青函トンネル区間を含む青森~函館間は「津軽海峡線」と呼ばれている。来年3月からは北海道新幹線が青函トンネル区間を走る予定だ。在来線の貨物列車と新幹線を共存させるため、新幹線の速度を落とし、貨物列車のダイヤも変更するとみられる。臨時の寝台特急「北斗星」は8月で運行を終え、寝台特急「カシオペア」も運行を終了するとみられている。現在の青函トンネルのダイヤはどうなっているか、旅客列車用の時刻表と、貨物時刻表を参考に、列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」で表示してみた。

青森~函館間の全体図を眺めてみよう。津軽海峡線は津軽線青森~中小国間、海峡線中小国~木古内間、江差線木古内駅~五稜郭間、函館本線五稜郭~函館間で構成される。今回はJTB版の時刻表3月号をもとに旅客列車を入力した。函館本線五稜郭~函館間は江差線の列車のみとした。貨物列車は鉄道貨物協会が発行する『2015貨物時刻表』をもとにしている。

津軽海峡線、青森~函館間(2015年3月改正)

赤が特急「スーパー白鳥」「白鳥」だ。5月の大型連休に向けた臨時列車も記載した。青は夜行急行「はまなす」。緑は寝台特急「カシオペア」「北斗星」だ。この2つの列車は4月から同じダイヤを使い、隔日運転でほぼ交互に走る予定となっている。3月改正までは「トワイライトエクスプレス」もあって、寝台特急は3往復だった。現在は1往復だけと寂しくなった。水色は青森~中小国間に設定された「リゾートあすなろ竜飛」で、5月1~6日と6月25~30日に運行予定。黒い太線が普通列車だ。

貨物列車は黒の細線で示した。ただし、このダイヤの確度は低い。貨物時刻表には青森信号場と函館貨物駅の発着時刻しか表記されていない。ちょっと乱暴だけど、青森信号場は青森駅発着としてダイヤを描いている。また、函館貨物駅は隣接している五稜郭駅で設定した。

津軽線と江差線の単線区間のすれ違いは推測だ。旅客列車を優先させて貨物列車を待避するように設定したけれど、実際には旅客列車が退避しているかもしれない。貨物列車同士のすれ違いは下り列車を優先させてみたけれど、上り列車を優先する場合もありそう。貨物列車の所要時間もさまざまで、所要時間の長い列車はどこかの駅で長時間停車しているはず。なるべく線路の多そうな駅や信号場を想定している。

このダイヤの貨物列車については参考程度だ。ただし、青函トンネルをどのくらいの貨物列車が走っているかを知るための目安にはなりそうだ。

ダイヤ全体を見渡すと、津軽線・海峡線・江差線の3層構造になっている。津軽線区間・江差線区間は単線で普通列車も走るため、かなり複雑だ。真ん中のスカッとした部分が青函トンネルを含む海峡線。複線区間ですれ違いが頻繁に行われる。特急列車と夜行列車、貨物列車のみの運行となっていて、普通列車はない。「青春18きっぷ」の特例として特急列車に乗れる区間としても知られている。

津軽線は立派なローカル線で、普通列車は少ない。青森~蟹田間は下り8本、上り9本。うち1往復は終点の三厩駅まで直通する。蟹田駅と三厩駅を結ぶ列車は直通を含めて5本。このダイヤでは中小国駅まで描画している。江差線の普通列車は上磯駅を境にして運行本数が変わっている。木古内~上磯間は津軽線と同程度。上磯~函館間は区間列車も多い。函館への通勤通学需要が多いようだ。

木古内駅から五稜郭駅までの区間は、北海道新幹線開業と同時に道南いさりび鉄道へ経営移管されることになった。そのときは特急列車も消えるので、貨物列車と調整した上で使いやすいダイヤになると期待したい。

朝の時間帯を拡大した

未明から昼頃までを拡大表示してみた。下り寝台特急と上り「はまなす」は5時頃に津軽今別駅付近ですれ違うようだ。どちらの列車もその前後に貨物列車が走っている。深夜早朝にかかわらず、単線区間では貨物列車のすれ違いが頻繁に行われている。

貨物列車は日中の特急列車が走る時間帯も多い。青函トンネルを通過する貨物列車は上下約50本が設定されている。特急列車は臨時も含めて24本。単線区間の混雑ぶりをみると、これ以上の増発は難しそうだ。

昼から夜間にかけての時間帯を拡大した

午後以降も見てみよう。特急列車の運行が終わると、それを待っていたかのように貨物列車が増える。そして1時を過ぎるとピタッと列車の運行が終わる。ここから3時すぎまでが線路保守の時間帯だ。新幹線が開業すると、貨物列車運行時間帯と新幹線運行時間帯の境目の保守時間が増えるそうで、これも青函トンネルの制約のひとつになるという。

下り「はまなす」と上り寝台特急のすれ違いは23時頃の中小国駅付近のようだ。こちらも貨物列車のすき間を縫うようで、なんだか肩身が狭そうである。「はまなす」については、貨物列車と折り合いを付けるために、札苅駅で長時間停車して上り貨物列車を2本待たせてみたけれど、実際はどうだろう? 木古内駅かもしれない。茂辺地駅と上磯駅の間ですれ違う列車があるけれど、ここは複線区間ではなく、実際には矢不来信号場がある。

江差線はすれ違いできる駅が多く、ダイヤを設定しやすい。しかし貨物列車が多く煩雑だ。新幹線が開業すると、貨物列車の青函トンネルの運行に制約ができる。その制約を補うために、江差線と津軽線のすれ違いは多めに設定したい。そうなると、新幹線開業にともない旅客列車を廃止し、バス転換したいという考えもわからないわけではない。

現在でも旅客列車と貨物列車がせめぎ合う津軽海峡線。長距離トラック運転手不足で長距離貨物列車の需要が増えているというし、貨物列車も増発したいに違いない。新幹線開業後はどうなるだろう?