「Google Earth」や「NASA World Wind」など、優れた電脳地球儀のおかげで地球の丸さがぐっと身近になった昨今。それでもやはり地球上の海や大陸の位置と形を把握するには、実物の地球儀に優るものはない。そんな地球儀の知育玩具的側面を伸ばすべくTV出力を搭載した"気になる"新商品が、その名も「TV地球儀」である。

TVとはコンポジット映像とモノラル音声で接続する。解像度はもちろんSDだ

地球儀本体を回すと、なんとTV画面中の地球も回転する!

ストレートな名前が指す通り、TV地球儀は地球儀本体を家庭のTVに接続して使用する。ユーザーが操作するのは地球儀と、ペン型のコントローラー、地球儀の台座部分のスイッチ類だ。台座部分には電源スイッチのほか、昭和のTVチャンネルを思わせるつまみ式のダイヤルスイッチがあり、その周囲にはカーソルや○×などの操作ボタンがプリントされている。TV地球儀にはたくさんの動作モードがあり、まさにTVのチャンネルを変えるがごとく、ダイヤルスイッチで動作モードを切り替えるのだ。

ペン型コントローラーで地球儀の表面をタッチ。認識の精度はかなり高い

中央にあるのがダイヤルスイッチ。全14種類の動作モードを切り替えられる

TV地球儀の動作モードには、TVと地球儀が連動して地名や首都を教えてくれる地球儀解説系のモードや国旗、世界遺産、恐竜、カブトムシ・クワガタムシなどの図鑑系、ゲーム感覚のクイズ系モードがある。地球儀系や図鑑系の動作モードでは、地球儀の表面をペン型コントローラーでタッチすることで、タッチした地点の情報をTVに表示してくれるので、操作が直感的でわかりやすい。文字やグラフなどの情報は子供向け、と侮れないほど充実していて、操作のレスポンスも良好だ。ついつい地球上のあらゆる土地をタッチし続けて、思わぬ時間を費やしてしまった。図鑑系の動作モードでも地球儀をタッチする基本操作は変わらないが、さらにカーソルや決定ボタンの入力を要求されることがある。ここで台座部分の操作ボタンの出番だ。

といってもボタン自体は台座表面にプリントされているだけなので、指で押しても反応はない。実はこのプリント部分をペン型コントローラーでタッチすることで、カーソルや決定などの操作が可能になる仕組みなのだ。地球儀は素手で扱うのが基本となるので、その都度に反応してしまわないように表面をペン型コントローラーでタッチさせるのは、合理性があると思えるが、「台座の操作までタッチ」というのは、やや煩わしい感が否めない。一度手にしたペン型コントローラーを離す必要がない、という合理性もないことはないが、後述のペン型コントローラーの構造上、直接ボタンを押す操作とタッチの両立も可能と思われるので、直接操作できる方法も残して欲しかったところだ。

台座部分の操作ボタンをタッチ。手元を見ずに操作するには相当の慣れが必要だ

テキストはふりがな付き。世界遺産や国々の写真が各1点というのは少々寂しい

些細な不満はさておき、やはり国産地球儀制作の雄たる渡辺教具製作所による地球儀は、文字の配置や国の色分けなど、ツボを押さえた作りがさすがと思わせる逸品である。TVを使わないスタンドアローンモードも搭載しているので、地球儀とペン型コントローラーだけで、TV地球儀の実力の一端を垣間見ることもできる。映像を使えないので音声だけでフォローする地球儀解説系モードのみの対応となっているが、地球儀と直接向き合う分、その出来の良さが際立つ面もあり、TVを接続する前にまず楽しんでもらいたい動作モードだ。

透明なラップのほか、白いコンビニ袋でもタッチ可能だった

青い紙を当てると認識しなくなるのは、タッチパネルでないということだ

さて、ここまでTV地球儀を触れてみて、気になるのはペン型コントローラーの仕組み。DSやiPhoneのようなタッチパネル的に動作しているのか、はたまたWiiリモコン的に位置検出をしているのか、それ以外の仕組みなのか。結論から言うとそれ以外、ということになりそうだ。まず、ペン型コントローラーをよく観察してみると、ペン軸にあたる部分がなく、ペン先が空洞になっていることがわかる。さらに暗い場所に持っていくと、ペン先からかすかに赤い光が出ていることに気づいた。つまり、このペン型コントローラーは、小さなバーコードリーダーのようなもので、地球儀表面や台座部分のプリントを読み取って、タッチした場所をTV地球儀本体に伝えているらしいのである。その証拠に透明のラップやビニールテープで地球儀表面を覆っても、TV地球儀は正常に動作するが、黒いビニールや紙で覆ってしまうと、とたんに反応しなくなってしまった。TV地球儀が2台並んだ環境があれば、隣のTV地球儀をタッチして操作することもできそうだ。

地球儀表面に対して垂直にタッチすれば、最大で2mmぐらい離れていても認識される

垂直からペンを寝かせていくと約45°まではタッチできる

キーワード検索機能やランダムで図鑑情報を表示する機能など、飽きずに地球儀に触れ続けられる機能が満載のTV地球儀。インタフェースやレスポンスもよく練り込まれており、特別な知識がなくても十分使いこなせるはず。せっかく子供用に地球儀を買うなら、大人も楽しめる選択肢として検討に値する、新しい地球儀の形といえるだろう。個人的には台座の下から飛び出すキーボードのギミックにも高評価を与えたい。