【連載】

SDS講座 - 基礎から導入まで

6 SDSでインフラ開発/テスト環境をスリム化

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従来型のハードウエアベースのストレージはSDSの普及とともに市場から消えてしまうのだろうか? 10年もしくはそれ以上先の未来では、もしかしたらSDSだけの世界が実現しているかもしれない。しかし、当面はハードウエアベースのストレージ製品も継続的に開発・提供され、企業内の業務システムなど可用性や信頼性を重視するITインフラを中心に利用されるはずだ。

本稿では、ハードウエアベースのストレージ製品を仮想化技術でソフトウエア化したSDSを取り上げる。システムの本番環境にはハードウェアストレージ、開発/テスト環境にSDSという組み合わせについて、そのメリットや実際の使い勝手について検証していこう。

1. ITインフラの開発/テスト環境に対する課題は?

業務システムやアプリケーションを作り上げる過程で「開発」や「テスト」は欠かせない工程である。これら開発やテストの作業を本番業務が動いているインフラ上で行うケースは希で(基本的にはやってはいけない)、開発環境やテスト環境と呼ばれる別のインフラを用意するのが一般的だ。開発・テスト環境の規模についてはさまざまだが、アプリケーションの開発やバージョンアップテストだけの目的であれば、同様のOSやミドルウエアが動作するサーバを用意すれば目的は満たせる。

一方で、社会インフラや企業の売り上げやビジネスに直結する/影響の大きい業務システムの場合、本番環境と全く同じ構成のテスト環境を、パフォーマンステストや不具合の再現確認、バージョンアップ試験などの目的で用意する。

しかし、普段は使わないテスト環境に対して多くの投資を行うケースは希で、アプリケーション開発テストや業務運用テストなどが確認できる最低限の構成を開発・テスト環境として用意するケースが多い。本稿では、開発・テスト環境として最も一般的なこのケースでのストレージ要件について少し掘り下げていこう。

開発・テスト環境用のストレージ選定における重要なポイントの1つとして、本番システムでのストレージ機能の利用や依存度合いがあげられる。最近ではスナップショットやクローンなどのストレージが持つレプリケーション機能をバックアップやデータの二次利用(データベース領域などをボリュームごと複製し、分析やレポーティングなど別の用途でデータを活用する)などに積極的に活用するケースが増えている。

こういったストレージ機能を前提とした運用やシステム連携を本番システムで多く利用する場合は、開発・テスト環境においても同一のストレージ機種を用意すべきだ。ハイエンドストレージなど、パフォーマンスや接続性に余裕があるストレージを本番システムで利用する場合は、開発・テスト環境を本番用のストレージ筐体に相乗りするケースもある。ただし、ストレージのファームウェアアップデートの事前テストなど保守運用の観点でのテスト環境利用を想定すると、下位モデルの同一機種を別に用意するのが理想的だ。

2. SDSを開発・テスト環境に適用、そのメリットは?

連載第1回で解説したSDSカテゴリの中で、仮想ストレージアプライアンスは開発・テスト環境利用に適した製品だ。仮想ストレージアプライアンスはハードウェアのストレージに組み込まれているOSそのものを仮想化し、VMware vSphereなどのハイパーバイザ上で動作するようにカスタマイズしている。

そのため、元のストレージ製品の機能のほとんどが利用できる一方で、ストレージハードウエアの購入が不要で手持ちのサーバ仮想化環境にインストールできる優れものだ。最近では多くのストレージベンダーが、ミッドレンジクラスのストレージ製品を中心にこの仮想ストレージアプライアンス製品を提供している。(表1)

表1. 主なストレージ仮想アプライアンス

ここで仮想ストレージアプライアンス利用のメリットと注意点を整理しておく。開発・テスト環境への適用する上でも、これらの特徴を十分に理解し選定すべきだ。

メリット

・ストレージハードウエアの導入なしに各種ストレージ機能が利用できる。
・既存のサーバ仮想化インフラおよびストレージを活用できる。
・サポートオプションの選択ができる(有償ライセンス&ベンダーサポートもしくは無償ライセンス&コミュニティサポートなど)。

注意点

・ファイバチャネル接続を未サポートなど接続性に制限がある場合がある。
・ストレージ容量など拡張性に制限がある場合がある。
・コントローラの冗長構成など可用性に制限がある場合がある。
・パフォーマンスについては仮想アプライアンスを動作させるサーバおよび接続ストレージに依存する。

3. EMC Unity VSA: 最新ユニファイドストレージを仮想アプライアンスで提供

ここでは、仮想ストレージアプライアンス製品として、EMCのUnity VSAを紹介する。Unityは2016年5月にリリースされたばかりの最新ユニファイドストレージ製品で、ブロックストレージだけでなくNASとしても使えるため、企業の業務システム向けのストレージとしても広範囲の要件に適用が可能だ。

製品ラインアップは、ハードウェア提供モデルとしてUnityオールフラッシュ(SSDのみで構成)とハイブリッド(HDDとSSD混在構成が可能)が用意され、コントローラCPU処理能力やキャッシュメモリ搭載容量およびディスク搭載数に応じた4種類のモデルが提供される。(図1)

図1. UNITYファミリ

加えて、仮想ストレージアプライアンスモデルであるVSAが選択可能だ。Unity VSAは、Unityのハードウェアに依存しない機能はすべて利用できる。(表2)

表2. UNITYとUNITY VSA機能比較

このテスト・開発環境に最適なUnity VSAは、コミュニティエディション(無償ダウンロード版)とプロフェッショナルエディション(有償ライセンス版)が用意されている。(図2)

図2. UNITY仮想ストレージアプライアンス

無償ダウンロード版は容量が5TBまででベンダーサポートはなく、EMC製品利用者のコミュニティサイトを経由した情報収集に限られる。しかし、Unity VSAの機能としては、プロフェッショナルエディションと比べて遜色ない。プロフェッショナルエディションはベンダーサポートが付き、容量別のライセンスとなっており、10TB、25TBおよび50TBがある。

また、最初は無償ダウンロード版で評価し、その後は有償ライセンス版への無停止でのアップグレードも可能となっており、まずは無償ライセンス版から利用していただきたい。

EMCジャパン株式会社
システムズエンジニアリング本部 プロダクトソリューション統括部 SAS & SDS ソリューション部 シニアシステムエンジニア
古舘 良則

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インデックス

連載目次
第10回 仮想化された重複排除バックアップアプライアンス - 後編
第9回 仮想化された重複排除バックアップアプライアンス - 前編
第8回 SDSで支店・支社にエンタープライズNASを導入 - 後編
第7回 SDSで支社・支店にエンタープライズNASを導入 - 前編
第6回 SDSでインフラ開発/テスト環境をスリム化
第5回 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 後編(3)
第4回 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 後編(2)
第3回 第3回 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 後編(1)
第2回 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 前編
第1回 第1回 SDS(Software Defined Storage)って何?

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