最終回もお読みいただき、ありがとうございます。サイバーエージェントのウェブアナリスト、小川卓です。現在、この連載と連動して、9月27日(金)に開催されたセミナー「トップアナリストが教えるGoogle アナリティクス運用の"極意"」の資料ダウンロード (簡単なアンケートへの入力が必須です)も行っていますので、ぜひご覧ください。

さて、本連載の最終回では、メールマガジンを改善する上での具体的な分析の方法を、男性向けのファッションサイト「メンズファッションプラス」を例に紹介いたします。改めて、前回紹介したメールマガジンにおける指標の図を確認しておきましょう。

メールのコンバージョン(CV)までのフロー

メールマガジンの売上におけるシェア

いくつかのステップを見る前にまずは全体像を確認してみます。まずはメールマガジンの貢献を確認してみましょう。

売上としては全体の5%前後となっており、単価はサイト全体と大きな違いはありません。大きな特徴はそのCV率にあり、サイト全体と比較しても非常に高いことがわかります。

これは、メールマガジンという特性ならではの特徴ではあるのですが、それでも非常に高いコンバージョン効率を誇っています。また訪問の95%がリピーターという数値もあり(登録をする時にサイトに来る必要があるということから)、リピーターが利用している流入メディアになります。

購入に至るまでのメールマガジンからの流入回数

購入までのメールマガジンからの流入回数の数値も見てみましょう。

購入に至るまでのメルマガ流入回数

見ての通り、1回のメルマガ流入での購入は、メルマガ経由購入者の1/3程度しか無く、繰り返し流入してもらうことで購入に繋がっていることがわかります。

また数値はここではお見せできないのですが、大半のメールマガジン登録は購入時にチェックを入れてもらうことから購読が始まっています。メールマガジンの申し込みページもありますが、そこからの獲得は限定的です。そのため、今回はメールマガジンの登録以降の部分を中心に改善施策を考えていきたいと思います。

コンバージョン率の高いメールを分析する

コンバージョン率や売上に繋がるメールの特徴を確認していきましょう。以下のデータは8月のメールマガジンの配信結果の一部になります。

メールマガジンの配信結果

拡大図

CV率が低いものは0%から高いものは3.53%とそれなりに差があることがわかります。また単価も同様にレンジがあります。単価に関しては紹介しないといけない内容を大きく変えることは難しいため、まずはCV率の改善という観点からチェックをしてみましょう。

ちなみに8月のメールマガジンで最もCV率が高かったのは、以下の書き出しからはじまるテキストメールでした。

他のメールマガジンの内容も1つずつ確認しながら共通項や違いを見つけていった結果いくつか気づきがありました。

ポイント1 …… シンプルなテキストメールのほうが流入とコンバージョン率が高かった(受信者の半分近くがスマホということも要因の1つ)。

ポイント2 …… 商品を羅列するよりは、リンク+タイトル+オススメポイントを用意したほうがクリック率(=流入数)が高かった。

ポイント3 …… メールマガジンの最後にリンクを置いてあるほうがクリック率が高かった(※ただしリンクごとのクリック率は取得していないため仮説)。

ポイント4 …… 件名に関しては特徴を見つけることができなかった。

ポイント2の参考画像

ポイント3の参考画像 (改善が必要な例)

上記の情報などを加味して、今回は3つの施策をメンズファッションプラスの担当者に説明&提案してみました。

3つの提案内容

1. 最低限の件名のテスト
件名に関してはまだ施策を試せていないということもあり、テストを行うことにより開封率と流入率を上げるという考え方です。現状テキストメールに関しては開封率をチェックする方法が無いため、今回は同じ内容のメールを複数パターンの件名で送り、その効果を流入数で見るという考え方を取り入れています。メルマガの件名は主に6種類に分類できます。

以下がその6つのパターンになります。

この中からメールマガジンの内容にあわせて、毎回2パターンほど選定をしてもらい、その効果を比較してもらうという内容になります。

2. クリックして欲しいリンクの明確化と配置を意識
分析から得られた気づきを元に、メールマガジンで紹介する商品の中でも一推しの商品を決めて、それを中心に訴求する形を取るのが良いでしょう。オススメの商品をメールの最初と最後で紹介し、メールマガジン内でも装飾によって「特別感」を出すという方法を取ることで、しっかりクリック率を上げるという考え方です。

3. メールマガジンの配信パターン (特にステップアップメール)を取り入れてみる
現在配信しているメールマガジンは同じ内容をタイミング関係なく一斉に配信しています。しかし、「メンズファッションプラス」では購入までに複数回のメールマガジンからの流入を要することが多いということがわかっています。そこでメールマガジンを以下の2軸で4種類に分類してみました。

それぞれのメールの概要は以下の通りです。

■イベント
特定の記念日やタイミングにあわせて配信するメール。誕生月など登録などをしている場合に実施しやすく、流入も期待ができる。

■ウェイクアップ
非アクティブなユーザーに送るメール。例えば購入から90日以上経つ人にクーポン配布などで興味をもってもらい、サイトに再度訪れてもらい購入を促す。

■ステップアップ
購入あるいは登録後○日以内に最初の1通、▲日以内に次の1通といった形で定期的に送り継続的な流入を促し、購買に繋げる。

■フォロー
購入後に1回だけ送るメール。満足度を高めブランドに親近感をもってもらうことが主な目的。

「メンズファッションプラス」の担当者にはどの内容にも興味をもっていただいたのですが、その中でも筆者としては、作成のしやすさ、及び繰り返しの流入を大勢の人に実現しやすいという観点で「ステップアップメール」をオススメしました。

提案させていただいた3つの内容から、いくつかを取り入れてもらい、テストを行っています。以下が施策を実施した9月・10月のデータになります。

まだCV率に大幅な改善には見えていませんが、売上比率や単価などに関しては数値が上がってきていることがわかります。

最後に

今回紹介した方法はどのサイトでも必ず利用できるものとは限りません。施策を考える上で大切なのは、「仮説を元にデータを確認し、そこで得られた結果を元に仮説を補強し、その仮説を証明する施策を実施して評価を行う」というプロセスを行い、なるべく精度が高い施策を考えることです。

またその施策に関しても「まずはすぐにできるもの」から取り組むと良いでしょう。施策を繰り返すことではじめて施策の精度を上げることができます!

全4回に渡る連載にお付き合いいただきありがとうございました! 今後もセミナーや書籍などを通じて発信をしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

本連載の内容を含む書籍がマイナビより発行になります。全ページ書き下ろしの「現場のプロがやさしく書いたWebサイトの分析・改善の教科書」です。来年早い時期に発行予定です。どうぞご期待ください。

※書名およびカバーイメージは変更になることがあります

■小川 卓氏 (サイバーエージェント)
前職では、リクルートにて住宅情報サイト「SUUMO」のウェブアナリストを担当。アトリビューション・ソーシャルメディアの分析・モニタリング・スポット分析・教育などが主な業務。また、アクセス解析に特化したブログ「リアルアクセス解析」を2008年より運営中。

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去る2013年9月27日に開催された、当連載と連動したセミナー「トップアナリストが教えるGoogle アナリティクス運用の"極意"」に登壇した小川氏の講演資料をこちらからダウンロード配布しております(簡単なアンケートへの入力が必須です)。当日、ご来場できなかった方も、ぜひこの機会にチェックしてみてください。

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