私の見聞きする、自分の周りの狭い世界の話で恐縮ですが、そこで最近、ある傾向が顕著であることを発見しました。女友達と会うと、必ずと言っていいほど「男の悪口」が出るのです。付き合っているとか、そういう相手の話ではなく、「他人ではあるが、仕事上や友人関係でつきあいがある」男性の話です。

「○○さん、まだ恋愛する気あるの?」と失礼なことを言われたとか、「結婚したくないんでしょ?」「もう子供欲しいとか思ってないんでしょ?」と、デリケートな部分に特攻かけられたとか、楽しく飲んでいたのにその場の女性を容姿で分ける発言をして場を凍らせた男性がいたとか……。

もちろんそんな人のことは放っておけばいいのですが、これは、本当は「怒っている」ことが問題じゃないから難しいのです。怒っているのはもちろん怒っているけれど、その実、彼女たちは傷ついているのです。

「もう結婚や恋愛を諦めるべき年齢の女」として見られたこと、自分は自分なりに生きてきたのに、その個性より先に年齢や容姿で簡単にジャッジされてしまうこと、女同士楽しくやっていたのに、そこに区別があることをことさらに騒ぎ立てる男がいたせいで、せっかくの女同士の関係がぎこちないものになってしまったこと……。

そこで思いきり怒ることができればいいけれど、「結婚できない女のヒステリー」と、さらに言われたくない言葉がささやかれる近未来を想像してしまい、できない。そんな女同士で、「こんなことがあったんだよねぇ」と語り合っていると、男性全体に対する不信感が増幅されてゆくように感じます。

付き合ってすらいないのに、男性不信になったらまずい。もっといい話を聞かせてくれ! と思っているのに、聞こえてくるのはなんというかひどい話ばかりなのです。

本当は異性が嫌いなのでは?

でも、私たちがそうやって女同士でつるんでいる間、男たちは何をしているのでしょうか。男は男で、冗談のつもりで言ったことにムッとされたり、酔った上での発言にシーンとされたりしたことに、やはりムカついているのではないでしょうか。

ムカついているとまでは言わなくとも、女がここまで「男はわかってくれない」と思っているのなら、男も「女はわかってくれない」と思っていてもおかしくありません。 異性はわかってくれない。けれど、異性と一緒にいるとときめく、性欲がこみあげてくる、恋に落ちるなどのめくるめく出来事があるからこそ、同性よりもわかり合いづらい異性との付き合いをしようとしてきた……のだと思います。

男性の草食化とか言ってましたが、それは性欲が弱まったわけでも何でもなくて、ただ意志の疎通がしにくい異性との交流がめんどくさくなっただけなんじゃないでしょうか。男性だけの問題ではなく、私は今、自分にもそういう傾向があるように思います。異性に興味はある、恋愛はしたいし結婚もしたい。けれど、異性と接するとため息が増えるばかり……。つい目先のめんどくささを優先させると、会う相手が同性ばかりになってしまう。

こんなことを望んでいるわけではないのに、どうしてこうなってしまうのでしょう。でも、私はここに晩婚化の理由がひそんでいるような気がしてならないのです。「男なら女が好きに決まってる」「女なら男が好きに決まってる」。本当にそうでしょうか?

恋愛や性の対象としては好きでも、それ以外の部分では、実は異性が好きじゃないのかもしれない、と思うことが私はありますし、男性側の強い女性嫌悪を感じる場面も多いです。もし、こういう人が私や私の友人だけでなく多いのなら、独身の男女が増えているのは、思ったよりも深刻なことなのではないかと思います。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