JR東日本の只見線は福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ。単線非電化、全長135.2kmの長大なローカル線だけど、このうち会津川口~只見間の27.6kmはバス代行運転となっている。2011年の豪雨の影響で4つの鉄橋が流出したからだ。沿線の人々は復旧を希望しているけれど、具体的な復旧のめどは立っていない。その悲しいダイヤと、急行も走った全盛期のダイヤを比較しよう。

只見線のダイヤ(2015年6月)

最新の時刻表を列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」に入力した。黒の実線が普通列車、会津川口~只見間の点線が代行バスだ。6往復が運行されている。小出駅側の列車の本数に比べるとやや多め。ダイヤも代行バスならではの工夫があり、3回のすれ違いが設定されている。この区間の駅はすれ違い設備がなかったから、運行本数は列車時代に比較して増えているようだ。

ただし、代行バスの運行時間帯は日中に寄っている。会津若松側、小出側への通勤通学には使いにくい。不通区間は通勤通学需要の少ない区間といえそうで、これも復旧を急がない理由といえそうだ。

列車とバスの接続に注目すると、会津若松側、小出側ともうまく連携できているようだ。下りは会津若松駅6時0分発、小出駅10時43分着の乗継ぎが最もスムーズ。上りは小出駅13時11分発、会津若松駅17時20分着で順調に乗り継げる。4時間以上の旅で需要は少なそうだけど、これでも迂回して新幹線を乗り継ぐより所要時間は短い。

ただし、会津若松と新潟の都市間輸送を調べると、会津バスの高速バスが3時間ちょうどとなっている。やはり実用面で只見線を全線乗り通す人は少ないだろう。只見線は途中下車してゆっくり楽しむルートといえる。運行間隔を見ると、2~3時間程度の途中下車を2回組み込んだ旅程を作れる。

ところで、会津若松~西若松間に短い線がある。会津鉄道の直通列車だ。このうち緑色は快速「AIZUマウントエクスプレス」。会津鉄道の車両を使用し、只見線に乗り入れて会津若松駅まで、土休日には磐越西線の喜多方駅まで運転されている。会津鉄道方面は野岩鉄道・東武鉄道に乗り入れ、鬼怒川温泉駅・東武日光駅に到達する。最長131.1kmを走破するロングラン列車だけど、只見線を走行する区間は西若松駅~会津若松駅間のわずか3.1km。このダイヤでは影が薄い。

1978年10月の只見線のダイヤ

前回の留萌本線と同様、「ゴオサントオ」ダイヤ改正の頃のダイヤも作成した。青い線の急行列車が3本もあってにぎやかだ。ただし、つねに3往復が走るわけではない。急行列車のうち、定期列車は下りが会津若松駅21時8分発「いなわしろ4号」、会津若松駅7時35分着「いなわしろ1号」の会津若松~会津川口間のみ。会津川口~只見間は11月24日から4月19日までの間、運休となっていた。只見線全区間を走る「奥只見」も12月1日から3月31日まで運休。逆に日中の会津若松~会津川口間を走る「いなわしろ2・3号」は冬期間の運転となっている。

普通列車を見ると、会津若松~会津川口間の運行本数は現在と変わらない。会津若松~西若松間の区間列車は会津線(当時)と直通する列車で、会津線が会津鉄道になった現在も継続している。その一部が「AIZUマウントエクスプレス」となった。

会津川口~只見間は少なくて、現在の代行バスの半分。早朝の上り、深夜の下り急行列車のおかげで通勤通学輸送にも対応できそうに見えるけれど、この区間の急行列車は春から秋まで。冬は運休だ。只見~小出間は現在よりも多い。つまり、現在はこれだけの列車を走らせる必要はない、と判断されているのだろう。

ダイヤを見る限り、只見線は中間の駅から会津若松方面・小出方面の両方向への旅客移動がある路線だった。路線の建設も会津若松側・小出側の両端から始まり、只見~大白川間が最後に開通している。

現在のバス代行区間、会津川口~只見間は、1978年のダイヤの時点で閑散区間だった。貨物列車と雪のない季節の急行列車を走らせるために作られたようなものだ。当時からこんな具合だったから、貨物列車が廃止されると、この区間の存在価値は薄れてしまう。悲しいけれど、バスで十分という見方も出てしまいそうだ。

ただし、只見線の車窓は「乗り鉄」の誰もが薦める美しさ。春の新緑、夏の里山、秋の紅葉、冬の白銀、どれも美しい。春と秋は会津若松~只見間でSL列車も運行された。「AIZUマウントエクスプレス」の走行距離と只見線の全区間の距離もほぼ等しく、観光列車と組み合わせた観光需要も掘り起こせるかもしれない。だから鉄道ファンとしては復旧に期待したいけれど、それだけの投資に見合うかどうかは判断が難しそうだ。