エアマルチプライアーだってホコリは溜まる…よね

羽根がないので犬が潜っても安全! もちろん、人間も大丈夫。まあ、わざと潜る必要はないけど…

扇風機には必ずホコリが付着する。誰もがこの問題に頭を悩ましているはずだ。空気を送り出すために絶えず空気を吸い込む扇風機とそこに吸い込まれるホコリとの関係は切っても切れない。我が家では、1年も使用するとガードや羽根にホコリがビッシリと付いてしまう。雑巾で拭いたぐらいでは取り去ることができないので分解して掃除するしかないのだが、これがかなりたいへんだ。ぬるま湯に浸して台所用洗剤でゴシゴシこする。ガードの棒(針金?)の汚れをきれいにするのは一苦労である。では、ガードも羽根もないダイソンの「エアマルチプライアー(Air Multiplier)」はどうなのだろうか。長期テストの後半は、あまり語られない「エアマルチプライアー」とホコリの知られざる関係についてレポートしよう。

まず最初に以前使用していた普通の扇風機の写真を見ていただきたい。羽根に直接手が触れないように安全のために取り付けられている前後のガードにはビッシリとホコリ(というか抜け毛だなほとんど)が付いている。だいたい1年ぐらいでこの状態になる。「エアマルチプライアー」には空気を送り出す丸い枠(プロジェクタ)があるだけで、ガードや羽根はないので汚れないんじゃないかと勘違いする人がいるかもしれないが、ホコリは必ず付くので清掃は必要だ。

再び登場。以前使用していた扇風機。この扇風機が悪いわけじゃないが、うちではあっという間に毛だらけになってしまう。こまめに雑巾で拭き取っていればこんなに酷くはならないかもしれないが(不精者なのですみません)。ここまで汚れるとガードと羽をバラして洗わないときれいにならない

では、どこが汚れるのだろうか? 私が使用している「エアマルチプライアー AM03 フロアーファン(ホワイト)」に限って言えば、まずプロジェクタの内側にあるスリットの付近のホコリが目立つ。フロアーファンは、約1.3mmの狭い隙間から風を高速に吹き出し、その後飛行機の翼のようなカーブを通過することによって風量を15倍に増やす仕組みになっている。当然だが、これだけ大量の風が当たるとそこにホコリが付着する。また、使用していなくても自然に表面に付着する量もバカにならない。ある程度溜まると写真のようにちょっと見てもホコリが付着しているのがわかるようになる。

「エアマルチプライアー」も3カ月ほどで薄らとプロジェクタの内側にホコリが付く(左)。拡大して見てみるとホコリが多く付着している箇所とそうでない部分に分かれている(右)

プロジェクタの内側をよく見てみるとスリットとスリットの間に細い仕切りがあり、どうもそこにホコリがより多く付着しているようだ。おそらく、スリットの付近は強い風によってホコリが吹き飛ばされてしまい逆に仕切りの部分は風が弱いために残ってしまうのだろう。もし、仕切りがなければ均一に薄らと付着してあまり目立たないのかもしれないが、この仕切りは構造上必要だろうからなくすのは難しいかもしれない。

大量の犬の抜け毛はどこに行った?…謎だ

さて、さらに目を凝らしてこの仕切りの部分を見てみると細い糸のようなものが付着しているのに気がつく。「犬の抜け毛」である。そりゃそうだよね。普通の扇風機があんなになってしまうのに「エアマルチプライアー」だって抜け毛が付かないわけがない。でも想像していたよりも遥かに少ない。うちの毛はこんなものじゃないだろう。他の毛はどこに行ってしまったんだ? まさか、内部に大量に詰まってしまっているとか…ヤバイぞ!!

スリットを斜め後ろから見るとこのように抜け毛が付いている(左)。これを前方から見ると仕切りに引っ掛かっていることがわかる(右)

ということで抜け毛を探すことにした。まずは、(1)空気が吸い込まれる土台の吸気口部分。以前にも解説したが、ここにはモータが収まっていて、1秒で33リットルもの空気を吸い込んで上のプロジェクタに送っている。普通の扇風機で言うと背面のガードに当たるわけだが、先ほどの写真のように悲惨な状態ではなく、なんとなく毛が付着しているといったレベルだ。意外に溜まっていないなあ。ホコリがあまり目立たなかったので使い始めてから一度も清掃した覚えがないから、3カ月近くでこの量しか溜まらなかったということになる。

