東京23区からは、1日あたり約9,000トン(2006年度 年間約333万トン、2007年度 年間約322万トン)ものゴミが発生している。毎日毎日これだけ排出されているゴミは、最終的にどこへ行くのかご存じだろうか。「東京湾の『夢の島』に埋めてるんでしょ」と考える方もいると思うが、その答えは一部正解で、一部は正しくないと言える。

正解なのは、東京湾に埋め立てられているという部分である。

23区から出る可燃ゴミについては、各区の清掃工場で焼却され、焼却後の灰は「スラグ」と呼ばれるガラス状の物質に加工された後、建設材料などに使われる。しかし、生成されたスラグは必ずしもすべて消費されるだけの需要があるわけではないので、余ったものは東京湾に埋め立てられる。

不燃ゴミ・粗大ゴミは、そのまま処分すると容積が大きいため、破砕などを行ってカサを減らす「中間処理」と呼ばれる工程を経た後、やはり東京湾に埋め立てられる。可燃ゴミは、焼却灰のスラグ化技術が導入されたことによって容積が大幅に減少し、有効利用も可能になったので、現在埋め立てられているのは不燃ゴミ・粗大ゴミが中心となっている。

では、最初の答えで間違っている部分はどこか。それは埋め立ての正確な場所で、現在は「夢の島」への埋め立ては行われていない。その名前が独特なため「ゴミの処分場=夢の島」というイメージを持たれることは多いが、夢の島はかつて「14号地」と呼ばれた場所で、現在の新木場駅(地下鉄有楽町線・JR京葉線・りんかい線)周辺にあたる。実は、夢の島へのゴミの埋め立ては今から40年以上前の1967年に終了している。現在は地名として「東京都江東区夢の島」という住所が存在するものの、公園などとして整備されており、ゴミの処分場だったという面影はまったくない。

JR京葉線新木場駅ホームから見た夢の島。ゴミの埋め立てでできた土地とは想像しにくい

現在ゴミの埋め立てが行われているのは、お台場から南に向かい、海底トンネルを越えた先にある中央防波堤埋立処分場、通称「中防」である。

中防は、埋め立て場所である最終処分場のほかに、不燃ゴミ・粗大ゴミの中間処理施設などが設置されているほか、最近では湾岸道路のバイパスルートとして期待される東京港臨海道路の建設なども進む場所である。東京のゴミの行方をこの目で確かめるため、中防を訪ねてみた。

「中防」の北側の地図。中間処理施設などが設置されている。中央の橋を渡った先、この地図の右下が最終処分場になっている

まずは埋め立て前の中間処理施設を見学

最終処分場は関係者以外立ち入り禁止となっているので、東京都廃棄物埋立管理事務所の職員の方に案内していただいた。前述の通り、現在の中防にゴミとして運ばれてくるのは不燃ゴミ・粗大ゴミである。ゴミの流れを追うため、処分場に向かう前にそれらの中間処理施設を見せてもらうことにした。

東京23区から中防に運び込まれる不燃ゴミ

不燃ゴミは文字通り「燃やせないゴミ」であるため、運ばれてきた後は基本的に埋めるだけである。しかし、軽い割に容積が大きいため、そのまま埋めると処分場の土地を急速に消費していってしまう。なるべく将来にわたって長く処分場を使うため、中防に設けられた「中防不燃ごみ処理センター」では、受け入れた不燃ゴミを、まず破砕機に投入して小さく砕いている。

次に、磁力で鉄分を選別する「磁選機」と呼ばれる装置を利用し、鉄を回収する。2006年度実績では、不燃ゴミ全体の3.5%(重量ベース)が鉄として回収されたという。また、アルミニウムは磁石にはくっつかないが、専用の選別機(詳しい原理は割愛するが、高速回転する磁石が搭載されており、電磁誘導による反発力でアルミを跳ね飛ばしている)でアルミも回収している。

受け入れた不燃ゴミは順次ベルトコンベアに投入され、破砕される。コンベアの先には監視台があり、爆発の危険性があるものが混入していないか目視で確認が行われている

一方粗大ゴミは、木製家具のような可燃系のものと、金属・プラスチック製品などの不燃系のものが混在しているので、まずはそれらを選別する必要がある。この作業は、中防の「粗大ごみ破砕処理施設」での受け入れ時に、なんと手作業で行われている。選別の後、可燃系のものは、同じく中防内にある「破砕ごみ処理施設」で焼却され、不燃系のものは、破砕し鉄分の回収を行う。

粗大ゴミの受け入れヤード。焼却、破砕など、その後に行う処理別に手作業で選別が行われている

破砕され、鉄分が回収された後の不燃系粗大ゴミ。後は処分場に埋め立てられるのみである

タタミはいかにも日本らしい可燃系粗大ゴミだが、驚くべきことに専用の裁断機が存在する。上から投入すると、カットされて手前側に出てくる

なお、不燃ゴミ・粗大ゴミとも鉄分を資源として回収しているが、選別機で回収できるのはゴミに含まれている鉄資源のうち半分程度という。残り半分は再利用されず、ただ粉々になって埋められるのみである。このことから、空き缶は不燃ゴミと一緒くたにせず、分別して資源回収に出すことが重要なのだとわかる。

以上のような中間処理を経て細かくなったゴミは、一定量ごとにコンテナに積み込まれ、トラックで最終処分場へ運ばれていく。

処分場へゴミを運ぶコンテナのターミナルは、さながら貨物駅のよう

次回はそれらのコンテナに続いて、いよいよ我々も処分場に足を踏み入れる。

次回はこのゲートを通過し、ゴミの終着地である処分場を見学する