前回はE353系量産先行車の登場にちなみ、「中央東線」のダイヤを眺めた。今回は「中央西線」の名古屋~塩尻間を見てみよう。中央西線では、名古屋駅と長野駅を結ぶL特急「(ワイドビュー)しなの」が走っている。そこで、篠ノ井線・信越本線塩尻~長野間も加えてみた。区間ごとに運行本数の密度が異なり、沿線の人口比を反映したダイヤが描かれた。

中央西線・篠ノ井線・信越本線名古屋~長野間の平日ダイヤ

いつものように全体図から。駅は上の端が名古屋駅、下の端が長野駅だ。赤線が特急列車、緑線が快速列車。そして少ないけれど、青線が「おはようライナー」「ホームライナー」を示す。前回の中央東線と同じで貨物列車は省略した。また、駅名の横の太い水色の線は単線区間である。

名古屋~塩尻間は色合いが中央東線と似ている。名古屋付近は快速列車の緑色が多く、全区間にわたって赤い線の特急が頻繁に走り、その隙間を快速・普通列車が走る。名古屋付近の列車の密度が高く、塩尻に向かって運行本数は少なくなる。中央東線に比べると全体的に運行本数は少ない。中津川~塩尻間では隙間が目立つ。中央東線における甲府や大月のような都市がないからだ。かなり長いローカル区間である。

運行本数が少ないせいか、ダイヤパターンは整っている。特急列車は「(ワイドビュー)しなの」だけ。停車駅の数も速度もほぼ同じで、通過タイプや停車タイプの設定がない。きっちり1時間おきに走っている。特急列車同士、あるいは特急列車が絡むすれ違いは、なるべく複線区間で行われるように工夫されている。

なお、L特急「(ワイドビュー)しなの」は1往復だけ大阪駅発着の列車がある。下りは名古屋駅を11時ちょうどに発車する「(ワイドビュー)しなの9号」、上りは長野駅14時4分発の「(ワイドビュー)しなの16号」だ。「(ワイドビュー)しなの」はJR東海の383系で運行されていて、JR西日本に乗り入れる形となる。つまり、「(ワイドビュー)しなの16号」として夜に大阪へ行き、1泊して翌日朝の「(ワイドビュー)しなの9号」で帰ってくる。

大阪~長野間の「(ワイドビュー)しなの9・16号」は、昼間の在来線特急としては日本最長距離を走る。大阪行は途中で夜になってしまうから、車窓を楽しむなら大阪発長野行「(ワイドビュー)しなの9号」が良い。

ダイヤを追ってみると、名古屋駅から5駅目の新守山駅で先行する普通列車を追い越し、高蔵寺駅で快速列車も追い越す俊足ぶり。その後は運行本数が減ってしまうため、追い越しはないけれど、土岐市~瑞浪駅間で「(ワイドビュー)しなの6号」とすれ違い、田立~南木曾間で「(ワイドビュー)しなの8号」、木曽福島~原野間で「(ワイドビュー)しなの10号」、広岡~村井間で「(ワイドビュー)しなの12号」、松本駅直前で特急「あずさ16号」とすれ違う。おそらく単線区間の冠着駅でも「(ワイドビュー)しなの14号」とすれ違うけれど、どちらも通過扱いだから、どちらかが運転停車すると予測できる。

名古屋通勤圏を拡大

快速列車は名古屋~中津川間が多い。中津川駅までが名古屋都市圏の通勤区間といえそうだ。快速列車は名古屋駅から大曽根駅まで各駅に停車し、大曽根~多治見間で通過駅が多い。多治見~中津川間は各駅に停まる。同区間で日中に各駅に停まる列車は、すべて名古屋駅発着の快速列車。つまり、中津川~名古屋間は「名古屋中心ダイヤ」になっている。この区間の駅はおもに名古屋市に用事がある人が利用しており、途中駅相互間の利用者は比較的少ないと思われる。

日中のダイヤパターンが整っていて、快速列車の間に普通列車2本が基本。通勤時間帯も基本を崩さず、運行間隔を縮めて増発している。このパターンだと、9時頃に下り名古屋発の快速列車がほしいところだけど、設定されていない。じつは、名古屋駅9時4分発の普通列車は、土休日に快速列車として運行される。この種別の変更は他の時間帯の快速列車にも見られる。乗降客の変化を分析した結果、最適な列車を設定したと思われる。

松本駅付近・長野駅付近を拡大

中央西線は名古屋から遠ざかるにつれて列車の数が減っていく。しかし、篠ノ井線塩尻~松本間、信越本線篠ノ井~長野間の運行本数は多い。塩尻~松本間は中央東線の列車が乗り入れ、篠ノ井~長野間はしなの鉄道が乗り入れるからだ。松本市は人口約24万人、長野市は人口約38万人。沿線に人口が多い路線の列車が乗り入れて、この区間はにぎやかになっている。もちろんどちらも複線区間である。

松本駅付近・長野駅付近を拡大、夕方から夜にかけて

最後にユニークな列車を紹介しよう。長野駅18時48分発「ナイトビュー姨捨」だ。6月から9月までの金・土曜に走る臨時列車で、車両はハイブリッドディーゼルカーのHB-E300系「リゾートビューふるさと」を使用する。日本三大車窓といわれる姥捨駅に長時間停車し、善光寺平の夕暮れから夜景までを楽しむ列車である。全車指定席で、片道・往復のどちらでも利用可能。姥捨駅では温かい味噌汁のもてなしもある。

「ナイトビュー姨捨」はスイッチバックの姥捨駅に19時20分に到着すると、約1時間停車し、20時32分に発車する。その間にも普通列車が上下合わせて4本発着し、特急列車が上下1本ずつ通過する。スイッチバック駅なので、特急列車はホームに入らず本線を通過する。姥捨駅のホームには展望スペースがあり、そこから善光寺平を眺めると、眼下に特急列車が通り過ぎる。

昼行特急最長の「(ワイドビュー)しなの」、夜景とトレインビューを同時に楽しむ「ナイトビュー姨捨」。どちらも魅力的だけど、ダイヤを調べると楽しみが増える。実際に乗るときはダイヤを印刷して持っていこう。「OuDia」はWindows対応だけど、iOSにもAndroidにも「OuDia」形式のデータを読めるアプリがある。タブレット端末に「OuDia」データを入れておけば、旅先でいつでもダイヤを参照できて便利だ。