我々の生活に欠かせないWEBサービスの裏に存在するエンジニア。周囲にもたくさんいるのに、なんとなくそのエンジニアの職務や性質がわからないという人が多いのではないだろうか。

一体エンジニアとはどんなことを考え、仕事をしているのか? そしてどうやって一緒に仕事をしていけばいいのか? 気になる「エンジニアとの付き合いかた」について、GMOペパボの「新カゴプロジェクト」のメンバーである3名に話を伺った。

「新カゴプロジェクト」とは、同社が運営するネットショップ運営サービス「カラーミーショップ」のカートを新しくするプロジェクト。

「カラーミーショップ」のカート

メンバーは7名。内訳としては、エンジニア3名、デザイナー1名、ディレクター1名、プロダクトオーナー1名、更にエンジニアの基盤チームから1名が参加しているそうだ。その中から登場してくれたのが、デザイナーの鹿さん(本名は中尾さん)、プロダクトオーナーのりんさん(本名は山林さん)、エンジニアのねっしーさん(本名は土屋さん)だ。

あだ名で呼び合うチーム

――あだ名で呼び合っているそうですが、みなさんのあだ名も含め、自己紹介をお願いします

鹿:鹿です。このチームでひとりデザイナーとして働いています。名前の由来は前世が鹿なので(笑)。

2012年入社の鹿さん。デザインを担当する。

りん:本当はデザイナーですが、このチームではプロダクトオーナーというポディションで働いています。

鹿さんのデザイナー師匠であり、今回は初のプロダクトオーナーを務めるりんさん。

ねっしー:エンジニアのねっしーです。あだなの理由は、ネッシーっぽいということで(笑)。

エンジニアのねっしーさん。今回の主役といっても過言ではない。

――新カゴプロジェクトって、本当にカートを新しくするプロジェクトなんですね

りん:10年間続いているサービスなので、どうしても古くなってきている部分もあり、サービス規模もどんどん大きくなってきているし、周りの市場環境も見て、「変えなければ」となりました。片手間ではできないので、一気にリソースを割いてプロジェクト化されて、チームメンバーがアサインされました。

ねっしー:マネージャーやサブマネージャーが配分してアサインしてくれるんです。

――じゃあ誰と組むかは……

ねっしー:わからないですね。

りん:鹿くんはもともとカートのモックをつくってたよね。

鹿:そうですね。マネージャーが考えていた施策のひとつとして、コンバージョンをあげるためにはカートを変えた方がいいのでは、という仮説がありました。その時は実現はできなかったのですが、プロジェクト化したことで、動けるようになりました。

――みなさん、他のプロジェクトも兼任されてるんですか?

りん:このチームはほぼ専任です。人によって他の作業が少し入ることはありますが、ほとんどここに集中ですね。

エンジニア=徹夜のイメージは、見積りがしっかりしていないため

――カートを新しくするって、かなり大きなプロジェクトなんですね。朝、いつもミーティングを行っているという噂をきいたんですが

りん:朝会(あさかい)ですね。さっきもやってきたのですが、毎日11時から15分くらい行っています。"かんばん"と呼ばれるホワイトボードの前で、昨日は何やったのか、今日は何をするのか、いま困ってることないか……といったことを順番に確認していきます。

――どこのチームの方も行っているんですか?

りん:けっこうみんなやってるよね。

ねっしー:浸透してきたよね、朝会文化。

りん:かんばん(ホワイトボード)に、計画したタスクを付箋に書いて貼り、現在の進捗がわかるようにしています。どのチームもやるようになって、今オフィスはホワイトボードだらけですね(笑)。みんな朝10時とか11時とかになると集まって、ミーティングをしています。「スクラム※」という手法なのですが、導入してうまくいったチームがいて、他のチームもはじめるようになりました。

※スクラムとは「複雑で変化の激しい問題」に対応することを第一目標としたアジャイル開発手法

GMOペパボのオフィス内にある"かんばん"

――エンジニアの方、夜型のイメージがあるんですけども

ねっしー:人によります(笑)。僕はけっこう夜のほうが元気なんですが(笑)。朝会があるのでスイッチを入れてるところはありますね。

りん:朝型の人もいますね。

――イメージとしては、残業とか床で寝てるとか……

鹿:弊社、ホワイト企業なので(笑)。

りん:遅いなと思っても21時前くらいにはみんな退社します。20時を回ったら「大丈夫かな?」と心配になります。

ねっしー:それは、見積もりと計画をちゃんとしているから……。

――ちゃんとしてなかった経験があったのでしょうか? 前職とかでも

ねっしー:そうですね。実際に作業してみると、思ったよりも時間がかかっていたり、想定外にやることが増えてしまって、もうこのままじゃ絶対終わらない。なので、とりあえず人だけ増やして、カオスな状況になりながらもリリースは一応できた、みたいなことはありましたね。

りん:しっかり見積もったつもりでも、想定外なことが起こりタスクが増えれば、その分の時間が必要になるので、間に合わせるために残業や休日出勤でカバーするしかなくなってしまいます。そうならないためにも、今回のような大規模プロジェクトでは最初の見積もりが重要になります。

時間がかかっても、最初の見積りが肝心

――全体の計画はエンジニアが中心になって組むことが多いんですか?

ねっしー:最終的に計画を立てるのは、プロダクトオーナーやマネージャーになります。エンジニアは、計画するための材料として作業の見積もりを行います。見積もりで気をつけていることは、松竹梅プランのように幾つかのパターンを提示して、調整の余地を残すということです。ちゃんとやるならこれくらいかかるし、軽くやるだとこれくらいの速さでできますというのを、エンジニアチームから出すことで、プロダクトオーナーやマネージャーが「リリース優先でいきたいので竹でいきましょう」「ここはしっかり松で」と判断することができます。

――タスクの洗い出しというのが、エンジニア文化なのかとも思うのですが、いかがでしょうか

ねっしー:やっぱり何かをつくるとなれば、タスクの洗い出しとか見積もりはいるとおもっています。エンジニアだけじゃなく、デザイナーさんも、ビルを作る人でも、見積もりは行っているんじゃないでしょうか。ただみんなで見積もりするか個人でするかでは、状況が違いますね。今のプロジェクトだと、エンジニア全員でやっているんですよ。というのは、知っていることやできること、考えていることが個人で違うため。この人はAの作業をやれば終わると思ってたけれど、他の人から見たらBが足りない、ということもあるので……。認識の齟齬を埋めるためにみんなで見積もりをします。最初にかかるコストは高いですが、あとから楽になる印象がありますね。

――チームの4名が集まって、まず見積りをつくるぞと

りん:初期の頃は、見積もりを立てるのに半日ほどかかっていました。でも、時間をかけてでもしっかり見積もらないと、最終的に床で寝ることになります(笑)。みんなで計画するからこそ、1週間の計画を"かんばん"で管理するとき、あるメンバーの作業が思ってたより時間がかかってるなどわかるので、チームで助けることもできるんです。

※次回はデザイナー、プロダクトオーナーから見たエンジニアの姿について。10月27日(火)更新予定