【連載】

SDS講座 - 基礎から導入まで

2 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 前編

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最近「ハイパーコンバージドインフラ」という言葉を目にした/耳にした読者も多いのではないだろうか?

ハイパーコンバージドインフラ製品を開発・販売する新興企業がいくつも出てくるなか、従来のサーバ/ストレージベンダーもそれに追従する形で同様の製品をリリースしており、ITアナリストの多くがこの先数年間で市場が急激に拡大すると予想している。

実は、ハイパーコンバージドインフラ製品にはサーバベースストレージソフトウェアのSDS(Software-Defined Storage)が組み込まれており、最早ITにとって不可欠な技術になりつつある。今回からSDSを活用したハイパーコンバージドインフラ環境のメリットと構築方法について解説する。

1. サーバ仮想化インフラ構築のハードルとは?

ハイパーコンバージドインフラはどういったシステムに使われているのだろうか?ここ数年では、サーバ仮想化インフラや仮想デスクトップインフラ環境への適用が主要なユースケースとなっている。まずは、これらの仮想化インフラの要件や典型的な構成例について説明しよう。

サーバおよびデスクトップ仮想化を導入する大きな目的の1つに「集約」がある。従来の物理サーバを中心とした環境では、CPUやメモリなどのリソース使用率に依らず1つのOSやアプリケーションがサーバを占有する。このため、ITインフラの拡張に伴いサーバ台数が増加する一方で、空いているリソースも増え全体のリソース効率を高めることが難しくなる。

サーバ仮想化技術を用いると物理サーバ上に複数のOSやアプリケーションを稼働させることが可能で、リソースの使用効率も高まり、コスト削減につながる。また、仮想デスクトップの場合はクライアントPCの管理コストの削減や集中管理によるセキュリティレベル向上などを目的に導入するケースが多く、「集約」を実現するにあたり、インフラとしては以下の機能や構成が求められる。

  1. 冗長性・可用性
    仮想化し集約したインフラ環境では、OSやアプリケーションが動作しているサーバハードウェア故障による影響範囲がこれまで以上に大きくなる。従って、複数のサーバハードウェアを束ねる「クラスタ化」といった構成が必要となる。

  2. 可搬性
    1の「クラスタ化」による冗長構成を実現するうえで、OSやアプリケーションを物理サーバ間で移動することができる可搬性も重要な要件となる。OSやアプリケーションが動作する仮想マシンは、ファイルとしてストレージに保存されているため、クラスタ化された複数のサーバ間でデータを共有可能なストレージ構成が必要となる。可搬性は、サーバ間のリソース使用効率の平準化にも寄与する。

図1は、これらの要件や構成を満たす典型的なインフラ構成を示したもの。特徴としてはSANやNASなどのネットワーク接続型のストレージを用いる点だ。

図1. サーバ仮想化インフラの要件と構成例

2. SDSをサーバ仮想化インフラに適用すると?

サーバ仮想化インフラの導入・構築に伴い非常に重要ではあるが、悩ましいコンポーネントがストレージだ。先に述べた冗長化・可用性・可搬性などの要件を満たすストレージは、必然的にそれなりの金額の製品となり、初期投資という観点で導入のハードルが高い。

また、サーバ仮想化やデスクトップ仮想化インフラではストレージに対するI/Oワークロードの予測が難しいため、性能についても十分余裕を持った製品の選択が必要だ。実際、コストを優先して選択したストレージがボトルネックとなり、思うように集約が進められずに狙った効果が得られなかったケースも多い。

この「悩み」を解決する技術として注目されているのがサーバベースストレージソフトウェアのSDS製品だ。連載第1回でも解説しているが、このカテゴリのSDS製品はサーバ内蔵もしくは直結する共有型でないストレージをソフトウェアにより結合し、大きな共有ストレージとしての利用を可能とする。

前章で述べたとおり、サーバ仮想化インフラは可用性の観点で初期から複数のサーバで構築する。サーバリソースが足りなくなってきた場合は、クラスタにサーバを追加するスケールアウト拡張を行うが、このサーバベースのスケールアウトの考え方にSDSは完全にマッチしている。

