス、アデランス、フォンテーヌの3社は今年5月に現在の拠点に集まり、9月からユニヘアーとしてスタートを切ったが、この短期間で情報インフラを整備できたのはGoogle Appsの迅速な導入スピードがあればこそ。自社構築では統合作業自体が大幅に長引いていただろう。確かに、Google Appsに移行した当初は操作方法などで若干戸惑う部分があったものの、1度慣れてしまえば特に問題は生じなかったという。

また同氏は、システム移行時に課題となるメールデータのコンバートについて、「情報システム部門の負荷が高いため、基本的に旧環境を一括してコンバートすることはやめました。旧環境のメールで必要なものはユーザー自身でGmailに転送してもらい、どうしてもコンバートする必要があるデータを持つユーザーだけ個別に対応しました。最初は驚きの声も上がりましたが、最終的にコンバートの依頼があったのは数人です」と語る。

ユニヘアーではメールだけでなく、社内ポータルも業務に有効活用している。この社内ポータルは、Googleサイトを利用し、会議室予約や掲示板、緊急通知、ドキュメント管理などの機能を持たせたものだ。同氏は「非常に利便性が高く、現在の業務で必須となっています」と満足そうな表情を浮かべた。

シングルサインオンをはじめアドオンも実装

Google Appsを導入する時に大きなポイントとなるのがセキュリティ対策だ。その対策として、ユニヘアーではGoogle Appsで実装可能なシングルサインオン機能を取り入れた。

「社内外からの自由なアクセスはビジネスを加速させる半面、やはりセキュリティ面に不安が残ります。そこで、しっかりとした管理下での運用を実現するべくシングルサインオンの導入を決めました」(中井氏)

現段階で環境は完成しており、アカウントの整理が終わり次第切り替えるという。そのほか、同社は企業の組織間で利用可能な「組織アドレス帳」などを実装する予定で、これからもGoogle Appsを最大限に活用し、業務の効率化を図っていくという。

最後に中井氏は「従来のシステムはデータセンターで運用しており、セキュリティを含む各種ソフトウェアライセンスやサーバのメンテナンス費用など膨大な運用コストが必要でした。しかし、Google Appsを導入すると人件費や運用コストを含めて初年度から効果が出始めました。既存システムのリプレースも含め、今後5年間で3割近くのコスト削減効果が見込めます」と、Google Apps導入における圧倒的なコストメリットを教えてくれた。