残業ばかりさせられる職場も嫌ですが、それと同じぐらい嫌な気持ちにさせられる職場に「有給休暇を取得しづらい職場」があります。

仕事は年中忙しく、有給休暇を取らないことを前提にスケジュールが組まれるため、ほとんど有給が消化できないという人もいることでしょう。実は僕が会社員をしていた頃に働いていた職場も、これに近い状態でした。「有給休暇を全部消化できるのは、退職の時だけ」なんて笑えない冗談を聞いたりもしたものです。

むしろ、日本では「有給休暇を取得しやすい職場」のほうが珍しいのかもしれません。実際、諸外国との比較でも、日本の有給休暇の消化率はダントツで低いのです(参考:)。ビジネスのグローバル化が叫ばれて久しいですが、少なくとも有給休暇の取得率について言えば、日本企業はグローバルからは程遠いと言えそうです。

休むこと=悪いこと?

もしかしたら、日本人の思考の根底には「休むこと=悪いこと」といったような等式が存在しているのかもしれません。

例えば、学校には「皆勤賞」と呼ばれる賞があります。1日も学校を欠席しないことは「いいこと」で、逆に学校を休むことは「悪いこと」だと考えられているわけです。会社でもたまに「自分がいかに休んでいないか」を自慢気に話す人がいますが、これも理屈は一緒です。日本人にとって「休むこと」は、なんとなく後ろめたい気持ちを感じさせるものになっています。

しかし、実際には休まないことが「いいこと」だとは限りませんし、休むことが「悪いこと」だとも限りません。体調が悪いなら早く休んで治したほうがいいはずですし、少し長めの休みをとってリフレッシュすることが仕事の能率アップにつながることもあるはずです。仕事の生産性を高めるためにも、付与された有給休暇を全部使い切る程度に休むことはむしろ「いいこと」だとさえ言えるのではないでしょうか。

「暇になったら取ろう」ではいつまでたっても取れない

有休をしっかり取っていくために大事なのは「暇になったら取ろう」などとは考えないことです。

会社員時代の僕が、まさにこの罠にはまっていました。「このプロジェクトが落ち着いたら休みを取るんだ」といつも考えながら仕事をしていたのですが、困ったことにいつまでたってもプロジェクトが落ち着かないのです。気づくとほとんど有休を使わないまま半年ぐらいが過ぎ去ってしまい、「このままでは結局使えないまま消えてしまう!」と危機感を覚えました。

そこで僕は考え方を改めることにしました。「忙しかろうと忙しくなかろうと、有給休暇は取る」ことに決めたのです。それからは、どんなにプロジェクトが忙しくても計画的に有給休暇を消化するようになりました。

有給取得のテクニック

現実問題として有給休暇の取得にはある程度の「テクニック」があります。悲しいことに、日本の職場には他人の有給取得に非寛容な人が一定数います。彼らにできるだけ文句を言われないように休むには、以下の点に気をつけるとよいでしょう。

第1に、できるだけ「早め」に申し出ることです。仮に1カ月ぐらい前から申し出ることができれば、「業務調整ができない」ということは普通はありえません。早めに申し出ても嫌な顔をされるようであれば、それは明らかに職場に問題がありますので、長期的には転職などをおすすめします。

第2に、「堂々と」申し出ることです。有給を取得するときにやたらとへりくだる人がいますが、僕はおすすめしません。「◯月×日にお休みをいただいてもよろしいですか?」と聞くよりも、「◯月×日に休みます。業務に支障がないよう調整はします」と堂々と申し出たほうが、つまらない詮索を受けたり小言を言われたりしなくて済みます。実際、何にも悪いことはしていないのですから、有給の申し出は堂々とすべきです。

第3に、他人のことを「考えすぎない」ことです。一切他人に負担をかけない形で休むことなど基本的に不可能です。ここで考えすぎてしまうと、いつまでたっても有給は取得できません。「自分が迷惑をかけた分は、あとで他の人が休んだ時に返せばいいや」ぐらいの気持ちで、あまり考えすぎずに休みたいときは休んでしまうべきです。お互いにけん制しあって誰も休めない職場よりも、迷惑をかけあいながらも全員が休める職場のほうがはるかに健全なのではないでしょうか。

健全に有給休暇を消化できる人が1人でも多くなることを祈っています。


日野瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。

(写真は本文とは関係ありません)