ハプニング続出!? 子どもたちが考えて作るクッキング!

前回に引き続き紹介するのは、食育に特化した学童「食楽スクール(ぐりぐら)」。手作りおやつや夕食を提供し、食にまつわる多彩なレッスンを開催。取材日のレッスンは子どもたちによるおやつ作りだった。

この日は同学童の名前の由来でもある絵本「ぐりとぐら」のパンケーキを作るのだという。材料は施設にあるものを利用し、レシピは宿題を早く終えた子どもたちがネットで調べて書き起こしていた。

クッキングスタート! まずは卵と黄身と白身をわけて…

クッキングは3つのチームにわかれることになったが、メンバーの割り振りに難航していた。和賀さんは「なんで決まらないのだと思う? 」と考えるよう促すが、決して勝手に決めることはしない。学年のバランスを考え、リーダー役を決めることも大切な学びのチャンスと考えているからだ。

なんとかチームが決まり、クッキングがスタートしても、和賀さんやスタッフは、先回りはしない。2年生に「1年生だけのグループは今どこまで進んでいる? 」と声をかけたり、火を使うときは近くで見ていたり、必要なサポートはするものの、基本的に手は出さない。

ハンドミキサーの扱いも慣れたもの

片付けも率先してやる子どもたち

途中で1つのチームが牛乳を派手にこぼしてしまうハプニングが発生した。「わー、ぬれた~! 」「材料がなくなっちゃうよ」と子どもたちは大騒ぎ。そんなときも和賀さんは「拭かなきゃダメ」というのではなく、「こぼれたままだと、どうなるかな? 」と問いかける。すると、ちゃんと床を拭きはじめる子どもが現れる。

「バタバタで、手を出したいことも多いのですが、上手に作ることがゴールではないので。失敗したときの解決方法も子どもたちに考えてほしいと思っています。失敗するのは悪くないし、逆に大きな失敗をすると記憶に残って、次は他の方法を探すようになりますよね」と和賀さんは朗らかに話す。

クッキング教室と違い、時間に追われることもない。一応「お迎えがくるまで」という時間制限はあるが、和賀さんたちは、それにもあまり縛られていない。実際、この日はハプニングが多くて予定が押してしまい、パンケーキ完成前にお迎えが来た子も何人かいた。そんなとき和賀さんが「なぜ、この時間までに終わらなかったんだろう? 」と聞くと、「チーム決めに時間がかかったから」など自分たちで自然に振り返りをする。お迎えに間に合わなかった子の分は残しておいて、次回に食べてもらったそうだ。

体系的な食体験の場を提供したい

このように同学童では、子どもたちの主体性をとても大切にしていることがよくわかる。野菜の収穫体験を企画するときも、子どもたちから農家さんに直接連絡してもらい、「今ならどういう野菜があるの? 」と聞いてもらう。そうすれば、食材の旬に対する意識もぐっと高まる。

ハーブや玉ねぎなどの野菜を育てている

「そもそも収穫体験はそのために専用の畑を用意していて、作られたエンターテインメントになりかねない。野菜が育つまでにどれだけの日数がかかり、収穫できる量が日ごとに異なることなども知っておいてほしい」と和賀さんは話す。

左が代表の和賀さん。右が調理師の五十嵐さん。ほかにインターンのボランティアスタッフが数名いる

同時に「"作っておいしい"とか、"やって楽しい"だけではなく、もっと体系的な食体験の場になってほしい」と力を込める。2016年度からは、自宅でも体験できる「こどもやさいけんてい」を始めるほか、食農の専門家がスタッフとして加わる予定。作りたい料理から育てる野菜を決めるなど、より目的やゴールを明確にした活動をしていきたいそうだ。

食にまつわる興味や関心を増やすだけでなく、自分で考える力やコミュニケーション力など、総合的な「人間力」を養うことに力を注ぐ同学童。おいしそうな香りに包まれ、家庭的な温かさに満ちあふれていた。