土台の部分のどこに抜け毛が溜まっているのかを数字の順で調べてみることにした

(1)吸気口にもっとも多く付着していると思っていたが、たいして付いてはいなかった

次にモータ付近やパイプの中を覗いてみた。もしかするとパイプの中にビッシリと詰まっているとか…以前に掃除機のパイプに抜け毛が溜まって故障したことがあるので少々怖い(ダイソンじゃないよ)。まず、(2)電源ケーブル付近にはほとんど見当たらず。(3)首振りの稼働部分の隙間もよくよく中を覗くと発見できるくらい。(4)モータ部分は薄らと付着しているだけ。(5)パイプとの結合部分は、かなり密閉性が高いようでまったくと言っていいほどホコリはなし。(6)プロジェクタの内部は奥まで確認することはできなかったが酷い感じはしない。(7)パイプの中を覗いてみたが、ここにも細かいホコリがあるだけで毛のようなものは見当たらなかった。つまり、毛は吸気口とそれが排気されるスリットの部分に多少見られる程度で、大きな塊はついに発見できなかったのである。

(2)電源ケーブルの根元には吸気のために付着した様子はなし。(3)首振りの稼働部分も奥に若干細かいホコリが付いているだけだ

(4)モータ部分は黒いため白いホコリが目立つが量そのものはたいしたことはない。(5)パイプとの接続部分はまったくと言っていいほどホコリは見当たらない(右)

次にプロジェクタの内部とパイプを調べてみることにした。(6)プロジェクタを取り外して中を覗いてみたがあまり汚れていなかった。スリットの内側は壊さないと見られないので少々不安はあるが、外から見た感じでは溜まっていなさそうだ

(7)最後にパイプの根元と内部を調べてみることにした。左がパイプの下から、右が上から覗いたところ。毛のようなものは見当たらない。もっと引っ掛かっていると思ったんだけどなあ

名探偵登場! 消えた抜け毛の行方は?…推理する

では、いったい抜け毛はどこに行ってしまったのか? まるで、ミステリードラマのようになってきたが、私の推理ではこうだ。「エアマルチプライアー」の内部は、ダイソンの掃除機並みにかなりの速度で空気が移動しているため、毛は吸気口から入ってもどこかに付着する暇もなく、そのままスリットから外に吐き出されてしまう。おそらく、「エアマルチプライアー」のパイプは掃除機のホースと同じような状態なのではないだろうか。だから、細かいホコリ以外はほとんど見当たらない。

いかにもダイソンらしい構造だが、抜け毛がどこにも引っかからずにそのまま外に出てしまっているとすれば「ホコリをまき散らしているってことじゃないの」と思われる方もいるだろう。でも「エアマルチプライアー」は空気清浄機ではなく、あくまでも扇風機である。本来の役割は涼しい風を送ることで、ホコリを除去することではない。普通の扇風機も単に風を通過させているだけなので、ホコリも風と一緒に送られてきている。

最近の扇風機やサーキュレータの一部にはマイナスイオンを発生したり、空気清浄や除菌、脱臭といった機能備えているものもある。しかし、テスト結果をきちんと公表している一部のメーカーを除いて効果がイマイチ不明瞭なものが多い。また、機能が増えることによってメカが複雑になったり、メンテナンスがさらに面倒になったりと実用的にはまだまだこれからという印象を受けている。もちろん「エアマルチプライアー」だって、コストやサイズを犠牲にして内部にエアフィルタを取り付けたり、あるいは掃除機のサイクロン機能を搭載すればかなり高度な空気清浄が可能になるだろう。ま、将来的にはありかもしれない。

とにかく清掃は超カンタン…とても大事なこと

もっともホコリが目立ったスリット付近と吸気口の清掃は雑巾で軽く拭き取って終了。年に一度、ガードと羽根をバラバラにしてお湯と洗剤で洗っていた普通の扇風機とは大違いである。本当にこれだけでも「エアマルチプライアー」を買って良かったとしみじみ思う。気になったら、ササッと拭けばいいだけなのだから、こんな扇風機、他にないもんね。

結論として、購入前から危惧していた抜け毛やホコリの付着だが、3カ月ぐらいではほとんど汚れることはなかった。半年以上経過した現在でも酷い汚れは確認できておらず、2度ほど雑巾で拭いただけ。もちろん、いつかきちんと清掃しなくてはならない日が来るとは思うが、この様子だとかなり先のことになりそうだ。

プロジェクタの内側を雑巾で一拭き。きれいさっぱりホコリが取れる。後は土台の吸気口付近を拭けば清掃は終わりだ