原口 豊(はらぐち・ゆたか)
大手証券会社システム部に在籍後、1998年ベイテックシステムズ(現サテライトオフィス)を設立し、社長就任。2008年に、いち早くクラウドコンピューティングの可能性に注目し、GoogleApps導入サポートを開始。導入実績は、ガリバー、ミサワホーム、三井倉庫などの大手企業から、中堅・中小企業まで、1,200社以上。「組織&グループカレンダー for Google Apps」など、多数のテンプレートを無償提供するなど、Google Appsの普及に尽力。Google Enterprise Day 2011ではパートナーアワードを3年連続で受賞した。

Google Appsの魅力を引き出すスマートデバイス

Google Appsは「どこからでもアクセスできる」という、ビジネスにおけるアドバンテージを持っている。もちろん、ノートPCや携帯電話でもそのメリットを享受できるが、メリットを最大化してくれるのがスマートフォンやタブレットなどの各種スマートデバイスだ。

なかには、携帯電話と連携できるクラウド型グループウェアもある。しかし、スマートフォンは手軽に持ち歩けるサイズながら、携帯電話と比べてスマートな操作性、そして一画面で多くの情報を閲覧できるのがポイント。一方のタブレットは視認性の高さや文字入力の容易さに秀でており、大画面の特性を生かして顧客向けのプレゼンテーション時にも使うことができる。加えて、両者ともアプリと連携した多機能さを備えている。

こうしたスマートデバイスと言うとiPhoneやiPadを思い浮かべる人も多いだろうが、注目してもらいたいのがAndroid搭載の端末だ。AndroidはGoogleが開発元ということもあり、Google Appsと抜群の親和性を発揮するのは言うまでもない。さらにオープンソースであるため、ここ数年間で端末の普及台数が急激に加速。低価格から多機能なハイエンドまで、端末の選択肢が多いのも特筆すべき点と言える。

コストは意外に抑えられる可能性も

各種スマートデバイスを業務利用するにあたり、企業として気になる点がいくつもあるだろうが、その代表格が「コスト」だ。

企業が端末を支給するとなると、一定額の支出が発生する。しかし、Google Appsとスマートフォンの組み合わせで得られる業務効率化を考えれば、投資に対して十分な効果があると言える。最初から全社員に支給するのではなく、出張などの外出時や外出が多い営業担当者にのみ持たせるのも有効であり、また、携帯電話を支給している企業なら、契約更新時にスマートフォンへ移行するのも手だ。

さらに、電話会社が提供している法人向けサービスを使うことで意外に安く済んだり、場合によっては従来よりコストが下がったりする可能性も出てくる。今までバラバラだった企業の固定電話とスマートフォンのキャリアを統一し、定額や無料プランをうまく活用したり、内線にもスマートフォンを使用したりといったアイデアも効果的だ。

環境によっては「BYOD」も大きな助けに

もし企業の費用負担、特にイニシャルコストを最小限に抑えたいのであれば、個人所有のモバイル端末を業務に利用する「BYOD(Bring Your Own Device)」という考え方もある。

ジュニパーネットワークスが2012年5月に発表した調査「Trusted Mobility Index」によると、BYODを許可している企業は、調査対象の5ヵ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、中国)全体で56%と拡大している。日本の割合は33%と平均より少ないが、「BYOD導入を求める声は高まっている」という。

ただし、BYODの許可によって発生する新たな課題もある。まず、社用と私用でいかに通話料などの利用料金を切り分けるかだ。通話の頻度は部署や個人によって大きく変わるため、線引きが難しい部分だろう。

もう1つ気になるのが「セキュリティ」だ。Google Appsのセキュリティに関しては次回に詳しく説明するが、企業支給の端末ならアプリのインストールなどに制限がかけられるが、個人所有の端末となれば制限を設けるわけにはいかない。また、紛失や盗難などのトラブルが発生した場合、企業支給なら遠隔地から端末内の情報を消去する「リモートワイプ」が使えるが、個人所有ではそう簡単にいかない。

一方で、社員への適切な通話料支払い、そして明確なセキュリティポリシーの策定と周知徹底が行われていれば、企業にとってBYODは強い味方となってくれるのも事実。今後はよりよい選択をするべく、自社の環境を見極めることも大切と言えるだろう。