昨今、FinTech(フィンテック)という言葉がニュースや雑誌等で盛り上がりをみせていますが、皆さんはご存知でしょうか。今、世界中が注目するFinTech。金融業界に関わりのない方々にとっては関係ないと思っていませんか。今、何が起きようとしているのかご存知ない方も多いと思われますが、実は、中小事業者こそFinTechサービスの享受者として、ビジネス変革の大きな機会と成り得るのです。FinTechは、中小事業者側からみると、事業の管理や財務の部分そのものであり、中小事業者の最大の悩みであるお金の問題を解決することを期待されています。

第1回では、FinTechの概要を説明し、2回・3回では、FinTechが中小企業にどのような影響をもたらすのかを、中小事業者の目線で解説します。

FinTechの概念

まずは、FinTechという言葉ですが、これは「Finance」と「Technology」を掛けあわせた造語です。これを日本語に訳すと、そのまま「金融」と「テクノロジー(技術)」となりますが、金融とテクノロジーを融合させて全く新しい金融サービスを創りだそうとするムーブメントのことをFinTechと言います。

ここで、金融とは、今までは銀行や証券会社等が行ってきた業務です。例えば、融資、決済、資産運用等の金融サービスをイメージいただければよいと思います。また、テクノロジーは、クラウドの普及や、各企業が運営するネットサービスを連結する仕組みであるAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース)、人間の脳が行っている知的な作業をコンピューターが代替するAI(人工知能)、さらには、データ改ざんの可能性をほぼ不可能にしたブロックチェーン等が挙げられます。難しい用語の説明は他に譲りますが、技術の進展により、これら技術を有したITベンチャーやネット企業が、未開拓であった金融ニーズを掘り起こすとともに、より効率的により安価に金融サービスを顧客に届けることが可能となったことがFinTechの背景にあります。

日本でも多くのFinTechサービスが

それでは、日本における代表的なFinTechサービスを以下で紹介します。皆さんの中には、FinTechという言葉を意識せずに、普段の生活で既に利用されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

まず、個人財務管理の分野では、マネーフォワード、マネーツリー、BearTail、Zaimが、複数の銀行口座情報やクレジットカード明細、ポイント情報等をまとめて管理し可視化することで、今まで手作業で作成していた家計簿の作成をラクにしました。既に多くの個人ユーザに利用されています。多くのサービスで無料から利用できるため、家計簿からFinTechを手軽に体験してみるのもよいでしょう。

会計財務の分野では、freee、MFクラウド、A-SaaS(エーサース)が、クラウド型会計システムとして提供されています。中小事業者で日々行われる記帳業務を、個人財務管理でも利用されるデータアグリゲーション機能により、銀行口座やクレジットカードの取引明細から自動で仕訳化することを可能とし、バックフィス業務の効率化を実現しました。A-SaaSは、クラウド型税務システムを提供しており、会計から税務申告書作成、マイナンバー対応まで一気通貫で、クラウドで完結できるシステムを提供しています。

決済の分野においては、米Square、楽天スマートペイ、コイニーが、スマホやタブレットに専用リーダーを取り付けるだけで、スマホでのクレジットカード決済を可能にしました。専用の高額な端末を導入しなくとも、クレジット決済を手軽に提供できるため、主に小規模店舗から支持を集めています。また、SPIKEは、Webサイト上でのクレジットカード決済の導入を誰でも簡単に実現することを可能とし、月額決済額100万円までは無料で利用できることもあり、中小事業者のクレジットカード決済の導入コストを劇的に削減しました。

融資の分野では、現状大きく2つのグループに分けられます。マネオ、クラウドクレジット等に代表される貸付型クラウドファンディングと、GMOペイメントゲートウェイ、楽天カードに代表されるオンライン融資です。

貸付型クラウドファンディングは、運営会社が、融資先企業を審査した上でローンファンドを組成し、そのファンド資金を一般投資家にインターネットを通して募る形であり、一般投資家からみた場合は既存金融商品にはない高い利回りを実現できています。また、オンライン融資は、EC事業者の日々の決済データを利用した独自の審査モデルを構築することで、EC事業者の資金ニーズに対して、オンライン上での融資申込とスピード入金を可能にしました。これは企業の決済データも持たない銀行では実現が難しい融資手法であり注目されています。

投資支援の分野では、お金のデザインが代表されます。独自に開発したアルゴリズムにより、これまで一部の富裕層や機関投資家が享受できていたプロの資産運用アドバイスを低額で一般の投資家でも利用できるサービスとして注目されています。

最後に、暗号通貨の分野になります。ビットコイン販売所を運営するbitFlyer(ビットフライヤー)が代表されます。日本では2年前に「MT・GOX(マウントゴックス)」の経営破綻を覚えている方もいるかと思いますが、このビットコインに代表される暗号通貨は、法定通貨の代替、安価な決済や送金手段として期待されており、これを可能とする技術(ブロックチェーン)とともに注目されています。

FinTechサービスの種類

以上が、FinTechの代表的なサービスです。 意識せずに使っていたサービスもあったのではないでしょうか。

FinTechは、既存の金融機関やIT関連企業だけでなく、金融庁や経済産業省なども注目しており、定期的に勉強会が行われたりしています。今後の注目ビジネスの一つとして、ぜひ動向を追ってみてください。

次回は、FinTechが中小企業にどのような影響を与えていくかに関してご紹介いたします。

著者略歴

依田 勇生(よだいさお)
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社  プロダクトグループ マネージャー 公認会計士
2006年PwCあらた監査法人に入社。上場企業の会計監査業務、金融機関におけるストラクチャードファイナンスリスク査定/開示業務に従事。2011年プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現PwCアドバイザリー合同会社)に転籍し、中小企業から上場企業まで幅広く事業再生業務に関与。2015年にアカウンティング・サース・ジャパン株式会社に参画。中小企業及び会計事務所へのクラウド税務会計システムの導入を支援し、クラウド化による中小企業への経営改善を推進。