【連載】
本連載ではこれまでHDD系のデータ障害を取り上げてきたが、シリコン系メディアの耐障害性はどうだろうか? 音楽プレイヤーやUSBメモリなど、多くの人が身近に利用してきたシリコン系メディアも、SSDという形でPCのメインストレージとして使われることが増えてきた。その分、シリコン系メディアに重要なデータが保存されるケースも多くなっているはずだ。
シリコン系メディアのデータ復旧の実情について、ワイ・イー・データの情報セキュリティ事業部 専門技術員の吉田友広氏とオントラック事業部 専門技術員の村田宗宣氏に聞いてみた。
まず、シリコン系メディアの特徴として真っ先に挙がるのが「丈夫さ」だ。これはHDDと違って物理的な回転体が内部に存在しないことから、小さな衝撃による物理的破損やデータ障害が起こりづらいという特性からの印象である。しかし、この考え方は正しくもあり、間違ってもいるという。
「確かにシリコン系メディアは衝撃に強いです。HDDと違って、"落とした""ぶつけた"といった程度ではデータ障害は起こりづらいですね。ただし、静電気や水に弱いということは忘れないでいただきたいです」と吉田氏は語る。
特にリムーバブルドライブとして利用されるUSBメモリやメディアカードの類は、端子部分に直接触れられる構造だけに注意が必要だ。「冬期に静電気の溜まった体で触れてしまった」、「ポケットに入れたまま汗をかいたり雨に当たったりした」といっただけで、データが失われる可能性はある。
シリコン系メディアは気軽に使えるだけに、手荒い使い方をしているユーザーがいるのも事実だ。実際、同社に持ち込まれたシリコン系メディアの中には、飼い犬が遊んでいるうちに噛みつぶしてしまったもの、地面に落としたうえ車で轢いてしまったものもあったという。こういう壊れ方をしたメディアのデータは修復できないことが多いようだ。
「メモリ部分が無事で、基盤や端子、カバー部分のみの損傷ならば、データ復旧の可能性はあります。しかし、メモリ部分が割れていたらどうしようもありません。特に小型のワンチップ製品の場合、手のつけようがないものもあります」と村田氏は語る。
HDDならばディスク本体が割れていない限り、ヘッドの修復など物理障害でもやれることはいろいろあるが、シリコン系メディアで特に小型製品は、物理的損傷がそのまま記録部分の破壊であるケースが多いのだ。仮にメモリ部分が生き残っていれば、基盤交換などの修理によるアプローチのほか、メモリを取り外して直接読み出すという方法もある。
「当社はカードリーダーを製造していることから関連技術を有しており、その技術と合わせてシリコン系メディアのデータ復旧を実現しています。普通のリーダーでは読めなくなってしまったメディアを読み込むためのリカバリ用リーダーも開発しています」と村田氏。元々のモノが小さいだけにできることはそれほど多くないようだが、同社ではさまざまなケースに対応できる備えがある。
実際に依頼が多いのは、USBメモリとデジタルカメラのメモリカードのデータ復旧だという。具体的には、USBメモリは保存していた業務用のドキュメントが、また、デジタルカメラは建築現場で法的に必要な撮影を行っていたもののデータが読み出せなくなって持ち込まれるそうだ。物理的な損傷がないのに読み出せなくなった場合は大抵、読み出すための情報が失われているという論理障害が起きている。「メモリを読み出すための情報が壊れているケースが大半です。これはHDDの場合と同じく、内部情報を技術者が整理することで復元します」と吉田氏は語る。
データ復旧の現場で強く感じることは「シリコン系メディアへの過剰な信頼」だという。「現在の大容量なUSBメモリは1万回のデータ読み書きが寿命だと言われています。これは1万回の挿抜ではありません。メディアを機器に挿入した状態におけるファイルの出し入れを行う際もそのたびに読み書きが行われています。個人的にはシリコン系メディアの寿命は約1年と考えています」と村田氏。
最近ではネットブックなど内部ストレージの容量が小さいマシンにメモリカードや超小型USBメモリを挿したまま、固定ドライブのように使う方法も増えているが、あまり勧められないという。
もちろん、寿命は利用頻度や使い方によって変わる。例えば、機器に常時接続してデータ保存先として使っていれば、1万回のデータの読み書きなどあっという間だろう。逆に、いざという時のために持っているだけなら、データの読み書きが1万回に達するまで長期間かかるだろう。また、最近ではあまり使われていない低容量のUSBメモリならば、寿命はケタ違いに長くなる。しかし、重要なデータを保存している人ほど、大容量のUSBメモリを頻繁に使っているのではないだろうか?
「最近はUSBメモリの価格も下がっているので使い捨てと割り切り、ある程度使ったら買い換えたほうがよいですね。また、あくまでも持ち歩きのための一時的な保存場所と考え、USBメモリだけにデータを保存するのではなく、PCやストレージなどへのバックアップが必須です」と、村田氏はシリコン系メディアはあくまでも補助的に使うべきと訴えた。
また、シリコン系メディアとして最も過酷な使い方をされていると考えられるSSDは耐久性に疑問があると指摘された。
「メモリ部分の構造はUSBメモリとSSDに違いはありません。つまり、それほど耐久性はないということです。SSDが使われ始めたのは最近のことなので、重大なデータが失われた事例を担当したことはありませんが、個人的には不安だと感じています」と吉田氏。
ネットブックだけでなく、メインストレージとしてSSDを採用しているノートPCが増えているが、それらを「メインマシンとして利用する気にはなれない」と2人は口を揃えて言った。
SSDがPCのメインストレージとして利用される場合、頻繁なデータアクセスが発生する。その時、「どれだけメモリが耐えられるのか」、「どういう壊れ方をするのか」については事例があまりない。
SSDの有効な使い方としては、「サブマシンとして重要なデータを保存せずに使う方法」、「SSDとHDDの両方を搭載して、データ保存はHDDに行うという方法」が挙げられた。SSDのメリットとして、起動速度の速さを重視しているユーザーはぜひHDDとのデュアル構成を勧めたい。
「シリコン系メディアは、音楽プレイヤーやメモリカード、USBメモリなど、基本的にそれほど重要ではないデータを短期間保存することが前提の場所で使われています。そのため、データ復旧が必要になるケースもHDDに比べれば少なく、ノウハウを持っていない業者も存在するのが現実です。十分に注意しながら利用していただき、復旧が必要になった際は信頼できる業者を選んでください」と吉田氏は語った。
ワイ・イー・データ オントラック事業部
1994年末、データ復旧サービスの世界最大手である米オントラック社と独占的技術導入契約を締結し、ストレージ機器の製造・開発技術・経験・設備を活かしたデータ復旧サービス事業に進出。1995年、国内で最初のデータ復旧専用ラボを埼玉県入間市に開設し、国内及びアジア地区の拠点として、デジタルカメラ用メモリーカードからHDD、大規模サーバ、NAS等データなどの復旧サービスを提供している。業界で唯一の東証上場会社でもある。
参照:ワイ・イー・データ データ復旧サービス
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