大半の人にとって、金は、株式などと違っては馴染みが薄いものではないだろうか。だが、そんな人にとっても、昨今の、株式、債券、通貨が不安定な中における「金ひとり勝ち」はまったく無視できない現象である。ゆえに、投資収益の向上を求めるのであれば、「金を知る必要性」はかなり大だ。それならば、金のことは金のエキスパートに訊くべし! 早速、金地金(現物)と金先物取引を扱っている「第一商品株式会社」(ジャスダック銘柄コード:8746)を訪問させていただいた。

だいたい金地金ってどこに行ったら買えるのかですら、わからないという人も多いかもしれないが、金地金は第一商品のような商品取引会社や地金商で買える。しかも、商品取引会社は地金商よりも、安く金地金を販売している。その理由は在庫管理や精錬にかかるというコストがかかっていないからだそうだ。

第一商品は、金ビジネスが主体で、金が収益の柱にもなっている。同社の金先物の取組高(未決済の玉の量)は、東工取の取組高10万枚の内の2-3割を占めている。商品先物取引自体が規制等の影響で縮小している中で、金先物に新規参入される顧客は減ってはいるが、同社の現物取引(金地金:原則1kg単位)は増加傾向にあるという。

金地金の販売実績は、年間で売りと買い合わせて約10トンを取り扱っていて、多いときだと月で約1トン。2002年から現在に至るまで、約47トン(現在価格で約1,700億円)を販売している。各社の金地金販売に関する公的データはないから、はっきりとしたことはわからないが、「たぶん日本で2番目に金地金を販売している会社だと思います」とおっしゃる、同社、企画部課長、渡辺誠一さんに、「金が注目されているワケ~実際どんな人たちが投資しているのか~中国の金投資の影響~金市場の予想~金投資に一歩踏み出すためには~第一商品のエッジの効いたサービスの活用」まで詳細にお伺いした内容を当シリーズで3編に分けてお届けする。金投資の一助にしていただければ幸いです。


――世界的に金が注目されているのはどうしてなのか、わかりやすく説明してください。

第一商品 企画部課長の渡辺誠一さん

現在の金価格の上昇は、2001年9月の米国同時多発テロで、米国を中心とした信用経済への不安が高まり、実物資産である金が注目されるようになったことに端を発しています。その後、07-10年にかけて、サブプライムローン問題、リーマンショック、ドバイショック、ギリシャショックなどで世界経済に対する信用不安が拡大したため、金価格の上昇は加速し、ドル建て金価格はこの10年間で4倍以上、円建て金価格も3倍以上も上昇しています。金価格上昇の背景を、以下の7点でわかりやすく説明しましょう:


1.ドル一極支配の終焉

サブプライムローン問題をきっかけとして米国発の世界的な金融危機発生でドルへの不安が拡大し、膨張した投資マネーはドルを初めとする通貨から独立した受け皿を求めた。

2.インフレの脅威

原油のみならず、穀物や非鉄金属などのいわゆる資源価格が上昇し、インフレの脅威が身近になってきた。ペーパー資産である株や債券、ひいては通貨でさえも資産を守ることが困難な時代になってきた。(現在はデフレでも金が買われている)

3.金市場の構造変化

金地金を証券化した金ETFの登場によって、年金基金を初めとする機関投資家の金投資が容易になった。金融不安を背景に、金ETF残高は史上最高水準を更新し続けている。

4.公的売却の大幅減少

90年代には金利が付かず、価格も低迷していたため資産ポートフォリオの観点から各国中央銀行は保有金の売却を進めてきたが、99年9月に売却量を制限するワシントン合意がなされた後は、金融危機の影響もあり、逆に購入する国が増えている。

5.「有事の金」は生きている

戦争や大インフレ時に価格上昇してきたが、冷戦終結後にはその役割もなくなったと見られていた。ところが、2001年9月の米同時テロ発生によって見直され、また金融危機等の経済有事発生の際も「無国籍通貨」としての役割から上昇している。

6.新興国の経済成長と中国の金需要

経済成長とともに外貨準備高が急増し、大半を占めるドル資産への不安から、その一部を金に換える分散投資の動きが広がっている。

7.ギリシャ発、欧州「ソブリン・リスク」の顕在化

ギリシャショックに端を発した国家の財務リスクへの備えとして、「無国籍通貨」である金が安全資産として買われている。日本円を除く主要国通貨建ての金価格が史上最高値を更新していることからも、この流れが大きいことがわかる。

この7つのポイントは、現在まででなく、今後も金が買われる理由にもなりますので、特に初心者の方はこれらの点に注意して、金市場を見られるようにするとよいでしょう。

――「第一商品」の金取引のお客様はどういう方が多いのですか? やはりお金持ちが多いんですか?

金地金は普通のサラリーマン、主婦、OLの方などが購入されています。金はお金持ちのものというわけではありませんし、遠い存在でもないのです(笑)金地金の顧客数は月間おおよそ400-500人でその内40-70代が約7割を占めていて、男女の比率は2:1くらいです。実際に、主婦の方が、買い物カゴを下げて「ちょっと金2kgほどくれる? 」と来社なさったこともありました(笑)お客様は私たちが感心するほど値段をよく見ていて、100円(1kgにすると10万円)値段が下落すると、問い合わせや買いが殺到します。そして上昇したときは値ざやを抜きに来て、金地金でも短期トレードする方も結構いらっしゃいます。

先物口座数は約4,000で年齢層も男女の割合も金地金とほぼ同程度です。短期で値ざやを稼ぐのであれば先物の方がその特長を活かせるかと思います。金の変動率が高いイメージを持っている方がいらっしゃいますが、株式や為替や債券やなどと比較しても決してそんなことはありません。また、金先物の最大レバレッジは約30倍ですが、お客様自身でレバレッジをコントロールし、例えば半分などにすれば、相場が逆の動きをしたとしても追加資金が発生しにくくなり、比較的長めの取引にも対応できます。もし、金地金の保管が面倒であれば、同じ数量をレバレッジ1倍(丸代金)で先物のポジションで持つ方法もあります。(貸金庫の保管料と先物の限月乗り換え手数料はほぼ同程度)

取材風景

(中編に続く)