もちろん、共有ストレージの導入が不要となるため、特に初期投資が抑えられスモールスタートしたい要件には最適だ(図2)。また、最近はサーバベンダーがSDS利用を意識し、内蔵ドライブスロットが多いモデルを製品ラインナップに用意しており、SDS導入のハードルが一段と下がりつつある。加えて、SSDや10GbEネットワークの低価格化により、SDS構成時のI/Oパフォーマンス不足の懸念も薄らいでいるという事実もある。

冒頭で紹介したハイパーコンバージドインフラ製品は、このSDS技術を採用し、ハイパーバイザなどのサーバ仮想化テクノロジーと統合管理ソフトウェアをパッケージ化したものだ。構築が簡単で導入直後にすぐ使える手軽さや、各ベンダーが提供する統合管理ソフトウェアにより運用や拡張も容易であるのが大きな特徴だ。

図2. ハイパーコンバージドインフラの特徴

表1は、サーバ仮想化インフラ用途に検討される代表的なSDS製品とハイパーコンバージドインフラ製品。

表1. 主要なSDSおよびハイパーコンバージドインフラ製品

3. さまざまなハイパーバイザ環境に対応

ハイパーコンバージドインフラ製品はサーバ仮想化インフラとして注目を集めているが、SDSや統合管理ソフトウェアをパッケージ化している付加価値から、当然同様のスペックのサーバハードウェアよりは高価だ。また、最近はLinuxベースでKVMなどのオープンソースで無償入手可能なハイパーバイザの機能や信頼性も高まっており、VMware vSphereやMicrosoft Hyper-Vなどの有償製品の代わりに採用を検討する企業も増えている。

EMCのScaleIOは、このようなニーズの変化にも対応できるマルチハイパーバイザに対応したSDS製品で、1000ノードを超える大規模環境までのスケールアウト拡張に対応している。スナップショットやQoSといった従来型のストレージ製品が備える機能性も兼ね備え、企業利用のニーズにも耐えうる製品だ。

図3. OpenStack環境でのScaleIO利用イメージとメリット

次回連載ではこのScaleIOを題材に、小規模で安価なサーバ仮想化インフラ導入をイメージした構築手順を紹介する。ScaleIOは評価目的であれば誰でも無償で入手し、利用できる。製品版と同様の機能を簡単に体感することができるほか、サーバ仮想化および管理ソフトウェアとして、最近注目を集めているOpenStackを組み合わせ、サーバ仮想化インフラとして具体的な利用イメージを提供する。

OpenStackはオープンソースで開発されているクラウド基盤ソフトウェアで、特定のベンダーや製品に縛られないオープンな環境を好む企業や、サービス事業者を中心に検証・導入が進んでいる。OpenStackで標準的に使用されるKVMへの対応や企業ユースに耐えうる品質・パフォーマンスなど、ScaleIOとOpenStackの組み合わせについて国内のシステムインテグレーターも注目し、検証結果を公表している。

OpenStackの構築は難しい、大変というイメージを持つ読者も多いと思うが、最近ではベンダーインストーラーや管理ソフトウェアを開発・パッケージ化したディストリビューションが増え、構築のハードルが下がっている。次回の連載では、このディストリビューション製品をベースにOpenStackとScaleIOを構築する予定だ。動作環境を用意できる読者は是非この機会にチャレンジして欲しい。

(EMCジャパン株式会社システムズ エンジニアリング本部 プロダクト ソリューション統括部 SAS & SDSソリューション部 シニア システムズ エンジニア 中村雅史)

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インデックス

連載目次
第10回 仮想化された重複排除バックアップアプライアンス - 後編
第9回 仮想化された重複排除バックアップアプライアンス - 前編
第8回 SDSで支店・支社にエンタープライズNASを導入 - 後編
第7回 SDSで支社・支店にエンタープライズNASを導入 - 前編
第6回 SDSでインフラ開発/テスト環境をスリム化
第5回 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 後編(3)
第4回 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 後編(2)
第3回 第3回 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 後編(1)
第2回 SDSでハイパーコンバージドインフラを構築 - 前編
第1回 第1回 SDS(Software Defined Storage)って何?

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