老朽化したシステムと相次ぐメール関連トラブル

タカミヤ システム推進室 室長 奥準氏

「自然を通して夢をお届けする」ことをモットーに、釣具・アウトドア用品の専門店チェーン「釣具のポイント」を全国に63店舗展開しているタカミヤ。同社はこれまで Linux+Sendmailによる自社運用のメールサーバを使ってきたが、ここにきてシステム関連の問題に直面していた。

というのも、利用開始から7年が経過した自社運用メールサーバが保守切れを迎えると同時に、配送遅延などレスポンスの低下が目立ち始めていたのだ。さらに、各端末でメールをPOPで受信する構成のため、クライアントPCのファイル破損を原因とするメッセージ消失が度々発生。その数は多い時で1ヵ月当たり10~15件まで達しており、復旧対応に追われていたそうだ。また、メールファイルが肥大化することでディスク容量が不足し、PCの動作が重くなるといった症状も引き起こしていたという。

システム推進室 室長の奥準氏は当時の状況を思い出しながら、Google Apps導入のきっかけについて、「まず、メール関連のトラブルから解放されたかったということがあります」と語る。

加えて、当時はメールサーバと別にSaaS型のウイルスメール対策、そして自社設置アプライアンス型のスパムメール対策を運用。ライセンス費用やアカウント登録などの運用工数もコスト面でネックとなっていたそうだ。

こうした背景に加え、事業継続対策としての取り組み強化や、業務における利便性の向上なども考慮し、同じコストをかけるなら、クラウドを用いてWebメールに移行することを本格的に検討開始したのである。

「クラウドベンダーの比較は国内メーカーも含めて行いましたが、コストと容量が当社のニーズとなかなか合いませんでした。ベストな条件を求めてギリギリまで検討を続けた結果、最終的にGoogle Appsへと辿りつきました」と奥氏は語る。

先行メンバーの働きで円滑な移行を実現

こうしてタカミヤでは、長年使い続けた自社運用のメールシステムからGoogle Appsへの移行に踏み切った。手順としては、まず奥氏が2011年8月より単独でテスト運用をスタート。同年11月には、計5名のシステム管理メンバーおよび各部署から選抜した13人程度のメンバーで先行稼働を開始し、2012年1月に全社への正式導入を決定。翌月には全店店長会議で国内63店舗へ移行説明を行うと同時に、本社の各部署に対して2次展開ユーザーが追加された。

3月には、本社内を部単位で移行。店舗については先行して9店舗の移行を開始後、月末には全店舗の移行を開始した。そして4月16日にメールのMXレコードを切り替え、完全移行が完了したのである。3段階の移行ステップにより、現在は店舗込みで330アカウントを活用している。 奥氏に移行のポイントを聞いたところ、「各部署へ展開するにあたっては、仕組みを理解するのが早くなおかつ面倒見が良い人を中心に動いてもらいました。先行メンバーが各部署において、業務運用上で問題となる点の解決や応用法の検討、さらには全体移行時に部門ごとのサポートを手掛けることで、円滑に移行を進められたわけです」という答えが返ってきた。

また、先行ユーザーによって集められた質問などをフィードバックするため、Googleサイト内に移行マニュアルページを作成。質問の数や内容に応じて、その都度追記・修正する取り組みも行ったそうだ。

「紙のマニュアルと比べて、原本を即時に修正できるのが素晴らしいですね」と、奥氏もGoogleサイトで電子化したマニュアルの使いやすさを強調する。

ユーザーはもちろんシステム管理者にもメリット

Google Apps導入後の効果について「端末依存だった従来システムと比べて、社内のどこからでも自分のメール環境を利用できるのは便利です。正に"100%Web"の理念に基づく、モバイルやPCなど端末を選ばない親和性の高さを実感できました」と語る奥氏。Gmailについては、オートコンプリートや検索をうまく使いこなせるユーザーから高い評価を受けているという。

さらに、「変化が多いアドレス帳の改廃が1ヵ所で済み、従来のように各端末で入れ替えが不要なのは助かります。人事異動時のメールデータの移行作業もなくなりました」と、システム管理者としての負荷も低減されたそうだ。

現在同社ではGmail、Googleサイト、Googleドキュメント、Googleカレンダーに加えて、動画のアップロード機能も利用。クローズド環境の特性を生かし、社内向けの教育ビデオをアップロードしているという。

今後の活用については、「GoogleドキュメントやGoogleサイトなど、コラボレーションツールを積極的に使っていきたいですね。例えば、従来の集計作業を廃止し、答えを持っている人が直接入力するといった具合に、業務の効率化が図ることができればと思います。また、Googleのお家芸とも言える高度な検索機能を生かして、社内情報を瞬時に検索できる環境を作り、"探す時間を考える時間にする"というマインド変化も定着させていきたいです」と奥氏。経営者層の一部にスマートフォンを導入し、シングルサインオン経由での利用を開始する予定もあるそうだ。

こうして旧システムからの脱却と、業務効率化に見事成功したタカミヤ。これからも、自然を愛するたくさんの人たちに、夢やロマンを届けてくれることだろう。

タカミヤが運営している「釣具のポイント」